ここ最近で一番のクオリティでした『心の傷を癒すということ』

とにかく丁寧に丁寧に作られた、質の高いドラマ。

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俳優も映像も音楽も台詞も、一つ一つをきちんと作ったんだなあ、が伝わるドラマを久しぶりに見た気がする。単に演技がいいでもなく、単に音楽が感動的なわけでもなく。全く別の作品で蒼井優が「自分は女優、ではなくて俳優部の一員って思って映画をつくる気持ち」とインタビューで答えていたけれど、その「俳優部」な感じをこの作品からも受けた。物語の大切な大切な、でも一要素としてそこで細やかな表現をする役者という存在。柄本佑・尾野真千子もそういう姿勢なんだろうな、とこれを見ていて思った。

「安先生」の苦悩とか優しさを、過剰でも過少でもなく伝えてくれる柄本佑。いよいよ「出ていれば安心」という圧倒的な信頼が生まれている(私の中に)。尾野真千子も言わずもがな。そうだ冒頭、映画館での二人の出会いのシーン、女学生時代の尾野真千子のあまりの可憐さについびっくりしてしまった。いつだって可愛らしいとは思ってはいたけど、こんなにかわいらしい人だとは……。

あと個人的に感慨深かったのが浅香航大。『宮本から君へ』でも大活躍だったけど、あの作品での毒だらけ若リーマンから一転、心優しい弟子役、物凄く良かったなあ。ジャニーズJr.時代にめちゃめちゃ目にしていただけに、事務所脱退後が心配だったんだけど、ここにきて大変に良い俳優になっている。もっと観たい!

安先生の通な趣味でもあり、作品の空気に色を加えるジャズも良かった。ところどころ流れ出すピアノジャズが心に気持ち良い。作品全体の音楽も控えめでありながらちゃんと空気感を作っていて、質の良さを底上げしている。音楽は世武裕子、あの「セビィィィィ!!!(サニィィィの次の)」ですよね(すいません、一部の人に伝われ)。最近すごくよく名前を見かけるなあ。

作品としては、同じくNHKの阪神大震災を語った『その街のこども』を思い出した。淡々としたトーンの中で、少しずつ滲むように描かれる苦しさと優しさ。色んな作品があるけれど、みんなの「苦しい記憶」を扱うとなったときのNHKの丁寧さは信用できる。

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