カトリーヌ・ドヌーヴの居る喫茶店
読みもの「カトリーヌ・ドヌーヴの居る喫茶店」
愛知県には
今や全国区に知られるようになった
「モーニング」文化がある。
コーヒーを一杯頼むと
そのお値段で
トーストと卵、サラダなんかが
おまけでついてくるサービスである。
とはいえ、
平日の朝から
全県民がモーニングを
キメている訳ではなく
ご高齢の方が多い印象だ。
なぜなら
喫茶店でゆっくりと朝食を摂り、
居合わせた友達とお喋りし、
新聞を読んだりするまでが
モーニングなので
モーニング一単位を走り抜けるには
結構な時間がかかるからである。
*
コメダ珈琲に代表されるような
大きなチェーン店も
いくつもある。
一方で
地元の年配の方、
しかも近所の人だけが通うような
コアな「地元感」が漂う店もある。
*
そんな
地元感強め喫茶店の
レンガを組んで作ってある花壇で
毎年咲く薔薇がある。
ほんの数個咲くだけの
大きさとしては
こじんまりとしたバラの木だが
毎年目が合い、じっと見つめてしまう。
なんというか、
レトロで正統派で美人なバラなのだ。
今っぽい、
もふもふした可愛いバラではなく
花びらがツンとしていて
外側のきわだけが
小さくくるんとカールする。
峰不二子が持ってそうな
「美しくも棘もありますよ」って感じの
形をしている。
色の方はというと
ピンクや白、真っ赤ではなくて
個性的な
淡いオレンジ色をしている。
パキッとした色ではない。
朱鷺(トキ)の色のような、
ぼんやり柔らかい色。
*
このすてきなバラが気になって
調べてみると、
どうも
「カトリーヌ・ドヌーヴ」という品種らしい。
フランスの
レジェンド的女優さんの
名前を冠したバラなのだ。
フランス映画に詳しくない私なので
カトリーヌ・ドヌーヴ出演の
映画を調べてみた。
「シェルブールの雨傘」
可愛いファッション満載で
どんなポップなお話なのかと
わくわくしたが
思いの外
苦味のあるお話だったので
恐れ入った。
おお、ビター。
フランスの洗礼。
*
その喫茶店は
大きなガラス窓があり
中の様子が見える。
よれTのおっちゃんが
中日スポーツを広げ
タバコを吸っている。
えらいとこにいるな、
カトリーヌ…
カトリーヌは
そんな周りのことなど
微塵も気に留めず
今年も変わらず
高貴に咲き誇っている。
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