ルビー・カカオの午後 3
「まるで異国にいる気分だったの」
ナカノがコーヒーにミルクをおとしながら言った。
急行列車で2時間ほどの山に囲まれた町のホテル、そこで、あるコミュニティが主催するイベントがあって、ナカノの友人がスタッフとして参加する事になり、ナカノも手伝いのため同行した。
「私たち、普通に話して普通に生活してるけどさ、
あ、待って、普通って何よって言わないでよね!要はさ、数の問題なの、あなたもあの窓側に座っている人も、ちょっと見た感じは、不特定多数なわけ!でもさ逆転することがあるのよ。」
ナカノの話しは起承転結が乏しい、とルビーは思っている。
「手話ってあんなにうるさいのね!」
そこでは聴覚に障害を持っている人たちが50人位で共同生活をしている。
施設運営のスタッフ数人と、一緒に行った友人と別の友人2人以外とは、うまく話しをすることができない。
「いつも何かお手伝いしなきゃっ、て思っている人たちに、私が凄く助けられたの。
そういうこと、反対になるってこと、全然想像して生きてこないじゃない?廊下で迷ってる私に、ちゃんと教えようとしてくれた。皆んなが優しくしてくれなかったら私、
あんなに静かでうるさいところ、3日間も耐えられなかったかも?」
耐えられないは大袈裟だろうけど、、
確かにね、とルビーもうなづいた。
外国に行って不自由なく生活を送ろうと思ったら、その国の言葉や習慣を知る方がいいし、声で汲み取って貰えない世界では、他のコミュニケーション手段が必要になる。
そして声以外の手段を持たない者が少数なら、必然的にそちらへ合わせるため、
新しい知識や考え方が必要になる。
それでも、何かちょっとだけ違う感覚のようなものは埋める事が出来ない。
誰かは、いつもちょっとした引っ掛かりに足止めされているような、生きづらさを抱えて生きなければならないのかもしれない。
「だから、分かる?ルビー、あなたも調子にのってると、もう、全然モテない世界がくるかもしれないのよ!今は、私の恋人候補の方が少ないけど、来週には女という性別の生き物より、私たちの方がずっと魅力的だって世界中の男が思うようになるわよ」
やっぱりそこへきたか、、、ルビーは窓の方を見て呟いた。
「そうなったら困るわね」
本当は今もそうモテているわけでもないし、あまり変わらないのかなとも
ルビーは思っていた。
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