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新幹線での薬品漏れに寄せて

今日は化学的な記事です。


新幹線で硫酸が漏れた?

9日の東北新幹線で地質調査会社に勤める会社員のカバンから薬品が漏れ、会社員を含めた複数名が火傷(薬傷)を負う事故がありました。
報道によると硫酸の可能性が高そうですね。

硫酸は危険物では無いが劇物

意外かもしれませんが硫酸は危険物ではありません。危険物は消防法で定められている品名で、硫酸は該当しません。硝酸は危険物乙種6類にしてされています。
トンチではないですが「車内に危険物の持ち込みはご遠慮ください」というよく聞くアナウンスには抵触していません。

しかし毒物及び劇物取締法で濃度10%を越える硫酸は「劇物」に指定されています。被害の規模からして硫酸濃度はかなり高かったと推測しています。

硫酸の分かりやすい例が映画「エイリアン」

硫酸で白煙が出たり火傷をするのかと疑問に思われるかもしれませんが、分かりやすい例が映画「エイリアン」シリーズに登場する化け物の体液です。人間の体を溶かしたり船体を腐食させたりしますが、誇張でなく現実的に硫酸で同じ現象が起こり得ます。

ペットボトルのような入れ物に持ち運べること自体が大問題

毒物及び劇物取締法では品目が細かく定めれていています。
そして管理方法も定められていて、鍵が付けられる設備の保管が義務付けられたり定期的に在庫を確認しなければなりません(仮に管理簿と本数が減って盗難された場合は警察に届け出なければならない)。

硫酸は金属を腐食するので、金属製の容器には入れられません(そもそも強酸に限らず基本的に金属製の容器で運搬・保管はしません。以前地下鉄の駅で洗剤をアルミ缶に入れて爆発した事例もあります)。

だからと言ってペットボトルのようなもの(詳細は不明ですが)に入れて持ち運ぶことは考えずらいです。
ペットボトルに入れても腐食の危険はありますし、万が一誤飲するケースも考えられます。

一番の問題は「仕事で使うから」とペットボトルに硫酸を入れて持ち運べる社内環境です。管理簿や薬品の保管体制に疑問を持たざるを得ません。
もし持ち出した人が誰かに飲ませようとしたのでは?と思われても仕方がない事故だったと思います。

死人が出るまでに至らなかったのが不幸中の幸いです。漏れたのがフッ化水素酸じゃなくてまだ良かったですね。

最後に

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