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播磨陰陽師の独り言・第494話「同化する人々」

 異なる人々が一緒に生活すると、性格や顔が似てきます。ペットまでも飼い主に似ると言います。この現象を〈同化〉と呼びます。同じ家で生活しなくても、同じ地域で暮らして行けば、やがて同化は起こります。もちろん、拒否し続ければ同化は起こりません。しかし、長い間、拒否し続けることは困難であり、知らない内に同化しかけているものです。
 日本に長く住む外国人の顔が、何となく日本人ぽくなるのはそのためです。
 では、同化はなぜ起こるのでしょう?
 外国人が日本語を話すようになると、顔の筋肉の中で、今まで使っていなかった部分が刺激されて発達します。すると日本人ぽい顔になるのです。しかも、日本にいると、日本人らしい動きになります。たとえば、電話しながらお辞儀するとか、箸の使い方に慣れると言う部分です。こうなると体の筋肉も日本人的な特徴に発達するのです。
 日本語を話しているので、頭の中も、当然、日本語で満ちています。すると困ったことに、咄嗟の時に日本語が先に出て来るようになるそうです。たとえば、どこかに膝をぶつけた時、思わず日本語で、
「痛い」
 と叫んでしまうそうです。
 今、中国の人が使っている中国語の大半は日本語由来の言葉です。もし、日本語由来の言葉を禁止したとしたら、会話が成り立たなくなるそうです。だから、あえて日本語を覚えたとしたら、頭の中が本来の日本語由来の言葉から日本語そのものに書き換えられ、いざと言う時、先に出て来る訳です。
 英語圏の人々にも同じような現象が起こります。ただし理由は少し違います。英語圏の人々にとっては、日本語は最も学習が困難な言語だそうです。その難しい日本語を学び続け、日常会話が出来るようになったら、あとは自然に語彙が増えて行くだけです。この時、自然に語彙が増えると書きましたが、ここがポイントです。実は英語圏の言語は人工的に造られた言葉です。人工的と言うことは学習しなければ使えるようにならないと言う意味を含んでいます。もちろん日本語も学習する必要があります。しかし、ある程度、日本語を学ぶと、あとは自然に話せるようになります。これは日本語が自然に発生した言語だからです。
 外国のほとんどの古い言葉は自然に発生したものです。だから日本語に似ています。人間が自然な状態で言葉を生み出すと、日本語のような言葉になってしまうのです。これが日本に住むと同化してしまう主な理由です。
 そして、同じような食べ物を食べて、同じような動きをし、同じような考え方をすると、皆、同じような雰囲気になって行くのです。

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