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現場で観ること

 美術を観に行くとき、ほぼ感想文を書くこともセットにしているから、事前にある程度下調べをすることが多い。あまり箇条書きの習慣が無く、ヘタしたらそのまま出せば実際に行ってなくてもバレないんじゃないかというぐらい、きちんとした「下書き」を書くこともある。

 しかし、美術館で実物を見た帰り、大抵の場合、その下書きは大半もしくは全てを捨てることになる。ウェブ画面の印象は、実物を前には通用しない。だから言って下調べが不要かというとそういうわけでもなく、下調べゼロで観に行くとどうも文章がフワフワするので、そのバランスは難しいところがある。

 美術鑑賞に限らず、「現場で観る」ということは自分の中で大切にしているように思う。机上の知識はそれで完結するほどまでには役立ってくれない。テレビでもウェブでも紙媒体でも、そういった「情報」は主に視覚と聴覚に訴えてくるが、それ以外の感覚には訴えてはくれない。少なくとも触覚と嗅覚はセットにしたいところで、その感覚が揃わないと中々体験として印象に残ってはくれない。

 その延長で何回か自然災害の被災地に訪れる経験もした。どれだけ映像技術が進み、情報化が進んだと言っても、土埃の匂いや直射日光、街全体がボランティアや自衛隊の空気に包まれる感じ、そういうことは現場に赴かないと「まだ」わからない。もっともそれは、私にそういう部分への想像力が欠如しているだけかも知れないが。

写真:横浜市歴史博物館より

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