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「夜のふくらみ」を読んで
私の大好きな小説のひとつである。
いつ買ったのかはもはや覚えていない。なんとなく、久しぶりにハードカバーを買いたい気分だった。給料日にお金を下ろして、すぐに書店に向かった。
窪美澄さんの小説にハマっていたのですぐに購入を決めた。ちょっとエッチなタイトルに惹かれたってのもある。
タイトルから想像されるように、セックスが物語の中心となる。セックスをめぐる登場人物の感情は、それは生々しく、リアルに、だけどとても美しく描かれている。
性欲はときに、人間関係をめちゃくちゃにする。欲望のままに行動すること、欲望を見ないフリしてやり過ごすこと、どちらが正しいとかは分からないけれど、どんなに綺麗事を言ったって、生きている限り、私たちの中にそれはある。無視することはできないのだ。
なんだか性欲爆発小説みたいに思われるかもしれないが、そういうわけではない。
登場人物にはみんな、それぞれの愛がある。それが繊細に描かれている。愛のそばにセックスがあり、ときにそれが噛み合わないところがなんとも憎めない。
これがリアルな人間世界であり、自分もここで生きていること。欲望が故の汚さや醜さは、誰の中にも存在すること。だけどそれは、決して汚らわしいだけではないこと。
読み終わったとき、そんなことをボーッと考えてしまう小説である。
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