キーになる葛藤はシリアスに描きつつ、軽妙さを失わないバランスが絶妙!『知らなくていいコト』

面白いドラマでした。同じく大石静脚本の『大恋愛』レビューでも書いたけれど、シンプルに「面白い!」と思わせてくれるドラマは貴重。

画像1

「記者モノ」ってある程度確立されたドラマジャンルだと思うのですが、最近少なかったような。刑事モノ、医療モノが圧倒的多数を占める(今クールは特に)中で、記者モノは久しぶりに見た気がする。

個々の事件エピソードに関してはちょっと生煮えな回もあったように思う。特に中盤のエリート息子殺人に関しては明確にモデルケースがあるために、世の中の評判が一転して殺人を「善」とする展開には疑問符ではあった。

とはいえ物語全体を通じた吉高由里子自身の謎を解き明かす過程が文句なしに面白い。逆に言うと前半の一話完結展開必要だったかな?とも思う。柄本佑との恋愛、野中春樹の闇落ち、理想の上司!佐々木蔵之介、の話にはみんな興奮して語っていたけれど、一話完結エピソードについてはあんまり印象に残ってないんじゃないかな。

昨今話題になりすぎてどうかな、と思われている『文春砲』的な存在を「人間に対する飽くなき探究心」と徹底して筋を通す姿勢、個人的には凄くいいと思った。週刊誌という存在意義自体を理解できない、という意見もネット上で目にしたが、たとえ下世話であっても「人間を知ろう、描こう」とするのは根源的・原始的な欲求に近いものだと思う(たとえそれが美しくなくとも)。

ドラマとしては、ともすればシリアスになりすぎるような題材をそれぞれのキャラクターでポップに描いていることに巧さを感じた。「自分の父が殺人犯だったら」「それに纏わる差別的な視線」はかなり重いテーマだと思うが、吉高由里子のきぱっとしたキャラクターに乗せれば、元カレ重岡大毅に「ねえー考え直さない?♪」と笑って見せるつよつよな展開になる。

恋人の出自を知って「DNAがー」とほざいてしまう自分、無能すぎて愛されない自分に嫌気が指して闇落ちしていく男だって、場合によっては本当にシリアスな鬱病と向き合わなくてはならない。しかし、重岡大毅のハムスター感に乗せると絶妙に狂気と笑いの入り混じったコメディ展開として進められる。重岡大毅面白かったなあ。

キーになる葛藤はシリアスに描きつつ、のしかかったものを軽く吹き飛ばす瞬間もある。そのバランスが絶妙なドラマだった。

過去作品のDVD-Boxを買うための資金にいたします。レビューにしてお返しいたします!