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播磨陰陽師の独り言・第531話「トラウマはなかった〈後〉」

 日本の戦国時代は、ある意味、悲惨な戦争でした。当時は火縄銃でしたので、銃撃で亡くなる人は少なかったそうです。ただ怪我人が大量に発生しただけです。それよりも、刀で手足を失う人や、腹を裂かれたり、首を切られたりする人が多いと言います。死体は悲惨な切り刻まれ方をしていて、それだけを聞いてもトラウマになりそうです。記録では帯の左右に三つづつ、生首をゆわえて走っている人もいたそうです。そんなのを見ても、あるいは自分がそんな人でもトラウマになっていないのだから、昔の人は心が強かったのですね。
 平安時代のいくつかの記録を読むと、戦国時代よりも酷い刻まれ方をした死体の描写があります。古語で書かれているので、普通に読んでも意味が分からない人が多いのですが、意味を知ると驚くかも知れません。それを悲惨な殺し方をした本人が、トラウマからではなく、汚い死体を残してしまったことを後悔して、
「見たくない」
 と言ってしまうのです。あくまでも、殺したことより、場所を汚したことを後悔している様子です。これらのことを考えるに、
——昔の人はトラウマになるようや出来事に慣れている。
 と言えるのかも知れません。
 これは、
——当時の人々が陽気だった。
 と言い換えることも出来ると思います。
 陽気な性格ではトラウマにはなりません。トラウマは、中途半端に頭が良い、ネガティブな考えに陥りやすい人がなる病気のようなものです。
 同じ病気にかかっても、ネガティブ思考をする人は治り辛いとも言います。ネガティブ思考こそが全ての不幸やトラウマのはじまりなのです。
 また、ある研究には、
——ネガティブな思考をしがちな人は、ポジティブな思考をする人より重大な交通事故を起こしやすい。
 と言う結論もあります。
 ネガティブな考え方をして不幸やトラウマを引き寄せる人がいます。他人の行動に原因を探し、恨み続けることにより、暗い未来を引き寄せる人も多くいます。他人のせいにしても問題は解決しません。
 嫌なことを思い出すたびにネガティブな想いが積み重なり、内容は悪い方に変化して再記憶されます。過去にこだわっても良い未来は築けません。もし、あなたにトラウマがあるならば、そのことは考えずに、明るい未来について、あれこれ妄想してください。その内、トラウマも晴れますから。

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