「ドサッ」がうまく撮れない!(初心者の映画制作講座)
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「あれ、何が問題なのかな・・」
と、その時僕は思いました。
何年か前の、あるワークショップでの撮影中のことです。
監督さんがとあるシーンを撮影していて、
「カット!」と演技を止めて何度も何度もやり直しているのです。
何度か撮り直す度に、演技や雰囲気がよくなってるわけでもない。
それで、「なんで何度もやり直してるんだろう?」と思ったのです。
そこで、監督が何にこだわっているのか、確認してみました。
すると・・・
「イスに座る音がうまく撮れないんですよ」
おっと!音の問題か!!
彼(監督)は、役者の演技には文句はありませんでした。
しかし、主役がドサッとイスに座る部分の「ドサッ」の音がどうしても欲しかった。
そこで、何度もやり直し撮影をしていたのです。
主役もだんだん、演技よりも音をうまく出して座る方に集中し出していました。
僕はあわてて監督さんを止めて言いました。
「座る音は、編集の時に入れましょう。今は撮れてなくても大丈夫です」と。
そして続けて言いました。
「撮影の時は、役者を撮影することに専念して下さい。
そして、音声さんはセリフに集中して下さい。」
監督さんは、若干不満そうです。
後から音を入れると変にならないですか?と。
音の話はとっても長くなるので必要なとこだけ話すけどね、
と前置きをして、
「今のこの状況は、イスの音にこだわるよりも撮影を進める方がいいよね。
音は、編集の時に、好きなだけやり直せるから。それに、」
僕はイスをポンポンと叩きました。
「そもそも、このイスの実際の音と、求めてる音に違いが大きい。
後で、別撮りでいろんなイスで録音した音を試してみたらいいよ」
その監督さんは少し考えて、分かりました、と言って撮影を再開しました。
監督の仕事は、脚本に書かれていることを再現することだけではありません。
時間内に撮るべきものをきちんと撮りきること。
そのために、今何に注力すべきか、場合によっては何を捨てるべきかも判断しなければいけません。
でもね。
いざ、みんなに囲まれて撮影が始まると、無我夢中になるもの。
完全に馬車馬のような視点になっちゃうんです。
自分の行動に自信がないなら、自分に意見してくれる存在をそばに置いておくのもまた、監督としてのテクニックのひとつかもしれませんね。
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