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電車の中で

宮崎空港から電車に乗る。1時間に1本程度しか運行していない電車だ。
どこか懐かしい雰囲気を漂わせた車両。
確か、大分、博多方面に向かう電車だと思う。

缶コーヒーを買ってから、ホームに向かう。
思えば、缶コーヒーを飲むのも久しぶりだ。最近は、コンビニに行っても、レジで100円を払って紙コップを受け取るタイプの方のコーヒーを選ぶことが多い。

ホームで待つ人は、まばらだった。
その中に、制服を来た女子高生らしき集団がいた。それぞれの手には、大阪土産を持っている。
部活の遠征か何かだろうか。

女子高生たちも同じ車両に乗ってきた。

2人掛けの席の向きをぐるりと変えて、向かい合い、4人が座る。
その後ろに1人。4人組の席の通路を挟んで隣に2人組。
何列か離れた前方に、引率の先生らしき女性が1人。

4人組がこの集団の中では、イケてるグループ風だ。
同じ制服ながらも、髪型がなんとなく垢抜けていて、表情も明るい。
とはいえ、濃いメイクをしているわけでもなく、髪の色が極端に明るいわけでもなく、地方出身の私としては、共感、好感である。

2人組はおとなしそう。髪型や表情もどことなく地味な印象だ。

1人で座っている子も同じようにおとなしそう。席に座るとすぐに、スマホに目を向けている。

ああ、あの頃の私にもスマホがあれば、1人時間が少しはサマになったのに。

きっと、彼女は1人で過ごすのも得意。1人は気楽だし、何か読んだり妄想したりするのが好きだから
と想像してみる。

でも、みんなが誰かといる空間で自分だけ1人、となると居心地が変わる。
人目なんて気にしなくていい、というけれど、自分以外の人は誰かといる場所は、なんだかソワソワしちゃうよね。
1人焼肉や1人飲みが心地よく感じるようになるには、もう少し年齢を重ねる必要があるかもしれないね。

誰も悪くないのに、なんとなく決まりが悪い気がするこの状況。
電車が動き出した。

2人組の子のうちの1人が立ち上がって、1人の子に声をかける。
1人の子が小さく頷いて、迷わず席を立つ。
そして、2人掛けの席をぐるりとやって、向かい合いの席をつくる。
2人組が3人組となった。
4人組と通路を挟んで横につながった。

3人組でおとなしく談笑している。おとなしい子は声も小さい。
4人組とは違って、笑い声までは聞こえないけれど、微笑んでいるのが見える。
お菓子の交換を始めた。なんて微笑ましい。

やがて、元1人だった子が、通路を挟んだ4人組にお菓子を勧めた。
4人組も笑顔で受け取る。通路を挟んで、お菓子の交換会が始まった。

こういうとき、ちょっとだけ勇敢な行動をするのは、大抵、おとなしい方の子達なんだ。

私は、窓の外を眺めながら、
缶コーヒーをすすった。

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