田んぼの道をゆく きつね色
読みもの「田んぼの道をゆく きつね色」
我が家の周りは
田んぼだらけである。
夕方、車を走らせていると
お散歩に繰り出している
犬たちを見かける。
不思議なことに
茶色い柴犬ばかり。
もちろん
マンションの脇で
小型犬なども
見かけはするのだが
1キロ無い道のりで
柴犬に4回、
しかも
こんがりきつね色の子ばかりと
すれ違ったりするのは
なかなかに興味深い。
「……多い。多いぞ。柴犬が!」
*
こうなってくると
夕方
車を走らせるたびに
今日は何回
柴犬に遭遇するかな?
と期待してしまうことになり
私はますます
「ここはもしかして柴々ワールドなのかもしれない」
という
柴バイアスを強めるのだ。
だから
この界隈は
日々益々、
柴犬がめちゃくちゃ多いのである。
*
田植えが終わって
しばらく経った田んぼ道。
辺りは見渡す限りまぶしい黄緑色で
十時に切った
真っ直ぐなあぜ道の
奥の方から
右から
左から
きつね色の
楕円形のもふもふが近づいてくる。
人の心をほぐしてしまう
きつね色に
私はつい
こんがり揚がった
コロッケなどを連想してしまう。
*
ツヤツヤの毛並みで
威勢が良い
若い柴犬も居れば
散歩してるおじいちゃんと
どっちがゆっくりだろう?
という感じの
艶なしでボフッとした毛並みの
老犬もいる。
どっちも
愛おしいきつね色だ。
*
犬なのにきつね色だし。
コロッケじゃないし、柴犬だし。