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不幸のすべて・第三十九話「物の記憶と礼節」

 前回は、
 なぜ、器物がネガティブな感情を記憶することが出来るのでしょう?
 何がそれを可能にするのでしょうか?
 と言うようなところで終わりました。
 さて、器物はそれ自体の固有の情報を持っています。これには時間や外部からの干渉で、情報が追加されたり変化したりする特性があります。
 たとえば、ここに粘土があったとします。
 あなたがその粘土で作った形は粘土に記憶されます。
 ここであなたが、たとえば楽しんで粘土をいじったとします。また、たとえば怒りながら粘土をいじったとします。このふたつの作品の違いは多くの人に感じられることと思います。それは作品の形に表れます。
 たとえば、あなたが怒りながら灰皿を床に投げつけたとします。
 それを拾った人はその状況を見て、
「誰かが怒って投げただろう」
 と推測することが出来るでしょう。
 しかし、その灰皿が机の上に直されたとしても、なおも、あなたの怒りを、灰皿そのものから読み出せる人がいるのです。
 人体、特に脳は情報を発信する能力を持ちます。
 また、情報を読み込む能力もあります。
 器物の持つ情報は、たとえば、あなたが触れた器物はそれ自体の情報と、あなた固有の情報が融合された中間の情報を持ちます。
 器物がこの世に作り出される時、その基本的な構成要素を持っています。
 基本的な構成要素は素材と形状の二種類です。素材は時間と共に分子構造が変化します。それが金属なら錆びたりします。また、木製なら乾いたり湿気ったり風化したりします。そして、その分子構造はとても希薄《きはく》になります。
 分子レベルでそれを観察すると、電子などが飛び出して外から来た別な電子と入れ替わり続けます。
 この時は素材の基本情報に基く変化の範囲にありますので、素材が大きく変化することはありません。たとえば、金属が、突然、プラスチックに変わることはないのです。

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