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2023年の年間ベストアルバムを2024年の5月末に発表する成人男性の主張【AOTY2023】

時間が経つのが早くてホント泣きそうだ 

RHYMESTER “it's A New Day”

え、もう2024年の5月?
意味がわからん2023年にやり残したことまだいっぱいあるんですけど。
脳と身体だけはしっかり2024年で生存活動を始めているけど、俺の心はいまだに2023年を彷徨っている。
その証拠に2022年って聞くたびに「あ、去年の話ね」って思っちゃうからね。もうすぐ今年も折り返し始めるというのに。

子どもが産まれて半年を少し過ぎると、ふにゃふにゃ寝言を言ったりボケーっとこっちの顔面を見ているだけのタームを過ぎて、段々自我らしきものが芽生えて来る。
子どもの生まれてくるタイミングにも寄るとは思うのだけど、その自我が芽生えてから保育園に入りだすまでの期間が親とはしてはだいぶキツい。
こちらを見て笑う表情に意味を感じるからこそ愛おしいけど、一方で自我というのは不満とか不安とかを発生させる。
食べ物が気にいらない。構ってもらえなくてイライラする。まだ眠りたくない。そういう感情の起伏にボロボロになりながら付き合った期間がおよそ半年くらいか。そんな状況下だと当然のように月日は半年過ぎている。いつのまにか。

1年と少し前、2022年の年間ベスト記事を公開した。
そのときにも冒頭でこんなことを書いていた。

そのうち私のSpotifyの検索履歴はアンパンマンマーチや幼児向けアニメの主題歌で埋まってしまうかもしれない。
今後自分が自分のために音楽を聴く時間はどんどん減っていくのかもしれない。

https://note.com/karstereo/n/ne262fd5cf18b

想像していた状態とほぼ変わらない現実がやってきた。
2023年にSpotifyで一番聴いた音楽は「星に願いを」のオルゴールバージョンだったし、Twitterのフォロワーがフェスに行ったりライブに行った報告をしている頃、私は朝9時の開園狙いで動物園に向かい、駅に到着したら娘が微熱があるっぽいのでそのまま家にとんぼ返りしたりしていた。
人生の主役はもう自分ではないんだなという感覚は、良くも悪くも芽生え始めている。
とはいえ完全に自分の時間が消え失せたわけではない。
自分は短い育児休暇を取った後は仕事を続けていて、出社する日は片道1時間半くらいの時間がある。
その移動時間だって疲れ果てて正直音楽を聴くメンタルになれない日も多かったのだけど、
そんな中で見つけた自分好みの曲というのは、毎日のように新譜を漁りまくっていた頃の自分のお気に入りとは、意味合いが少し変わっている。
よくわからない曲を格好つけて「よかったわー」とアピールする元気も時間ももう残っていない。
大して好きでもないものを凄いとか傑作だとか言っている時間は自分にとっては贅沢すぎる。

あなたにとって2023年ってどんな年でしたか?
っていうか2023年のこと覚えていますか?
槇原ドリル、Twitterのぶっ壊れ、アメリカの卒業アルバム風の画像が作れるサービス、山下達郎のラジオでのキショい発言…etc
どうでもいい記憶はドンドン捨てていこう。というか、どうでもいいものは端から知りたくもない。
自分の脳みそは自分のために活用されるべきで、Twitterのアルゴリズムによって規定されたトレンドに乗っかるために1200gのブヨブヨした物体を頭蓋骨のなかに大事に大事に収めているわけではない。
与太話をしていたら、もう既に1500字近く埋まってしまっている。
去年と同じくこの記事は年間ベストアルバムに託けたある成人男性の自分語りです。
ご了承のほどよろしくお願いいたします。

【10】Disclosure - Alchemy

先述したように子どもが産まれてからというもの、光陰矢の如し、本当に時が加速したのかと思うほどに月日は流れていった。
その多忙さによって音楽を聴く暇がないだけでなく、何を聴いても何も感じない日々が続いて、正直絶望をしていたように思う。
そんな中で出会ったこのアルバムは何故かとても軽やかに沁みてきて、自分の心に水滴が落ちるような感覚があったことを覚えている。
Disclosureと言えば豪華なゲスト陣を呼び寄せたコッテリした作品を出すアーティストという印象が強かったのだけど、本作にはゲストが1人もいない。それにもかかわらず多数歌モノが収録されている。多分自分たちで歌っている。それはKhalidやSam Smithの洗練された歌声に比べるとどうしてもチープではあるのだけど、そのチープさが自分には心地よかった。
軽く調べると大手レーベルを脱退して一発目の作品とのこと。
自分たちの面白さを優先させて開放感たっぷりに作ったんだろうなというバイアスが、自分に音楽の楽しさを改めて思い出させてくれた。

【9】Haley Smalls - Summer Pack, Vol.1


すいません、正直どこのどなたか存じ上げませんという感じで何故出会えたのかも覚えていないのだけど、とにかく2曲目の“I Deserve”が心地良すぎて夏とも言わず延々聴いていた。
4曲目以降はまあ普通くらいなんですが、2曲目(その前後)の曲が良すぎて、絶対10位以内には入れたいなと思っていた次第です。
“I Deserve”是非聴いてください。世紀の大名曲です。

【8】utumiyqcom - 01


ジャケがこういうアートワークのアーティストをあまり聴いてこなかった人生で、ボーカロイドとか歌い手とか全く知識がない自分が何故このアルバムに辿り着いたのかは案の定今となってはわからないのですが、ドリル的な三連符トラックに切実なリリックと絞り出すようなボーカルが乗っかったこのアルバムは何故か自分の感性に強く馴染んだ。
あとトラックへの歌の乗っけ方が気持ちいいです。
“mind garden”って曲が顕著で、ラップ的なアプローチがメロディに転換する塩梅が絶妙。ビジュアルイメージとはだいぶ違ってUSの現行R&Bをいかにローカライズするかということに対して高度なチャレンジをしているように聴こえる。
この記事書き始めてから知ったんですけど2024年のラップスタアに出演しておられるんですね。
お前らより俺のほうが先に知ってたから。そこだけよろしくお願いします。


【7】Elle Teresa - Pink Crocodile


その年の日本語ラップアルバムのベストに自分がElle Teresaを選ぶ日が来るとは思ってもいなかったのが正直なところです。
2010年代後期にYuskey Carterとセット的な形で名前を聞くようになった時は、ゆるふわギャングのフォロワー的なイメージしか無かったし、“GOKU VIBES”で客演に呼ばれた時も「なんでエルテレサ?」と思っていた。
そこらの凡百な日本語ラップヘッズと同じく私はElle Teresaのことを舐めていたのだけど、完全にひっくり返された。もう沼津に足を向けて寝ることはできない。
もはや舌足らずなレベルで発音を潰して言葉を畳み掛けるラップスタイルが、トラックと完全にマッチしていて独特のグルーヴと気持ちい聴感を生み出している。
インタビューで語っていた、誰とも連まず毎日沼津のスタジオで曲を作っているというストイックさが、言われなくてもわかるくらい滲み出ている。
ちなみに同年リリースの“KAWAII BUBBLY LOVELYⅢ”も超絶名盤です。ギリギリまでどちらを入れるか迷った。

1番好きなラインは下記の「カチカチ」と「勝ち」を引っくるめてリリックにしつつ、そのままその音でライミングしていくところ。

爪が擦れる音カチ
勝ち負けどうでもいい
ダサいのは無い価値
チックタックしないスライドする時計の針
あの人カモだから搾り取るダシ

Nail Sounds


【6】Icona Pop - Club Romantech


この人らも個人的に全然知らなかったんですが、10年前のEDM全盛期に“I Love It”という曲が超絶大ヒットしてたらしいです。当時そういう感じの音楽を全然〜以下略。
とは言え自分がEDMと聴いてイメージするやかましさとか仰々しさというのは今作にはそれほど無い。いや、充分に騒がしいダンストラックではあるものの、ハウスミュージック的な“絶頂まで持っていきすぎない気持ちよさ“が割合として多いようにに感じる。
試しに10年前に出た前作聴いてみたんですけど、めっちゃうるさかったです。
このアルバムも先述したDisclosureの“Alchemy”に似ていて、基本ダンストラックなんだけどほぼ全ての曲にボーカルが乗っかっている。
Disclosureの方はわりかしボーカルも楽器の一つとしてチョップしてループさせたりもあるんですが、こっちはPUFFY並みにずーっとメンバーの二人がユニゾンで歌ってる。トラックの良さもあるけど、そのユニゾンが垢抜けてなさすぎて絶妙にいなたくて(でも10年前からは明らかに洗練されていて)それが肩の力を抜いて聴き続けられる要因かもしれない。
ほぼ全ての曲で関わってる“YORO”というプロデューサーも優秀なんじゃなかろうか。Swedish House Mafiaの曲にも関わってるようですが。詳細はよくわからない。


【5】Tone Stith - P.O.V


「シルキーな歌声」というとTone Stithのような歌声をイメージするんですが皆さんはいかがでしょうか。
90s成分強めのオーガニックなトラックに蕩けるような彼のボーカルが乗ったらもうそれだけで充分。
素材にこだわったザル蕎麦みたいなアルバムなのであんまり書くことがない。御託は良いので聴いてほしい。22分で1周できるし。


【4】Q - Soul,PRESENT


R&B系の音楽が好きでプレイリストを色々と漁っていると、Princeという存在の大きさを肌で感じさせられることがある。
先日Apple Musicが発表した「史上最高のベストアルバム100」にも4位に"Purple Rain”が入っていたし。
影響を受けたアーティストで言うと、ライバル的扱いをされるMichael Jacksonよりも多いんじゃないでしょうか。
QもPrinceから様々なインスパイアを受けていることが感じられるアーティストではあるけれど、ただのフォロワーという感覚はない。
収録されている"STEREO DRIVER"や"INCAPABLE HEART"からTOTOの"Afrika"のようなAORのニュアンスすら感じられた。
その幅の広さと透き通るファルセットが心地いい。

【3】Brian B-Flat Cook - R and B Lover


このアルバムに関しては2024年になってから存在を知ったのだけど、ベスト10に入れざるを得なかった。
ジャケからしてあまりにコテコテな90s R&Bオマージュ、やりすぎてもはやコスプレじゃないですかという印象すらあるが。
Hiphopと混ざりきる前の歌モノとしてのR&Bへの愛がふんだんに詰め込まれている。
Twitterで検索しても、まだ英語圏の人もそんなに見つけていないっぽい。
早く見つかってくれ。

【2】Skrillex - Quest For Fire


“Skrillex”の綴りって毎回入力するたびに間違えてないか不安になるね。
Icona Popの項目で記載した通り、自分はEDMと大別されるような音楽を聴いてこなかった。
そういう音楽を聴く人たちを下に見ることで自分のちっぽけな自尊心をシコシコと慰めていたので、当時クラブシーンでEDMとブロステップがどういう区分けをされていたのかもよくわかっていない。
8年ぶりだというフルアルバムを聴いた時、自分がイメージしていた“EDM”の姿はそこには無かった。
「これがUKダブステップもしくはブロステップという音楽か!?」と思ってプレイリストを色々調べたけど、このアルバムのような曲はあまり無かった。"Sub Low”というSpotifyのプレイリストが一番しっくり来たが、これが新たなジャンル名なのかどうかすら調べてもよくわからない。とにかく何か新しいムーブメントをSkrillexという千両役者がおっぱじめようとしていることは間違いなさそうだ。
アーティスティックなんだけど、怠くない。
連打される空気砲みたいなベース?ドラムが気持ちいい。
その緩急は節足動物が壁を素早く這いまわって、でもすぐ止まって、を繰り返している姿を想像させる。正直キモい。キモいけどこちらの理解を超えてくる畏怖のような気持ちもある。
どの曲も主役級にインパクトがあるドロップで、でも全体通して一枚のアルバムとして成立している。
Skrillexって凄いんですねという今更過ぎる感覚を心に宿した。



【1】Mom - 悲しい出来事-THE OVERKILL


去年もMomのアルバム“¥の世界”を年間ベストのひとつに選んでいた。
前作はとても暗いアルバムだった。ジャケからして暗いし病んでるしサウンドも含め「躁状態を想わせる、幽霊みたいだ」と当時記載した。
それと比べると一瞥した本作の印象はめちゃめちゃ開けている。ジャケも爽やかな青で、どの曲のサウンドもメロディもキャッチー。そこらのアーティストがリードトラックにしたいと羨ましがるような曲が20曲以上(全トラック25曲)パンパンに詰められている。
ただしその25曲のうち約20曲で歌われているテーマは、やはり暗かった。この世界の閉塞感とそれに対する虚しさ、自分は何にもなれない。自分はどこにも行けないと。繰り返し繰り返しMomは歌う。

嫌いなわけじゃないけど 正直あんまり好きじゃない
乗れないわけじゃないけど 全乗っかりは出来ないや
そんなものに囲まれすぎて 身動きが取れないよね

涙(cut back)

だってどれだけ必死に稼いでも 結局どこにも行けないじゃないか
どれだけ頭を使って這い上がっても 結局どこにも行けないじゃないか
都市のまなざしは死なない 僕はどこにも行けない

実験

翼を広げて この街を眺めたいよ
ネットワークのような沿線と道路の絡まりを
見たことないものを信じすぎて 目に見えないものを疑うことが増えた
かつての鳥たち

かつての鳥たち

本作品における彼の言葉はとても暗いけれど、世の中を見ていれば暗い言葉が自然とチョイスされてしまうことは至極当然のことのように思う。
だから私はこのアルバムを聴いてむしろ共感した。
「あなたも同じ気持ちなんですね」と。
そうやって約20曲、時間にして1時間、暗くてでも共感してしまう彼の主張を耳と脳に擦り付けられた後だからこそ、ほんのわずかなポジティブなリリックが突き刺さってくる。

僕と君のこれからの計画を立てようか
出会ってから今日まで反省ばかりじゃないか

今日のニュースとこれからの計画

平易な感想になってしまうけど、反省や苦悩とはそれを未来に繋げなければ…、いや繋げないといけないわけではないのだけど、そうしないと人間はしんどくなる。
もう充分私たちはしんどい目にあっている。楽しかったことを思い出したり、新たな発見をすることに人生の時間をもう少し割いても、バチは当たらないんじゃないかと、このどんよりとした世界観のアルバムを通して理解した。
そう考えると青空だと感じていたアルバムジャケットはBlueprint、青写真を表現していたのかなとも思える。
将来の事、これから創り生み出すもの、それらに向かうマインドを整理するために必要な長く険しく繰り返される苦悩。
こんな大作を作っておきながら、既に新しいアルバムをリリースしているのだからマジで化け物だと思いますよ。Momって。


【その他】

Miyauchi - “The Mixtape”


「さっさと新曲出せよ…まじでムカつくわ」とKOHHへの愛と苛立ちを歌ったMiyauchi
声の出し方などはKOHHから影響を受けていると感じる部分も多々あるが、スタイルや言葉選びは絶妙にオリジナルでそれが面白さに繋がっている。
KOHH名義じゃないけどチーム友達とかいう鬼バズり新曲出てよかったね。

Mr.Children - miss you


これまでの人生において自分はミスチルにハマったことがない。もちろん日本という国で生きていれば、その好き嫌いに関わらずテレビで街中で結婚式場で彼らの曲は頭に刻み込まれていたのだけど、他の音楽好きな人たちはミスチルを高く評価している意味はよくわかっていなかった。なんとなく全部同じに聴こえていたのが正直なところだ。それが“深海”であれ“SENSE”であれ。
壮大で仰々しくて“なんか聞いたことある”ストリングスアレンジが排除されると、桜井和寿という人のメロディセンスはこんなにも凄まじいのかと改めて気付かされた。
ラップらしきものに挑戦している“アート=神の見えざる手”など、正直思い入れのない自分からするとジジイが無理をしていると感じる部分もあったのだけど、それも人間臭くて刺さった。

Bruno Major - Columbo


このアルバムを聴いたのがメッチャ疲れている日だったことは覚えている。
片道1時間半の通勤電車に揺られながら、アコースティックアレンジのシンプルな楽曲に少しばかり癒された。

James Blake - Playing Robots Into Heaven


原点回帰的な評価をされることが多いようだけど、そんなに原点回帰ですかね。
出た手のころのJames Blakeは聴いたことのない音楽で、もっと暗くて、ジャケも不気味でなんか怖かった印象がある。あと個人的には退屈だった。
本作はどちらかというと前述したSkrillexの"Quest For Fire”との同時代性を感じた。Skrillexが2023年に出したもう1枚のアルバム"Don't Get Too Close"よりも。

7 - 7


Elle TeresaもそうだしWatsonとかも多分そうだけど、大都市圏から距離のあるローカルでストイックにラップしているアーティストの作品って研ぎ澄まされているなって感じることが多い。
「これはやりすぎかな?」とか「これはギャグっぽくなるかな?」というビビりを感じない。その迷いのなさが作品の質の高さに繋がっている。

BabyFxce E - The X Tape


2曲目の"Chicken Little”がめっちゃ良くて、正直その余韻だけで一周できてしまうEP。
デトロイトのラップシーンに詳しいわけではないので大したことは言えないのですが、べたっともたつくラップスタイルは先述したElle Teresaとの共通点も感じる(影響の矢印は多分逆だけど)

甲田まひろ - 22


ファッションモデルもやっている華のあるビジュアルで、このジャケで、と言ったら失礼だけど、開幕早々ジャズの香りがすごいボーカルソロから始まったと思ったら曲の途中でブレイクビーツが始まりオールドスクールなラップをしだしたり、トラップテイストのトラックに乗っかったり、と思ったら超王道なポップスを歌いだしたり、なんか変ですこのアルバム。
(Deluxe  EditionではGottzやSANTAWORLDVIEWを客演に呼んでいる。なんで?)
プロフィールを調べると元々ジャズピアニストからキャリアを始めているとのことで、才能が溢れすぎてまだ固まっていない感すらあるのだけど、収録されている楽曲のセンスは素晴らしいなと思っています。
めっちゃ好きかと言われたらまだ掴めていないけど、頭の片隅にずっと違和感が残った作品。怪作。

Berhana - Amen(The Nomad's Dream)


12曲26分、軽やかでタイトなオルタナティブR&B
4曲目の“tanuki”とは日本の狸のことで合ってますか?多分わからないまま俺は死ぬと思う。

Jam City - Jam City Presents EFM


2023年のダンスミュージックシーンは歌モノが流行っていたのだろうか。いや単純に自分がそういうのが好きだったってだけだと思いますけどね。
このアルバム聴いた後、過去作辿ったら違いすぎて笑った。お前は長渕剛か。

Tabber - Madness Always Turns to Sadness


韓国のR&Bシンガー兼プロデューサー?なのかな。DEANのレーベルに所属しているそうです。
本作以外のアートワークを見てもホラーなテイストが好きなのか、アルバム前半はその雰囲気を喚起させるリズムパターンが複雑なオルタナティブR&Bが続くけど、中盤からは開けた雰囲気の楽曲も増えてくる。


2023年にTyler, The Creatorが「人にアピールするためのベストアルバムTop5とか発表するな!客観的なベストなんてどうでもいいんだよ、お前の好きなものを話せよ!」とインタビューで話していた。(意訳)(1時間15分あたりね)

仰る通りだなと思う。Twitterで流れてくるAOTY投稿のうちのいくつかが「これを挙げてる自分わかってますよね?」という確認作業に見えることがある。私が穿った目で見ているだけかもしれないが。
べつに批判がしたいわけじゃあない。ただ、みんな“間違えたくない”んだろうなとは思っている。
音楽の趣味も、政治的主張も、芸能人の不貞に対する反応も。「このリアクションが正しいですよ、ね?みんなもそう思ってますよね!?」と不安だから投げかける。勝ち馬に乗りたいから自分がもたれかかった方を持ち上げる声は大きくなる。
間違えることが許されないこの世の中で、人の顔色を見て決めた「私のベスト」が世間に発信されることは仕方ない側面もあるだろう。

でも、この世界に残される自分の声が、そうやって外部的要因によって形成されたものばかりだというのも寂しいなと思う。
つい昨日のことだけど、経験したことのないような頭痛を感じて、救急外来にかかった。
蓋を開けてみれば台風1号が近づいたことによる低気圧由来の片頭痛で大したことはなかったのだけど、想像つかなかったタイミングで自分が死ぬという可能性を考えはじめてもやりすぎではない年齢になってきている。
そうやって自分がぽっくり死んだとき、インターネットに残る自分の声が、本当は思ってもいなかったような、誰かに対して意味のないマウントを取りたいための発言だったとしたら…、なんとなく悔しい。
自分は何か大層なものを創造しているわけでもないし、誰かに影響を与えるようなこともしていないし、間違えることも多いし、人生の主役ですら無くなりつつあるかもしれないけど、それでも「これは私の正直な思いです」と胸を張って言い切ってやりたいというエゴは残っている。

エゴまみれの1万字近い記事をここまで読んでくださった方、どうもありがとうございます。
来年もまたこんな記事書けたらいいな、次は2025年の年末に2024年のベストアルバム記事を書くかもしれないな。
あなたのエゴもどこかに共有してくれたら嬉しいです。

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