涙は海になる
砂浜で待っていた
もう二度と目を開ける事のない
この子を抱いて
雲の間からキラキラと降り注ぐ光
天使が梯子を降りて来た
後は任せてください
天使はそう言い
私の肩にそっと触れた
この子の事を絶対に離すまいと
きつく抱きしめていたその腕と
その体に食い込むほどぎゅっと力んだ指先を
丁寧に ゆっくりと
体から剥がしていった
私は天使を見上げ
神さまは知っていますか?
この子の好きな食べ物や
お気に入りのおもちゃ
好きな遊びや 好きな景色や
仲の良いお友達のことや
それから それから‥‥
私は畳み掛けるように質問したが
天使はただ頷ずいて
私の腕から受け取ったこの子を
愛おしそうに撫でた
神様ってずるい
こうやってみんなを連れて行って
そして自分のそばにおいて
ずっと過ごすつもりでしょう
流れる涙が砂に染み込んで
寄せる波と混ざり合い海になる
いつか あなたもそこへ
天使は微笑んで言う
この子は匂いを辿って
必ずあなたを見つけてくれるでしょう
それまで私は
愛しいもので命を満たしていく
やすきち
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