ダメになる会話「恋の相談」

先輩 「なあ後輩。」
後輩 「なんですか?」
先輩 「相談に乗ってほしいのだ。」
後輩 「相談ですか?お役にたてますかね?」
先輩 「うむ、恋の相談というやつだ。」
後輩 「先輩が?ヘェ~、なんか意外ですね。」
先輩 「そうかな?」
後輩 「でも僕にいいアドバイスができるかわかりませんよ?」
先輩 「しかし他に相談できる相手もいなくてな。」
後輩 「まあ、聞くだけ聞きますよ。」
先輩 「うむ。実はな、昨日彼女とケンカになったのだ。」
後輩 「先輩、彼女いたんですか?全然知らなかった。」
先輩 「開口一番こう言われたのだ。
   『これ以上つきまとうなら警察を呼びます!』 とな。」
後輩 「重いっ!しよっぱなから重いっ!
   相手はもう別れたつもりじゃないですか!」
先輩 「そうなのか。」
後輩 「国家権力が登場予定じゃないですか!
   僕なんかが相談に乗れる段階じゃないですよ!」
先輩 「さらに続けてこう言ったのだ。
   『だいたい、あなた誰なんですか!』 」
後輩 「他人じゃないですかっ!彼女どころか知り合いですらない!」
先輩 「しかも隣にいた男が
   『私の妻につきまとうのはやめてもらおう』 ときた。」
後輩 「旦那いたー!人妻だったー!」
先輩 「さらに手をつないでいた子供が
   『パパこの人誰?』 だとさ。」
後輩 「子連れだ~!一家団らん中だ~!」
先輩 「すると後ろにいた老人が
   『明彦!いきていたのか!?』 と。」
後輩 「だれだー!老人も明彦もだれだー!」
先輩 「するとその横にいた中年女が
   『お父さん、明彦は去年しんでしまいましたよ』 と。」
後輩 「何人でてくるんだー!」
先輩 「彼女も老人に
   『おじいちゃん、騙されないで。
   この人はお兄ちゃんじゃないわ!』という。」
後輩 「全員家族だったー!」
先輩 「旦那は伏し目がちに
   『あれは不幸な事故でした。』 とつぶやいた。」
後輩 「もう先輩が全く関係ねぇー!」
先輩 「すると通りすがった警官が
   『あれは自殺として処理されましたよ』 という。」
後輩 「警察からんできたー!」
先輩 「しかし中年女は
   『あの日明彦はネットショップで買い物をしていたのよ。
   自殺ならそんな事しないはずだわ。』 と語気を強めた。」
後輩 「何かの話が進み出したー!」
先輩 「すると旦那が
   『あれは健太へのプレゼントでしたよ。
   死んだあとでも誕生日のプレゼントだけは
   渡したかったのでは?』 と言い出した。」
後輩 「これもう恋の相談でもなんでもないな。」
先輩 「だから俺は
   『発見時の状況は?』 と聞いてみた。」
後輩 「なんで先輩が刑事みたいになってるんですか?」
先輩 「警官は
   『部屋はドアも窓もカギがかかっており、
   窓枠にガムテープで目張り、密室の状態で石油ストーブを
   長時間使用。一酸化炭素中毒による窒息死です。』
    と説明してくれた。」
後輩 「無関係の不審者に教えすぎだ。」
先輩 「彼女は
   『窓枠からスキマ風がはいるって前からボヤいていたもの。
   目張りはそのせいよ。だからあれは事故よ母さん』 
   と母親をさとす。」
後輩 「中年女は母親だったのか。」
先輩 「すると子供が
   『パパ、あの時、明彦叔父さんに、窓枠に目張りを
   するように言ってましたよね?』と旦那をにらんだ!」
後輩 「あれ?!子供って何歳?意外と大きい?」
先輩 「旦那は急に緊張した面持ちで
   『いや、あれは、室内にストーブを持ち込んでいると
   思わなかったから…』 と視線をそらした!」
後輩 「旦那がちょっと怪しいぞ!」
先輩 「すると母親は
   『リビングのストーブを明彦が部屋に持ち込んでいる時
   あなたはリビングにいたわ。見ていたはずよ!』 と、たたみかける!」
後輩 「疑惑は増すばかり!」
先輩 「ついに老人が
   『明彦が死んでしまえばわしらの遺産はすべて花子の
   つまり君の妻のものになる!』と叫んだ!」
後輩 「彼女さんは花子さんていうんだ!」
先輩 「花子も叫んだ!
   『お兄ちゃんの部屋が酸欠になるとわかっていて
   あえて見過ごしたのね!』」
後輩 「一家団らんが一転して修羅場に!」
先輩 「旦那は取り乱し
   『違うっ!違うっ!俺にそんなつもりは無かったんだ!』
   とわめきながら走り去った。」
後輩 「果たして旦那の真意は?!」
先輩 「彼女とその家族は旦那を追って行った。」
後輩 「追いかけないと!先輩も追いかけないと!」
先輩 「そしたら、そばにいた警官がこう言ったんだ。」
後輩 「警察まだいたんだ。仕事しろ。」
先輩 「『危険な事が起こることを予想しながら、あえて見過ごす事を
   未必の故意(みつひつのこい)、と言います。これも犯罪となります。』」
先輩 「そう言って、パトカーは走り去った。」
後輩 「警官はパトカーに乗ってたのか…
   はぁ…あの、もう何が何だかわかんなくなってますけど、
   これなんの話でしたっけ?」
先輩 「なあ後輩。旦那は…故意だったと思うか?」
後輩 「…故意の相談だった。」

-END-

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