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日本SF大会「やねこんR」レポート
2年ぶり2回目のSF大会に行ってきた。大会の名称は「やねこんR」。SF大会とは、SFファンがひとつの会場に集まって色んな催しに参加するお祭りのこと。海外でもむかしから行われているイベントで、日本の場合は夕方から始まり夜を徹して会場のどこからしらでイベントが行われ、作家、編集者、翻訳家、漫画家、イラストレーターなど、各分野で活躍する著名人も参加するという、ファンとプロの交流会という意味合いもあるイベントなのだ。
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というわけで、会場である「白樺リゾート 池の平ホテル」に到着。仙台から新幹線とバスを経由して向かったので、着いた頃にはもうわいわい賑わっている状態だった。
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やねこんRでもらえる名札。これを首にかけておくことで大会参加者の証明となる。お酒も飲める。
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また、大会全体について書かれたしおりももらえるので、これがあるとどこのイベントに参加するかを決めて動くことが出来て便利。
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日本SF大会には前年に登場した小説・映画・ノンフィクションなどのSF作品に投票をして、その年の一番優れた作品を決めようぜ、という趣旨もあり、開会式と併せてその年の「星雲賞」が発表される。
以下は今年の受賞作。
【日本長編部門(小説)】
『グラーフ・ツェッペリンあの夏の飛行船』 高野史緒
【日本短編部門(小説)】
「わたしたちの怪獣」久永実木彦
【海外長編部門(小説)】
『怪獣保護協会』ジョン・スコルジー
【海外短編部門(小説)】
「堅実性」グレッグ・イーガン
【メディア部門】
『ゴジラ-1.0』監督:山崎貴
【コミック部門】
『ダンジョン飯』 九井諒子
【アート部門】
麻宮騎亜
【ノンフィクション部門】
『創元SF文庫総解説』
【自由部門】
『日本の巨大ロボット群像 -巨大ロボットアニメ、そのデザインと映像表現-』
海外長編部門を取った『怪獣保護協会』は私も投票した作品なので嬉しい。海外短編部門もイーガンの「堅実性」が受賞したし、納得感がある。コミック部門を受賞した『ダンジョン飯』は「それってSFなの?」という気もするけれど、星雲賞あるあるなので気にしない。自由部門を受賞した『日本の巨大ロボット群像 -巨大ロボットアニメ、そのデザインと映像表現-』は見逃してたから行きたいなあ。と思ったら近隣の県に巡回してくるとのこと。やったぜ。きっと行くぞ。
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ちなみに星雲賞を受賞した人にはこの土偶(のレプリカ)が贈られる。壇上で受賞者の人たちがみんなして割れないか心配そうにしてた。
いよいよ大会開始
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こちらが会場となった「白樺リゾート池の平ホテル」。催しが行われる建物は「新本館」と「東館」とでふたつに分かれており、各部屋で様々な講演やパネルディスカッションが行われることとなる。
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タイムテーブルはこのようになっており、同じ時間に10個以上のイベントが開催されている。いわばSF版のフェスと言ったところ。企画1コマには、80分の正味時間とその後10分の移動時間が含まれており、途中参加も途中退出も自由だが、数が多いので行きたいイベントがある場合は事前に行動を決めておく必要がある。
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こちらはぬいぐるみ参加者の部屋。各自がぬいぐるみを持ち寄り、まったりしながら交流するという平和空間。
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大会名物時刊新聞。イベントが進行するごとにどんどん発行され、みんなに配られる。全部集めた人はいるのかしら。
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大ホールでは物販の他にイラストレーターによる絵の作画もあり、だんだんと完成していく様子が楽しい。ちなみにこの絵は今回星雲賞アート部門を受賞した麻宮騎亜氏によるもの。
イベントに参加してみる
その後まずは、
【英語圏SF・ファンタジー、今これが話題です】の部屋に参加。この部屋では早川書房の担当者の方から今後発売予定のSF・ファンタジー作品について色々教えてもらえた。なんでも米国ではファンタジー小説の売れ行きが良いらしく、レベッカ・ヤロス『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―(上・下)』という作品が2023年アメリカで最も売れたファンタジー小説とのこと。評価も上々で"ロマンタジー(ロマンス×ファンタジー)"という言葉を生み出し大ヒットした作品らしい。なんでしょう、『ファイアーエムブレム』のノベル版みたいなものでせうか。話を聞きながらそんなイメージが湧きました。
エマ・トルジュ『インク・ブラッド・シスター・ライブラリ』は魔法書が登場する世界における姉妹の物語。他にもイ・ヨンドの新作などいま熱い海外小説の話を聞く。中でも面白そーと思ったのはキャサリン・M・ヴァレンテ『デシベル・ジョーンズの【銀河/スペース】オペラ』。銀河最大の音楽祭典で好成績を残さないと人類が全滅する!というおバカな設定のスペオペらしく、笑えそうなので発売されたら読んでみたい。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』映画化の話にちなんで文庫化のタイミングはいつになるかとか(映画公開のタイミングに併せてゴニョゴニョ……とか)、そういう話も聞けました。
その他中国SFについては、『三体』の劉慈欣と並ぶ中国四天王の一角ハン・ソン(だったかな)の書いた『医院』という小説や、江波(シャン・ボー)の『銀河之心』が面白そう。
早川書房から新たに立ち上がったコミックサイト「ハヤコミ」については今後の刊行スケジュールも一部教えてもらえた。なんでもキアヌ・リーブス原作の『BRZRKR』というアメコミが刊行予定らしいです。キアヌファンは読まなきゃ損だ。また、Xとかで要望が多ければコミカライズの可能性が高まるとも言ってました。傘籤は『天冥の標』『女には向かない職業』『ゼンデギ』『商人と錬金術師の門』『プロジェクト・ヘイル・メアリー』『良い狩りを』『法治の獣』『バレエ・メカニック』『都市と都市』『鋼鉄都市』『火星年代記』『ディファレンス・エンジン』あたりを期待しております。早川書房の担当の方、これを見ていたら何卒何卒。
その他【中国SFを語る】の部屋では中国に限らずノルウェー、アフリカ、スペイン、クロアチア、アラビアなど世界各国の翻訳されていないが注目すべきSF作品についてパネルディスカッションで教えてもらう。
大会にはゲストとして映画監督の片渕須直さんも来ていて、「片渕監督を囲む会」みたいな部屋もあったのでそちらにも参加。『この世界の片隅に』を作る際にロシア軍の軍服を借りたけど映画の中で使う機会が無かったとか、手旗信号シーンの苦労話とかいろいろ聞けました。
どうやら現在片渕監督は同時に3つ企画を進行中らしく、うち2本は動いていないとのこと。ひとつは『つるばみ色のなぎ子たち』として、もうひとつは『ブラック・ラグーン』関連かしら。残りのもうひとつはよくわからないけど、なんでもSFの企画なんだとか。片渕監督が作るSFってどんな感じになるんだろ。楽しみですなあ。
ちなみに『つるばみ色のなぎ子たち』ではまだまだ資料が必要らしく、しかし平安時代の本って高いものが多いため(4万円の本とかあるらしい)お金がかかるぼやいてました。
そんな感じで各部屋をぶらぶら散策するように廻ってみる。真面目なイベントもあれば、ゆる~い雰囲気のイベントもあり、フェスとか文化祭的な空気感があります。年齢層はまあまあ高めですが、SFあんまよくわからんという方でもボードゲームの部屋やお絵かきする部屋なんかもあるので初心者でも気楽に楽しめる部屋は多い。
あとお風呂が気持ちよくてご飯が美味しかった。
お風呂は半露天風呂となっており、外に出て白樺湖を眺めながらゆっくりと浸かることが可能。夜風を感じながら澄んだ空気を味わい湯舟を満喫。とても気持ちいい。
ご飯はバイキング形式になっており、肉料理にお寿司に旬の野菜と美味しそうなものが盛りだくさんでハッピーでした。
ダンジョンのような長い通路
にしても新本館と東館の会場が遠かった。毎回移動するのに5分くらいはかかるので、あっちに参加しようかな、と思っても容易にいかない作りになっている。
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ここら辺でだいたい3分の2。なんだかダンジョンを行き来してるような感覚になる。大会中に参加者が記憶に残った出来事を投票する「暗黒星雲賞」なる投票イベントもあるのだけど、私はこの「長い通路」に投票した。理由は「ダンジョンだから」。
お買い物とか
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物販のスペースもありいろいろと物色。ピーター・ワッツとケン・リュウの一般書店では流通してない本があったので迷わず購入。若手のSFファンによるSF情報誌『SFG』は約一年ごとのSF関連情報がつまりにつまりまくった同人誌でパラパラめくり内容にビビッときたので購入することに。家帰ってから改めて読んだのですがこれマジで良い本でした。
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こちらは『わたしたちの怪獣』で星雲賞日本短辺部門を受賞した久永実木彦さんから頂いたサイン。ねこの絵と「み」のハンコがかわいい。
「名前はなんと書けばいいですか?」と聞かれ、
「じゃあ傘籤でお願いします……」と名札見せたら快く書いてくださいました。こんな画数の多いハンドルネームですみません。
「かっこいい字ですね~」と言ってもらえて嬉しかったです。仙台から本持ってきた甲斐がありました。大切にしますね。
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二日目に発表された暗黒星雲賞の時刊新聞。〈自由部門〉はやっぱり「通路」が受賞してました。みんな長げ~と思っていたようです。
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あと馬車がいた。おはぎと書かれたお馬さん。かわいい。
というわけでSF大会レポートでした。あっち行ったりこっち行ったりしてたらあっという間に時間が過ぎ、おいしい空気や食べ物をめいっぱい味わえた二日間となりました。来年は蒲田で「かまこん」を開催する予定らしいです。東京なら簡単に行けるし来年も行こーっと。
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