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#52 ハチミツ酒とベオウルフ。「英語教師のための英語史」の第2章を読む。

先日お伝えした、辺見、他(2018)の「英語教師のための英語史」だが、その第2章。第2章はほぼほぼベオウルフの説明となっている。ベオウルフはご存知の方も多いと思うが、英語の最も古い文献の一つで、炎を吐くドラゴンが出てくる英雄譚であり、指輪物語で有名なトールキンなどに大きな影響を与えている。ドラクエやセカイノオワリの楽曲を現代の我々も楽しんでいるが、その始まりの一端は、この本に含まれていると言ってもいいだろう。

Beowulfがいつぐらいの話かというと、この年表をみると分かりやすい(クリック)。さて、今回も気になったところを紹介する。

アルフレッド大王とガンダルフ

アルフレッド大王(Ælfred the Great)とガンダルフ(Gandalf)の、両方とも名前にelfが入っていることが紹介されている。古英語もしくは中英語の頃は、二つ以上の要素から成ることが多いことが指摘されている。なお、Gandalfは作者トールキンが北欧神話のGandalfeから取ったとされているが、その前半部分gand-は古ノルド語でmagic staffこと、魔法の杖を意味する。

冒頭から11行目の音読

親切なことに、冒頭から11行目には、カタカナが単語に振ってあるので、大変読みやすい。また、堀田先生がVoicyで音読もされているので、両方を参考にしながら音読まねするとちょっと上手く読めたような気がする(^^)/ 古英語を聞くことは普通できないので、地方で独学する者としては、本当にありがたいと思う。

なお、5行目にmeodo setlaという語がある。酒席という意味である。meodoはハチミツ酒を意味し、setlaは先日触れた印欧祖語*sed-に由来する。現代ではseatと考えればいいだろう。meodoのdがかなり傾いており、sがlong-sと呼ばれるfの横棒がないような昔の字体であるのでちょっと分かりにくいが、3年ぐらい前に初めて見た時よりも、だいぶ読めるようになっていて嬉しい。2行目のgeardagumもgearが古ノルド語のgærつながり(現在のyester-)で、dagumがdayだと分かるようになってきた。

Wikipediaより。meodo setlaはこの図の一番下の行の右。https://en.wikipedia.org/wiki/Beowulf#/media/File:Beowulf_Cotton_MS_Vitellius_A_XV_f._132r.jpg

「ほっと一息」コーナー

第2章の「ほっと一息」コーナーでは、群れをなす語が、単複同型になってきた語と-s複数形を取るようになった語があり、群れが一体と見えるから単複同型という説明に対する考察が書かれている。とても参考になる。しかし、「群れ」としての説明の中に、後者の次第に-s複数を取るようになった中性名詞の例の中にwifeがあり、この語を「群れ」の例に加えていいの?と思った心配した

今日はこんなところです。


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