ジャニーズ騒動はVTuber業界へ新たな風を吹き込むか(コラム)
ジャニーズ事務所所属タレントCM契約見直しの流れ
2023年9月7日、ジャニーズ事務所の会見中に一通の速報が流れた。
「東京海上日動 ジャニーズ事務所との広告契約更新せず」との内容である。
ジャニーズ事務所元代表・ジャニー喜多川氏の性加害問題を受け、いち早く対応を示したのが東京海上日動火災保険だ。
この動きに追随するかのように、日本マクドナルドHD、日産自動車、伊藤ハムなどは契約更新を見送りの方針、花王やアサヒグループHDに至っては広告の速やかな打ち切りに動くなど各社の対応が報道された。
東京海上日動を始め、契約の見直しまたは打ち切りなどの対応を示している企業は9月13日時点で10社以上に上っている。
一方、モスフードサービス(※1)や不二家(※2)、福島県などは現契約に変更は無しと発表していることから、必ずしも契約の見直しを行うという企業ばかりでは無いという状況も垣間見えてきている。
引き続き対応を迫られる企業が増加することも想定されることから、本件が業界へ与える影響は大きいものとなっていることは間違いないだろう。
代替需要の向かう先
2023年9月13日にウエルスアドバイザー社より「ジャニーズ広告起用見直し広がる、代替需要思惑も」という記事が投稿された。
有料記事(※3)のため詳細は差し控えるが、UUUMやANYCOLOR、カバーにも代替需要が発生し得るのではという可能性が記述されている。
一般的に考えて、代替需要はやはり芸能事務所などに所属する俳優やタレントなどに向かうだろう。今年は小栗旬さんや神木隆之介さん、芦田愛菜さんといった俳優陣、大泉洋さんやサンドウィッチマンさんといったタレントなどの起用が中心だ。
一方、近年はYoutuberのCM起用も増えている。
UUUM所属のHIKAKINさんやはじめしゃちょーさんなど、YoutuberのTVCMへの進出が加速している。
HIKAKINさんはソフトバンクを始め、出前館やアサヒビール、タカラトミーなどここ一年以内においても大手企業のCMに多数出演の実績がある。
このことから、「サブカルチャー」と言われる分野への代替需要も期待できるのではないだろうか。
VTuberのTVCM起用はどう変化するか
YoutuberのTVCM起用が増える中、VTuberのTVCM起用はどのように変化していくのか。
VTuberのTVCM出演は2019年3月14日、VIC所属の輝夜月さんが日清食品の「日清焼そばU.F.O」に出演したことがスタートである。(筆者調べ)
過去一年以内においては、2022年10月16日にはにじさんじ(ANYCOLOR)に所属する壱百満天原サロメさんが日清食品の「完全メシ」TVCMへ出演、2023年1月23日にはヤクルトの「ソフール」TVCM出演を果たしている。
また、2023年4月21日にはホロライブ(カバー)所属の星街すいせいさんが専門学校HALのTVCMソングを担当、2023年8月4日にはにじさんじ(ANYCOLOR)所属の叶さん、葛葉さんがGoogleの「Google Pixel Fold」への出演を果たしていることから、VTuberへの注目度は年々上昇していることが窺える。
Youtuber・VTuberにおけるCM起用増加の背景
YoutuberのCM起用についてはこんな記事がある。
人気Youtuberを起用する理由は「どれくらいの人たちに関心を持たれている人物なのかがわかるから」(東洋経済オンライン)という何とも分かりやすいものだ。
Youtuberの人気を図るにはYoutubeのチャンネル登録者数やSNSのフォロワー数などがそのままベンチマークとなる。企業側から見てもYoutuberの影響力や支持層が見えやすいというのが理由かもしれない。
もう一点、筆者が注目する視点がある。
それは2017年にUUUMが東証マザーズ市場へ上場してからCM起用数が急激に増加していることだ。(※4)
オリコン情報によると、HIKAKINさんのCM出演数は2013年から2017年4月までの約5年間で6社9本。
一方、2017年8月に東証マザーズ市場へ上場を果たすと、2018年にはDeNAやバンダイナムコ、ソフトバンクなどのCMへ多数起用され、1年間で7社22本と急増している。
偶然かもしれないが、2019年以降も継続してCM起用されていることから一定の影響があったのではないかと推察する。
ではVTuberではどうか。
先述の通り、2022年からTVCMへの出演が断続的に生じている。
2022年6月に東証グロースへ上場したANYCOLOR、2023年3月に東証グロースへ上場したカバーと、企業の上場とCM起用の時期が合致している部分がある。
これも需要側の意向による偶然的な要素があるかもしれないが、一般的に上場に伴う企業価値の向上という観点から見れば、企業側から見てもCMへ起用しやすいタレントという位置付けになっているのではないか。
すなわち、今回のジャニーズ騒動に伴いVTuberが代替需要となる可能性も十分起こり得るものと推察する。
決算資料から読み解く2社の共通点
ANYCOLORとカバー、どちらも東証へ上場してから共通している数字がある。
それはいずれもプロモーション(ANYCOLOR)・ライセンス/タイアップ(カバー)事業は順調に右肩成長という点だ。
上場後、どちらの企業も順調に成長を見せているが、特にプロモーション・ライセンス/タイアップ事業の成長は顕著だ。
ANYCOLORでは上場後75.7%増(プロモーション事業)、カバーでは上場後167.7%増(ライセンス/タイアップ事業)と急速な成長を見せている。(※5)
特に本事業は配信事業やライブ事業と比較して売上総利益率が高く、利益率向上に寄与する部分となる。
おわりに
本騒動は海外からの関心も高く、故に各企業が速やかな対応を求められている。
各社がどのような対応を行うのか、またVTuberへ代替需要は発生するのか。
今後の動向を注視したい。
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