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「茶の湯以前」(神奈川県立金沢文庫)

 茶の湯(茶道)が本格的に始まったのは室町時代からですが、そのルーツは鎌倉時代、禅僧の栄西を通じ、宋から点茶(抹茶に湯をかけて撹拌する方法)が伝わったことに端を発します。栄西が当時の将軍である源実朝に『喫茶養生記』を献上したこともあってか武家社会に浸透、南北朝になると生産量の高まりを背景に「闘茶」(茶の産地・品種を飲み分ける勝負形式の茶会)などの趣味化が進み、やがて室町時代の茶の湯へと繋がっていきます。

 展覧会はその間のおよそ100年間についての資料展示となります。展示品のほとんどが鎌倉〜室町時代の書状で、前提知識も求められる展覧会でしたが(その場でコトバンクを調べました…)、茶の歴史を勉強する貴重な機会ともなりました。
 個人的には、茶というものがどういう風にして扱われていったのかが大変興味深かったです。栄西の頃は二日酔いの治療など、お薬としても使われつつ、嗜好品としても愛飲され、また密教の儀式では供物として、書状の一つには「酒の代用」という言及もあります。さらに鎌倉幕府が滅亡した後、ここ金沢文庫のある称名寺は武家勢力との交渉手段として茶を贈ってもいたようです。
 茶会も現在とは少し違い、当時の唐物ブームを反映した、入手した唐物(宋時代の青磁など)を愛でる会であった模様。今の茶道はどちらかと言えば日本的なものを愛でるイメージですが、ということは茶の文化も数百年の時代を経て、茶道もだんだん日本的なものになっていったのかなぁと。

 ハード系の展覧会ではありますが、キャプションに赤字で
「京都のお茶を心待ちにしています」
「お茶マニアなあの人に新茶を届けたい!」
「茶臼、送ってくれてありがとう」

 などと、書状の要旨を1行でまとめてくれていたのがありがたかったです(図録には翻刻、いわゆる文字起こしが掲載)。講演会も充実していますし、茶のことを勉強するきっかけとしては良い展覧会かも。

入口より

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