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カトリーヌ・ドヌーヴの居る喫茶店

読みもの「カトリーヌ・ドヌーヴの居る喫茶店」


愛知県には
今や全国区に知られるようになった
「モーニング」文化がある。

コーヒーを一杯頼むと
そのお値段で
トーストと卵、サラダなんかが
おまけでついてくるサービスである。

とはいえ、
平日の朝から
全県民がモーニングを
キメている訳ではなく
ご高齢の方が多い印象だ。

なぜなら
喫茶店でゆっくりと朝食を摂り、
居合わせた友達とお喋りし、
新聞を読んだりするまでが
モーニングなので

モーニング一単位を走り抜けるには
結構な時間がかかるからである。

コメダ珈琲に代表されるような
大きなチェーン店も
いくつもある。

一方で
地元の年配の方、
しかも近所の人だけが通うような
コアな「地元感」が漂う店もある。

そんな
地元感強め喫茶店の
レンガを組んで作ってある花壇で
毎年咲く薔薇がある。

ほんの数個咲くだけの
大きさとしては
こじんまりとしたバラの木だが
毎年目が合い、じっと見つめてしまう。

なんというか、
レトロで正統派で美人なバラなのだ。

今っぽい、
もふもふした可愛いバラではなく

花びらがツンとしていて
外側のきわだけが
小さくくるんとカールする。

峰不二子が持ってそうな
「美しくも棘もありますよ」って感じの
形をしている。

色の方はというと

ピンクや白、真っ赤ではなくて
個性的な
淡いオレンジ色をしている。

パキッとした色ではない。

朱鷺(トキ)の色のような、
ぼんやり柔らかい色。

このすてきなバラが気になって
調べてみると、

どうも
「カトリーヌ・ドヌーヴ」という品種らしい。

フランスの
レジェンド的女優さんの
名前を冠したバラなのだ。

フランス映画に詳しくない私なので

カトリーヌ・ドヌーヴ出演の
映画を調べてみた。

「シェルブールの雨傘」
可愛いファッション満載で
どんなポップなお話なのかと
わくわくしたが

思いの外
苦味のあるお話だったので
恐れ入った。

おお、ビター。
フランスの洗礼。

その喫茶店は
大きなガラス窓があり
中の様子が見える。

よれTのおっちゃんが
中日スポーツを広げ
タバコを吸っている。

えらいとこにいるな、
カトリーヌ…

カトリーヌは
そんな周りのことなど
微塵も気に留めず

今年も変わらず
高貴に咲き誇っている。







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