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静かな少学校 #305

学校のチャイムが鳴り終わると同時に、一声に弾け飛ぶ同級生の声を書き消すように、静かな表情だけを浮かべて、教室から立ち去る。

すぐ隣では、休み時間にするドッジボールを抱えて、周りの友だち話しかける声が聞こえる。けれど、ぼくに声がかかることはない。

廊下を出て、校庭に出る方向に勢いよく走るみんなを横目に、反対側に廊下を進む。そして、次第に書き消そうとしなくても声が途切れたそのさきに、いつも、静かにしなければならない図書室があった。

「静かに過ごすように。」

と、壁に書かれた図書室のルールは、一人で過ごす自分を守ってくれるために存在するルール。学校のなかで、静かに過ごすことを肯定してくれるのは、図書室ぐらいしかない。

同じように静かにすることが求められている授業中は、ほんとうは、退屈な授業を振り払って、騒ぎを起こせる誰かが、ヒーローになれる時間だったりする。

静かななかで、それほど好きではない本を読んでいるふりをする。図書室から見える近くの廊下の先から、同級生の遠い声だけが耳に残る。その度に、集中しようとした本から目が引き剥がされ、声を聞く耳に意識が集中する。

読んでくれたかた、ありがとうございます。昔々を思い出すと、いま毎日仕事でも日常でも、下手くそなままこれほど話す機会が増えていることは、なんだかとても、不思議だったりもする。

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