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『SHERLOCK』を再インストール

久々に鑑賞。
今年は『源氏物語』とか「銀河ヒッチハイク・ガイド』とか『シャーロック・ホームズ』とか、"なんとなく知ってるけどちゃんと原作を読んだことのなかった有名作品"を読みたいと思っていたのですが、傘籤は易きに流れるもの。気づけば原作より先に2010年代にBBCで製作されたドラマシリーズ『SHERLOCK』を再鑑賞していました。
最初から最後まで。
だって面白いんだもん。しょうがないよね。いやというか、「易き」なんて言ったら失礼ですね、こんなとびきり出来が良い作品に対して。

"現代版ホームズ"というコンセプトで2010年にスタートした本シリーズは、お馴染みのキャラクターが多数登場しつつ、敵も味方も最新のテクノロジーを駆使することで、現代的でスタイリッシュな「ホームズ像」を提示しています。ホームズ役のベネディクト・カンバーバッチ&ワトソン役のマーティン・フリーマンはこの役のために存在してるのかと思うほどのハマり役。彼らの掛け合いを見てるだけでほくほくです。つうか正直このキャスティングこそが要です、このドラマ。イギリスの街並みは風情があり、衣装デザインもオシャレ。「新しいホームズを創ったる」という作り手たちの志向は見事に体現されており、二回目の鑑賞でしたが悦にひたりきりでした。

また、編集や演出が凝ってるのも本作の特徴。シャーロックが謎を解く鍵を探る際、画面にダイレクトに映し出される「文字」の演出や、他の登場人物の何倍も早く思考する彼の能力を表現するようなスピーディーなカット割、スローモーションの使い方、いずれも今見ても野暮ったさは感じられずスマートです。

何より要であるシャーロックとジョンの掛け合いと、信頼関係がたまりません。知的ではあるもののクセが強過ぎて人を寄せ付けないシャーロックに対して、誰からも好かれ甲斐甲斐しく彼をサポートし、ときに(というか頻繁に)ヒロイン的ポジションを担ってくれるジョン。シャーロックはツンデレなのでジョンにも憎まれ口をたたきますが、重要な場面で「ボクに友人はいない。君以外は」なんて言っちゃいます。和む。こういう和みシーンだけで腹がふくれるぜ。視聴者が求めてるものを理解わかりすぎてて恐れ入る。そんなふたりのバランスと魅力によって本作は成り立っていると言っても過言ではなく、原作をかいつまんだ程度にしか読んだことのない私にとっても、最高のバディドラマでした。

ただどうなんだろう、原作が好きな方の中には「こんなのシャーロックじゃないやい!」って思う人もいるのかな?
舞台を現代に置き換えることで、キャラクターの特性はいくつか変更されており、シャーロックは社交的な人物ではなく「クセが強くて友人が少ない人物」に。女性に対しては「恋愛感情がよくわからない」という人物になってるもんなあ。私はむしろ今の視聴者に合わせたこのキャラクター像が好きなのですが。

お気に入りのシーズンは2と3。
シーズン2、1話目の『ボヘミアの醜聞』を土台としたこのお話では、シャーロックにとって重要な人物となるアイリーン・アドラーが登場します。登場時の姿はまさかの〇〇〇なのでシャーロック&ジョンだけでなく視聴者的にもインパクト大。しかも理由が「驚かせたかったから」ってあーた。そりゃシャーロックもびっくらこくわ。その後のツンデレ同士のかけ合いも「いい……」ってなっちゃうし、恋愛感情がよくわからないシャーロックがなぜアイリーンの気持ちに気づき、信じることが出来たのかについて明かされるシーンも名探偵らしさが発揮されていてエモーショナル。

『最後の事件簿』を題材とした3話目では、宿敵モリアーティと対峙し、イカサマ氏というレッテルを貼られ、その存在意義を脅かされたシャーロックと、それでも懸命に彼を信じようとするジョンの姿が熱く描かれます。熱いぜ〜。この話は熱いぜ~。
各話演出は冴え渡り、"現代版ホームズここにあり"と堂々と宣言するような完成度。ラストの引きの強さも加わって観ている側のテンションも上がります。キャラが魅力的な物語ってそれだけで見てられますねえ。

ちなみに本シリーズは90分×3話という構成になっており、通常のドラマシリーズよりも1話単位の時間が長め。なので1話を丸ごと観るならやや集中力が要る。なんてことは無くて、軽妙洒脱な会話や、クセの強い登場人物たちのやり取りを気楽な気分で観れちゃうエンタメ作品です。

シーズン3は、3話通してシャーロックとジョンの崇高な友情を描いています。
1話目はやっぱり生きてたシャーロックがジョンと再会するお話。生存が判明したあと、「自分にはちゃんと明かしてほしかった」と拗ねまくるジョンがかわいい。好き。

2話目はジョンの結婚式に際してシャーロックがスピーチしながらかつての事件を振り返るお話。おそらく全エピソードの中でもっともコミカルな話であり、感動的。そして構成もトリッキー。すごく好き。

3話目は今回の黒幕登場回。ジョンのやさしい人柄がよく出ており、シャーロックの鋭さも存分に発揮されています。まあまあ好き。ラストはやや強引でずっこけますが。つうかマグヌセンの能力「精神の宮殿」が便利すぎる。

このドラマで人気に火が付いたベネディクト・カンバーバッチとマーティン・フリーマンは、あっちこっちで引っ張りだこの俳優となったため、ふたりの予定を調整して撮影していくことが困難となり、残念ながらシーズン4で本ドラマシリーズは幕を閉じます。終わり方も後を引くようなものは残さないので、それまでクリフハンガーを多用していた分、「これでおしまい」という雰囲気が強い。

でもいつかまた歳をとったシャーロックとジョンの活躍を観られるんじゃないかな。観れたらいいなあと思う。この、あまりにハマったキャスティングでまた観たい。そう願っているファンは世界中にたくさんいるはず。少なくとも私は老けたふたりが観たい。求む、老けホームズ
とても楽しく心躍る冒険とミステリーでした。ありがとうシャーロック&ジョン。また逢う日まで。

あと、原作はそのうち読みます。いつか読みます。読めたらいいなあ……。


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