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怪しい世界の住人〈河童〉第六話「関門海峡に残る伝説」

 前回の最後のところに書いた藤原時平ふじわらのときひらは西暦の871年生まれ。909年に没すので享年三十九歳。少し若くして亡くなっています。
 901年に道真公を嘘でおとしれたので道真公は太宰府に左遷されます。そしてそれからニ年後に道真公は無念の死去。時平はそれから六年後に三十九歳の若さで道真公の祟りを受けて亡くなりました。
 その時平が切り落とした河童の手が今に残されていると言うのです。
 また、道真公がある時、河童に川に引き込まれそうになり、その手を切り落としたこともありました。
 実は、九州のあちらこちらに河童の手なるミイラがあるのですが、本物かどうかは分かりません。多くは作り物らしいのですが、中には地球上の生物とは違う特徴を持ったミイラもあるそうです。
 江戸時代に実在した長崎県佐世保市早岐の川魚問屋・岩永与次兵衛と言う人のところにも〈河童の手〉と呼ばれる不思議な物が伝わっています。有名な『甲子夜話』の中にそのことが書かれています。

——河童の手なる物を取り寄せて見ると、てのひらより先のみであった。皮は脱して骨のみだが、その形は大きな猿とも言えない物で、指が四本あって長く、関節は三ツあった。爪も付いているが、犬の爪のような先がとがっていて色は赤い。年を経たと覚えて乾き枯れているが、指の又に水掻みずかきと見える物が残っていた。

 松浦静山まつらせいざんと言う人が見て書いた記録ですが、彼が見た〈享保の頃に江都に捕えられた河童の図〉と思い比べても、その図に似て河童の手は本物であるような感じを受けたそうです。
 どう言う理由や経緯で捕えられ伝わったものか、その理由は分からないそうですが、ただ、所有していた人は、
「祖父の時より有る」
 とだけ言ったそうです。

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