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今更だけど「宝石の国」10巻まで読んでみた。

コロナで時間ができてしまったので、今更だけど「宝石の国」10巻まで一気読みしてみた。なにこれ、面白いじゃん。ここ数年で、もっともその世界に没入した気がする。 イラストまで描いちゃったよ。

 世界は6度滅び、荒涼とした大地には少しばかりの植物と、昆虫、 

 そして、かつての生き物の末裔である微生物が鉱物と合成された鉱物生命体
 「宝石」が住んでいた。
 たとえ壊されても粉々にされても
 宝石たちは微生物のおかげで何度でも自我を保ったまま蘇る。
 彼女(?)らは月から訪れる狩人と数万年にわたる戦争状態にあって、
 時には破壊され月に持ち帰られ、装飾品にされていた。


 という、どこからどこまでも南極のようにヒンヤリとした空気で満たされたような世界観にあって、
 28人の宝石たちと、彼女(?)らの先生である金剛は和気藹々と過ごしている。
 主人公は能天気で戦闘力ゼロのフォスフォフィライト。
 南の海の浅瀬のような澄んだ宝石。
 そのフォスが能天気なままラスボスを倒す単純明快なストーリーかと思いきや、
 各エピソードごとに、そのシチュエーションで考えられる限りの最悪の状況を更新していき、
 もうもはやこれ以上の最悪はないだろう、という読者の想像をはるかに越えて
 絶対零度級の凍土の風を送り込んでくる。

 当初は能天気だった主人公フォスは
 仲間の宝石が自分の代わりに破壊され月に連れて行かれたのを機に戦闘タイプに変わり(3巻)、
 にもかかわらず月人に頭部を破壊され持っていかれ、
 フォスは体を失って頭部のみになっていた宝石ラピスラズリの頭部を接合されたことで
 頭脳明晰で理知的、クールな性格に変わった(7巻)。
 ラピスの頭脳を引き継いだフォスは自分たちの司令官である「金剛」への疑いを深める。
 疑いを晴らすためもあり、月に乗り込んだフォス。
 月の王子から、金剛と月人との関係、
 そして宝石たちは金剛への「刺激」の一環として破壊され月に連れ去られていたことを知る。
 月人にとって宝石には価値はなかったのだ。
 フォスは月の王子に交渉し、宝石たちの生存権と自由のために
 金剛に裏切りという刺激を与えるのだが……。

 本編は「月刊アフタヌーン」で絶賛連載中で、どうもフォスは第四形態へと姿を変えたようで。
 ストーリーの続きが気になるのもさることながら、
 「何のために自分たちは存在し続けるのか」という
 宝石たちや月人の悩みに、なぜかひどく共感できる。
 飽食と絶望の現代日本の社会情勢も、たいがい酷いからね。
 そして、月並みだけれど、宝石たちや月人の戦いを見ていると、
 自分も生きねば。って思えるのだ。
 絶望するにはまだ早いってね。

 面白いので未読の方には超オススメよん。

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