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【美術展】リニューアル直前!宮城県美術館の名品勢ぞろい!

 館内のリニューアルを予定している宮城県美術館。その40年の歴史の中でも選りすぐりのコレクションを展示し、振り返りを行うという企画展へ行ってきた。祝日の昼間に行ったのだけど、お客さんはそこまで多くなく、静かにのんびりとしたペースで廻ることができたのが嬉しい。というか常設展扱いなのでこれで300円はかなりお得感あるよなあ。全体的に満足度の高い展示だったので、気に入った作品の紹介をしていきたい。

ありがとう山脇百合子さん

 展示室に入って最初に目にするのは、昨年逝去された山脇百合子さんの原画の数々。『ぐりとぐら』以外にも『いやいやえん』『ゆうこのあさごはん』『あひるのバーバちゃん』などなど色んな原画が飾られており、そのシンプルで優しい絵柄にホッとする。下書きも見ることが出来たのだが、色が付いていない状態の絵と見比べることで、より完成画の良さが際立ってくる気がした。思うに山脇百合子さんの絵の良さは余白の使い方にあって、可愛らしいキャラクターと、無駄のない配色、そして「白」の絶妙な割合こそが子供にとって(たぶん大人にとっても)とびきりのなじみやすさを生み出しているのだろう。私も子どもの頃に山脇さんの絵本に触れて育ってきたので、なんとなく感謝の気持ちを覚えつつ優しい気持ちで眺めることが出来た。

日本の近現代美術名作選

 展示されているほとんどの作品は撮影可能となっており、続く日本の現代美術名作選のコーナーでもたくさん写真を撮った。(でも権利関係で掲載していいものか確信が持てないので、それぞれの感想の最後に画像のリンクを貼っておきます)

「風景」小山正太郎
 黒と褐色が画面のほとんどを占めている絵で一見地味な作品。でもこういうシックな雰囲気好きだな~。どこか異国の海の景色が「目」からというよりも「心」にその場所を想起させる、そんな絵。ほんのりさみしさと懐かしさを覚える作品だったので気に入りました。
小山正太郎 《風景》 - 宮城県美術館 (pref.miyagi.jp)

「画家の像」松本竣介
 こちらは162.4×112.7㎝の大きな絵。実物大で見るとわかるが、描かれている人物がほとんどそのまま生身の人の大きさと同じになっている。全体を茶色の温かみある色で統一しており、描かれている人物の服装や背景をしっかり書き込んだディテールの細かい作品だ。一番いいなと思うのは塗りの繊細さで、立っている男性とは対照的に、座っている女性は白を基調とした服装となっているのだが、そのコントラストが全体をバランスの良いものにしていて素敵。そしてその服装はよく見れば青や緑を薄く帯びている。「全体」で見た時と、「細部」をみた時でどちらも強く印象に残る工夫が施されているんだなあ。これまで何度か見たことがある絵だけど、こうしてまじまじと見ることで新たな発見があり嬉しかった。
松本竣介 《画家の像》 - 宮城県美術館 (pref.miyagi.jp)

「アルファからオメガまでⅡ」菅野聖子
 統一感のある幾何学模様の絵。画面全体は赤で埋め尽くされていて、法則性を感じる直線や曲線は一見無駄がなく美しい。でもよくよく目を凝らして見ると一本一本が微妙に異なった配置になっている。これは「整頓された混沌」とでも言えばいいのか、じっと見ていると少しずつ不安な気持ちになってくるな。作者は音楽、哲学、数学、数理学など様々な分野から着想を得て作品を作っているらしく、今回見た中で好きにはなれなかったけど、一番印象に残った絵でした。
※ネットで画像探したけど見つからなかったので気になる人は自分で調べるか、直接美術館に足を運んでくださーい。

「赤帽平山氏」佐藤哲三
 赤い帽子をかぶり、黒い制服を着た髭の生えた男性がパイプを吹かしながら椅子に腰かけている。男の表情や佇まいからはリラックスしていることが読み取れる。しかし男は何を考えているのだろう。そのまなざしは油断の無いものを感じると同時に疲れがにじみ出でいるようにも思う。「赤帽」とは鉄道構内で旅客の荷物を客に代わって運ぶ仕事に従事していた人のこと指す言葉で、彼の表情からは繰り返される毎日の業務に対する倦怠感や安心感が滲み出ている様だ。描かれたのは今から100年近く前の作品だけど、彼の顔は街を歩けば現代でもよく見かける仕事で疲れたあの「顔」と同じことに気づく。だから私はこの絵が好きだ。時を超えて通じる"わび"を感じるから。
新潟蒲原平野に生きた画家  没後50年 佐藤哲三展 | 展覧会 | アイエム[インターネットミュージアム] (museum.or.jp)

ドイツ表現主義美術の名作 クレーとカンディンスキー

「商人たちの到着」ヴァシリー・カンディンスキー
 宮城県美術館に来ると度々見かけていた絵で、おそらくコレクションの中でも人気の高い作品なのだろう。油絵で描かれたこの大きな絵は、中世の商人たちが、にぎわう商店で元気に声を張り上げている様子が描かれている。全体は様々な色で覆われており、見る人の気持ちも明るく活気あるものにしてくれるはずだ。それはこの絵が市井の人々をモチーフにしていることと無関係ではなく、神話や伝説を題材とした絵でなくても、こうして多くの人に愛される作品を作れるということを、この作品自体が示している。そのことが何より私の胸に響いてくる。
ヴァシリー・カンディンスキー 《商人たちの到着》 - 宮城県美術館 (pref.miyagi.jp)

洲之内コレクション 絵のなかの散歩、気まぐれ美術館の代表作から

「猫」長谷川潾二郎
 これも常設展に来るとよく見かけていた馴染みのある絵。一匹の猫が手足を隠して寝そべっており、その寝顔はとても気持ちよさそう。宮城県美術館の中で最も癒される絵は?と聞かれれば、私はこの作品を挙げるだろう。画面の構成は赤い床と、灰色の壁、そして中央にいる三毛猫というシンプルなもの。でも見ていて飽きない、ぜんぜん飽きない良さがある。猫の猫らしさ、可愛らしさ、自由気ままな感じが出ていて、作者がこの猫のことをとても愛していたのだということが伝わってくるからだ。そしてその気持ちは見ている私たちにも伝染してくる。だからスヤスヤと安心して眠っている猫を起こさないように、私たちはじっと息を潜めてこの絵を見つめるのだ。
※画像はリンク先をスクロールした真ん中あたりにあります。
孤高の画家 長谷川潾二郎展 - 宮城県美術館 (pref.miyagi.jp)

佐藤忠良展

「蝦夷鹿」佐藤忠良
 彫刻家・佐藤忠良の作品は身近な人たちの「顔」や「たたずまい」を活き活きと生命力をもって作り上げているのが特徴で、彼の有名作といえば「帽子・夏」あたりだと思う。宮城県美術館には彼の作品が常設展に飾られているので、県に住む美術好きなら一度は見たことがあるはず。そしてその「人間」に対する真摯な表現は歳を経るごとにしみじみ良さがわかってくる。落ち着きと温もりに満ちた作品群は多くの人に親しみを与えるはずだ。でも実は私が一番好きなのは「蝦夷鹿」という展示物の中で最も大きく、最も躍動感のある作品だ。たぶんこの動物の彫刻は、東北という地の自然の力強さを象徴しているのだと思う。だからなんとなく怖い。でもその"怖さ"や"力強さ"こそがこの作品の魅力でもあるのだろう。
えぞ鹿 佐藤忠良|札幌散策 (artpark.or.jp)

 というわけで、山脇百合子の優しい絵から始まり、選りすぐりの日本現代絵画、クレーやカンディンスキーの名品等々、美術館の思い出と、その歴史を振り返りつつ、すばらしい作品群を堪能できました。リニューアル後も楽しみだけど、今のこの内装でしか味わえない良さがあると思うから、改装前に来れて良かったよかった。

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