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肥えちまった舌先に。

夕方
いそいそとスーパーで買い物を済ませ
駐車場へと向かっているとき

ホワイトデー用特設売り場を目撃した。

そこには
クッキーが山のように陳列されていた。

「ああ、あのクッキー。昔好きだったな。」

25年前、地方のデパートで
売っていたあのクッキー。

当時は物珍しくて
珍重の品として
ありがたく食べていたな。

今、あのクッキーを
当時のような鮮烈な思いでもって
食べられるか?という考えが
頭をよぎった。

否。

時を経て、
私の舌は大いに肥えてしまい
クッキーだけでも
もっとリッチで旨いものを
たくさん知ってしまった。

そこでふと思う。

私は豊かになったのか
それとも純粋さのような、何かを
失ってしまったのか、と。

時を経て

昔はありがたがって食べていたものに
興醒めすることもあるし

自分の体の変化とともに
美味しく感じられるようになったり
逆に
ちょっとついていけなくなってみたり
することがある。

よく言われることだけど
中年以降、魚のおいしさに気づき始めたり

カップ焼きそばとかチーズハットグとかの
ヤングな食べ物がしんどくなったり
するのである。

これは舌が肥えたとかいうより
加齢による好みの変化かもしれないが。



買ってみようかな、あのクッキー。
当時の物珍しさという魔法は解けても
思い出という魔法が
かかっているかもしれない。




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