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みんな忘れてしまったとき残るものはなんだろう
おばあちゃんは認知症で数年前から施設に入っている。
そんなおばあちゃんが久々に家に帰ってくるという。
新型コロナウイルスの影響で面会の制限があったり
面会すらもできなかったりするなかで
5類に移って施設からおでかけの許可が出たということだった。
おばあちゃんが来るのは午後。
午前の法務を終えた父が帰宅し
わたしのお昼ご飯をつくった後
バタバタと草刈りに行ってしまった。
晴れてるときは外仕事に行く父。
夕方からまた法務なのにタフだなー
とお昼ご飯をのんびり食べていた。
おばあちゃんは懐かしさなのか寂しさなのか
泣きながら送迎の車からでてきた。
赤ちゃんかわいいねと言いながら
わたしのことは誰か分かってなさそうだった。
もう「えっちゃん」と呼んでもらえないのかもしれない。
![](https://assets.st-note.com/img/1685436325029-2pgtn766MC.jpg)
おばあちゃんは花がとても好きな人で
元気だったころは畑にいっぱいの花を育てていた。
身体が弱ってからは花の心配をし
いろんなことが分からなくなってからは
みんな花が綺麗だって言ってくれるんだと
呪文のように繰り返し話していた。
帰りがけに庭のカラーの花を見に行った。
着いた時から「綺麗だ」と言っていたらしい。
送迎の車に乗って少しごねはじめたので
帰りたくないのかと思ったら
「花がほしい。本堂にお供えしたい。」と。
本堂にはお供えしたよと2.3本を切って渡した。
カラーの周りは綺麗に草が刈られていた。
いろんなことを忘れてしまっても
お花と仏さまはおばあちゃんの中にあって
忘れたくないとか大事にしたいとか
そんな自分の感情じゃないところにあるのかもしれないと思った。
仏さまへのお花が心配なおばあちゃん
花のまわりの草刈りをする父
前日からぜんざいを仕込んでいた母
いろんな心残りや後悔があるんだと思う。
だけどみんな今の自分にできる精一杯と折り合いをつけながら
思い通りにやれない自分と向き合って
なんとかやりすごして生きてるんだと思う。
モノも感情も、なにももって還れないんだから
残った生き様が在りたい姿であるように
日々を必死に生きる努力をしたい。
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