見出し画像

5/29 (月) ☁️
今はとても本を買う余裕も、読む時間もないが、とても興味深い内容だ。いずれぜひ読んでみたいと思った。
📖『母という呪縛 娘という牢獄/齊藤 彩(講談社)』👉殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。
~2023.5.29 7:40 📻MBSラジオ 歌のない歌謡曲~

桃子宛ての手紙はその後返送されていない。これはいったいどういうことだろう?

何と、部屋の中にあるゴミを大雑把に把握しようといろいろと見ていたところ、8ミリフィルムが入ったダンボール箱が下駄箱にあるのを発見した!恐らくゴミを大量に捨てた際に、どうしても捨てることができず、そこにしまっておいたのを忘れていたのだと思う。そう言えば何となくそうだったような気がする。

刑務所で、部屋を失うかも知れないと覚悟していた頃、8ミリフィルムを捨ててしまったと思って、ひどく後悔していた。夢のようだ。8ミリフィルムには亡き親父とおかんの若い頃の姿も映っているはずだ。その他もう忘れかかっているが、いろいろな思い出の映像が記録されていることは間違いない。

あのとき、映写機だけを捨ててしまったのだろう。映写機はさすがに捨てていなくても動かなかった可能性が高い。

富士フィルムでは8ミリフィルムの🔗「DVDにダビングサービス」も行っているようだ。お金さえあれば、いずれ観ることができる日が来るかも知れない。また、映写機も中古品がネットオークションなどで売り出されているようだ。

さらに、丁寧に梱包されたおかんの作品らしきものがふたつあるのが気になっていたので、どうしようかと思った。沖縄に持っていくには少し大き過ぎる。しかし、中身を見ないで捨てるわけにはいかない。私はそれらを確認することにした。

後でまたすぐに元に戻せるようにできるだけほどかないように気をつける。明らかにプロの手によるものだということがわかる。そうして、ひとつめのものを完全にほどかずに少し中身を確かめてみる。紙に包まれているが、着物だということがわかった。恐らくおかんが着ていたものだろう。

そしてもうひとつのやや大きめのものをほどいてみることにした。こちらも同様にずいぶんていねいな梱包がほどこされている。ていねいにほどいていく。こちらは着物ではなく作品のようだったので、 最後までほどかなければ中身を確かめることができない。私は仕方なく全ての紐をほどいていく。

最後までほどき終える。そして作品の全面を覆っている薄い紙をめくった瞬間私は自分の目を疑った。信じられない。

奇跡が起きる。

それは、刑務所の中で度々思い出していた、もうどこかに捨てられていてこの世には存在しないはずのおかんの般若心経をテーマにした作品だった。

私は嗚咽した。そして溢れるものをこらえることができなかった。
おかんが亡くなったときには涙さえ出なかったのに。

「おかん、ごめんな」

わしはアホやった。自分はいったい何をしていたのか。何をしているのか。

私はほとんど本能的にその作品をカメラで撮影していた。そしてビデオにも収めることにした。そして寝室として使っている部屋に作品を持っていき、作品の前に正座して、目を閉じて般若心経を心の中で唱えた。

まさかこの作品が私の部屋の中にあったなんて。。。私はほぼ放心状態だった。神様がそうしてくださった。やはり神は存在するのか。神は私に必要なものを知ってくださっているのか。そう信じずにはいられない気分だった(📓新約聖書 : マタイによる福音書6-32


もうひとつの最初に開けた方の着物も最後まで開けて中身を確認してみることにした。おかんの着物だと思っていたそれは、渋めの色や柄から親父の着物であることがわかった。しかもそのていねいな保存状態からよそ行きの高価なものであることが想像できた。

おかんは「預かって」と言って、このふたつのものを私の部屋に置いていった。その意図がそこはかとなくわかるような気がした。ひょっとするといつか私が何らかで必要とするかも知れない。恐らくそんなところだったのではないだろうか。だから私の部屋に置いていってくれたのだと思う。

このふたつのもの、おかんの作品と親父の着物は形見であると同時に私の今後の新しい人生の中で宝物となるだろう。📖『青春の構図 / 曽野綾子』(文春文庫)の中で斎木枯生が倫子からプレゼントしてもらった聖書を宝物だと思ったように。もちろん捨てるわけにはいかない。これまでの人生で最高のプレゼントだ。

そして、もしもこの部屋が、私が刑務所を出るまでに強制撤去されていたら、親父とおかんとの絆である、この作品と再開し、着物に出会うことはなかった。そう考えると、家主に感謝せずにはいられなかった。いくらこちらがお願いし、様々な経緯と思惑があったとは言え、9ヶ月もの間家賃を滞納しているにも関わらず、部屋を残してくれた。私は何とかして滞納分の家賃を払わなければならないと思った。最善を尽くすことをこれから考え、行動していく。


サポートありがとうございます。カルマ・ショウと申します。 いただきましたサポートは作品を完成させるために大切に使わせていただきます。尚、体や精神を病んでらっしゃる方、元受刑者など社会的弱者の方々向けの内容も数多く含むため、作品は全て無料公開の方針です。よろしくお願い申し上げます。