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言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション

 コミュニケーションは、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの両者で成り立っています。

 言語的コミュニケーションとは、話したり書いたりといった言葉を使ったやりとりをいいます。一方、非言語的コミュニケーションとはその逆で、言葉を用いないやりとりということになります。

 では、言葉を用いないで何を用いるかといえば、例えば表情や顔色、声のトーン、話す速度、ジェスチャー、視線などがこれに当たります。

 コミュニケーションを図る上で、特に喜怒哀楽のような感情の伝達には非言語的コミュニケーションが重要であると言われています。

失語症者とのコミュニケーション

 失語症は、脳血管障害などによって言語を司る脳の部位に損傷を受けたことが原因で「言葉」を扱うことが難しくなった状態を言います。相手の話し言葉や書いてある文字を理解することが難しくなったり、言葉を話すことや文字を書くことが難しくなったりします。

 人は、「言葉」の使用によって無限のコミュニケーションを成立させることができるのです。そこが、他の動物との大きな違いといえるでしょう。

 失語症の方は、「言葉」の使用が難しくなるため、「言葉」の使用に問題のなかった病前に比べると相当コミュニケーションにおいて不自由を感じる状態となってしまいます。経験した者にしかわからない、相当なストレスではないかと思います。

 「水が飲みたい。」のどが渇いていたとしても、その一言を発することが難しい場合もあるのです。また、こちらが「水?お茶?ジュース?」などと言葉で尋ねても何を尋ねられているか、理解が難しい場合もあるのです。

 もしこの世に、コミュニケーション手段がこういった言語的コミュニケーションのみだったら、失語症の方とのコミュニケーションはどうなっていたのだろうと思わされます。

 失語症の方とのコミュニケーションは、非言語的な要素を大いに活用していくことになります。

 言葉をほとんど発することが難しい重度な失語症の方でも、何らかの仕草で思いを訴えることができる場合がありますし、喜怒哀楽の表情を見せられることもあります。

 また、言葉で伝わらない場合でも実物を示したりジェスチャーなどを併用することで、伝わることが多いです。

 このようなやりとりで、失語症の方の思いを理解することができたり、こちらの問いかけを理解してもらえたり、お互い分かり合えた時は本当に嬉しいものです。

言語聴覚士の役割

 医療従事者の中にも、失語症への理解はまだまだ希薄な方が多いという印象を受けます。脳の機能について勉強してきた医療従事者でさえそうなのですから、一般の方にはもっと理解が難しい部分もあるかもしれません。

 失語症という「言葉」の障害についての理解、非言語的コミュニケーションを通して相手の思いに気づくこと、相手に伝わりやすくすることの大切さ、こういったことを広く啓発していくことが大切だと思っています。

 「言葉」ではなく、お互い分かり合える方法はたくさんあるのですよね。失語症の方とコミュニケーションを取ることに苦手意識のあるスタッフもいます。非言語的コミュニケーションをもっと意識すると、変わってくるのではないかなと思います。

自己の在り方も

 普段の何気ない会話の中で、実は私たちは無意識のうちに多くの非言語的コミュニケーションを図っているのです。

 目は口ほどにものをいう、とあるように口から発せられる言葉以上に私たちは、視線で訴えたり色々な仕草や態度を相手に送っているのです。これらの非言語的な要素は、相手に対し快・不快感情を与えやすいと言われています。

 こんな経験はありませんか?一生懸命相手に話している時、ウンウンとうなづいて聴いてくれる相手であれば嬉しいですし、逆にそっぽを向かれていたりスマホなんかを触りながら聴かれているとどんな気持ちになりますか?

 コミュニケーションについて、日頃の自分自身の態度についても気をつけたいものです。

 

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