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田んぼの道をゆく きつね色

読みもの「田んぼの道をゆく きつね色」


我が家の周りは
田んぼだらけである。

夕方、車を走らせていると

お散歩に繰り出している
犬たちを見かける。

不思議なことに
茶色い柴犬ばかり。

もちろん
マンションの脇で
小型犬なども
見かけはするのだが

1キロ無い道のりで
柴犬に4回、

しかも
こんがりきつね色の子ばかりと
すれ違ったりするのは
なかなかに興味深い。

「……多い。多いぞ。柴犬が!」

こうなってくると
夕方
車を走らせるたびに

今日は何回
柴犬に遭遇するかな?
と期待してしまうことになり

私はますます
「ここはもしかして柴々ワールドなのかもしれない」
という
柴バイアスを強めるのだ。

だから
この界隈は

日々益々、
柴犬がめちゃくちゃ多いのである。

田植えが終わって
しばらく経った田んぼ道。

辺りは見渡す限りまぶしい黄緑色で

十時に切った
真っ直ぐなあぜ道の
奥の方から
右から
左から

きつね色の
楕円形のもふもふが近づいてくる。

人の心をほぐしてしまう
きつね色に
私はつい
こんがり揚がった
コロッケなどを連想してしまう。

ツヤツヤの毛並みで
威勢が良い
若い柴犬も居れば

散歩してるおじいちゃんと
どっちがゆっくりだろう?
という感じの

艶なしでボフッとした毛並みの
老犬もいる。

どっちも
愛おしいきつね色だ。

犬なのにきつね色だし。
コロッケじゃないし、柴犬だし。









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