嘘と雪の記憶
冬の夕暮れ,
オレンジ色の空が一面に広がる。
雪がしんしんと降り積もる中,
小さな雪だるまを作り終えた少年が一人,
寒空を見上げていた。
「こんなに寒いのに,どうして嘘をつくんだろう?」
と,彼は小さな声でつぶやく。
彼は友人に
「一緒に雪だるまを作ろう」
と誘われたが,待てど暮らせど友人は来なかった。
昨日の夜,ふざけたような口調で
「絶対行くよ」
と言われた言葉が嘘だと気付くのに時間はかからなかった。
けれど,少年は怒ってはいない。
ただ,なんとなく寂しいだけだ。
小さな手で雪だるまの頭を撫でながら,
オレンジ色の空を見上げて微笑む。
「まあいいさ。
あいつが来なくても,この雪だるまは俺の友達だし。」
彼はポケットからマフラーを取り出し,
雪だるまの首にそっと巻いた。
そして,オレンジ色の空が夜に変わり始める頃,家路についた。
嘘でも,誰かを待つ時間も,それはそれで特別なものになる。
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