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ちいかわウィーク

なんか小さくてかわいいやつ、「ちいかわ」。まるっこくてほのぼのしたかわいらしい絵柄が特徴的で、X(旧Twitter)をやってるとたびたび画像が流れてくることもあり流行ってることは知ってたのですが、「まあわしの好みとはちゃうやろ」と高をくくってスルーしていました。

大間違いだった。

いや、ビジュアルから持つその印象は特徴として間違っていないのだけど、それにプラスして常に「不穏さ」が付随しているのだこの作品。
基本的には二頭身のちいさな生き物が暮らすちょっと変わった世界の中で、主人公のちいかわが友だちのハチワレとうさぎ、その他のいっぱいいるちいさくてかわいい何かと、いっぱい遊んだり、たくさん食べたり、ぐっすり眠ったり、そんなのほほんとした姿が描かれる。癒やしだ。癒やされる漫画だ。ハチワレは友だち思いのいい子だし、うさぎはいざというとき頼りになる。ラッコ先生はとっても強いし、ちいかわはちいさくてかわいい。

んが、そういう絵柄のほのぼの具合や、弱々しくて守りたくなるキャラクターとは対照的に、起きている事象がいちいち過酷。この世界でちいかわたちは草むしりをしたり、なんか”こわいの”を討伐しないと生きていけず、各々が自分の暮らしを維持していくために何らかの「労働」をしており、対価もそれぞれの仕事ごとにきっちり設定されている。いわばモンハン的な「狩り」と「報酬」が土台となってるわけだが、とうぜん討伐には危険もつきまとい、命を左右するような場面に陥ることもある。
そのギャップが妙に病みつきになる。私は見事に病みつきになった。

そもそもちいかわを読んだきっかけは友人からのラインで、今週のあたまに「ちいかわはすごく面白いよ!セイレーン編は名作だよ!思ってたのと違ってすごいよ!」という旨を聞き、どれどれほんじゃあひとつ試しに見てみますかと読み始めたのが始まりだった。そんで案の定その魅力にとりつかれた私は、すべて読み終わったあとU-NEXTでアニメも全話視聴し、無事今週は「ちいかわウィーク」となったわけです。ツボの近い友人がいるというのはしあわせなもんだ。

さて、そんな『ちいかわ』ですが、討伐の対象となる生き物はいずれもちいかわとは異なる姿かたちをしていて、それ単体で見ればどこかバカっぽさやマスコット的な魅力もあり、さほど怖くはありません。知力も大して高くないし、なんならちょっとかわいく感じるくらい。しかし、ひたすらによわっちい生き物であるちいかわたちと対面させることで、相対的に危険度は増し、読者的にも妙にこわい存在となるのです。
これは結構発明なのではないか。
頭がトロくて動きもにぶいゾンビに対して老人をぶつけることで雑魚であるはずのゾンビの怖さをコメディちっくに復権させた『ロンドンゾンビ紀行』という映画がありましたが、『ちいかわ』もその意味で言えば「よわっちい生き物VS普通のモンスター」という構図にすることで普通のモンスターを異常に強く怖そうにしているなあと思います。いや字面にすると大したことじゃないような気がしますし、バカバカしく聞こえるかもしれないですが、これって結構コロンブスの卵な気が。

擬態しながらちいかわたちを襲ってくる奴もいれば、キメラみたいな生き物もおり、ふしぎな力を使ってくるやつもいる。中には友好的なやつもいたりもするけれど、基本的にはあぶないやつらが平然と跋扈している世界観。その上で絵柄はどれもかわいらしい

いろいろと謎の多い世界なのだが、作中ではっきり「これはこう言うこと」と明言してくれるわけではなく(そもそも主人公のちいかわの扱える言葉がかなり少ないこともあり「謎解き」はメインではない)、大抵の場合、読者自身が何となく「察する」ように描かれている。その分、更新されるたびに考察は盛り上がるようで、その不穏さを強調する世界観に惹きつけられる人は多いみたい。「キメラ化」「ゆっくり溶けるしろいの」「よろいを着た人」エトセトラエトセトラ。まだまだきちんと解明されていない要素は数多くあり、ちいかわたちがループから抜け出せなくなったり、ゴブリンたちに捕まったり、人形になったり、石像になったり、体が入れ替わったり(こうして箇条書きするとまあひどい目に遭ってますね笑)する姿にハラハラしながら、いつの間にかこの世界のとりことなっていた。

もちろん、そういった想定外のダークな面だけが魅力というわけでは無く、ちいかわ、ハチワレ、うさぎのトリオが楽しそうに遊んでいる姿には癒やされるし、パジャマを着て踊ったり、試験勉強に向けてがんばっている姿を見るとやさしい気持ちになる。けどやっぱりその裏では常にいきなりぜんぶぶち壊されるんじゃないかって不安な気持ちになる「なにか」があるのだ。

おそらくこの不条理さとか過酷な面って、現実の不条理さとか過酷さで、それをかわいい絵柄と愛らしいキャラクターにつつんでるだけで、だから必死にがんばるちいかわたちから目を離せなくなるんだと思う。
けど、なんていうかこの作品はそういうことを言語化しようとすればするほど無粋ななにかもあって、たぶんまず最初は「ちいかわかわいい~」「なんかこわいのこわい~」と純粋な気持ちで読むのが正解な気がする。
まあとにかく、面白い漫画だったのは間違いないので気になった方は読んでみてほしい。流行るものには流行るだけの理由があるねやっぱし。

ちなみに私が一番好きなキャラはうさぎです。うさぎかわいい~。プルルルルル


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