絶対漢語を使ってはいけない国粋主義組織２４字

本文

「中韓は今日から我ら真剣会の敵になった！　よってすべての中韓製品の購入を禁じ、中韓製のものを使用するものは厳罰に処す！」

　右翼組織『新剣会』会長宣言に組員は驚愕した。会長の一族からして特定アジア地域にルーツを持つかの組織にとってこれは一大事となる。なに本国と揉めているのですか。暴力と極大なメガホンでシャウトしていた組織員たちも生の声でシャウトしたくなる案件である。

「えっと……つまり中韓製品の購入や使用はこれからダメってことですか地区長」

「そういうことだ。若宮君。携帯もSamson禁止」
「はい、地区長。今すぐHuauweiからXperiaにします。では中国の言葉をしゃべるのもダメっすか」

　地区長はしばし考えて呟く。

「多分。そうじゃないかな」

　地区長は過激派が多い真剣会の中ではとても柔軟で人当たりが良いことから多くの若者に慕われている。次代の会長候補として期待を集めており、右翼と思えぬ人当たりの良い風貌も相まって酒場のお姉ちゃんたちにも人気だ。
　事件は若宮君の一言から始まった。

「当然、漢語もダメですよね」

　組織は基本中卒小卒ばかりである。
　若宮君みたいに大学を出ている子ばかりではない。

「？？？？？？？？？？？」

　全員漢語とは何ざるやをを知らない。もちろん地区長たる香川もその例に漏れない。まあ彼は一応大学には行っていたのだが当時ヤリサー経営していたので代勉ばかりで勉強なんてしていない。あの頃は若かった。

「漢語？」
「ええと、中国語を語源としているとか……簡単に説明すれば中国語、漢字の音読みは全部だめです」

「おんよみ？！」

　幼稚園を出たと自称するエリート田母神が問う。つまり幼稚園出身ではなく幼稚園から脱走して以来学校に等通ったことがないと豪語する男の中の漢だ。

「田母神さん。『漢』って書いたら『かん』と読むか『をとこ』と読むかです。例えば田母神さんは『漢』です。『かん』じゃかっこ付かないでしょ」
「ああ！　めっちゃわかる！」

　田母神。それはただの当て字だ！　誰も指摘しない。

「では、本日より真剣会小田原支部では漢語の使用を禁止する！」

　香川の言葉に頷く組員たち。ここから悲劇が始まった。

「はい！　ナレーターどのアウトぉ～～！」

　バットをとるわこうどたちただナレーターをばたたく。そはまさにからくにのことはにしてあろうまじき。

「え、バットはOK？」
「うちは田中剃邪悪で『でんちゅうソルジャー』くんがいるじゃないですか。英語由来と本人の意思と無関係な名前や地名、句読点等は今更仕方ないでしょう田母神どの！　あとオノマトペはやまと言葉です！」

　わのくにのかたのな、はなはだしくそとのことのはみだれいりそうろうていとかたし。

「若宮アウト～～！」

　普段優しい香川も掟には厳しい。
時として愛する構成員をも厳罰に処す。

「処すも漢字でアウト～～！」

　まさにこのよははかなきなり。

　さてもさてもわこうどたち、みなそろえして、なみだながしてともがらをば、ただうちすえし。

　ときちこうしてFAXがかのかたがつとめどころにちかよりて。わかものこうべつどわせたまう。

『告！　日本国現政権に対し我ら真剣会は激しく糾弾をする！　先の艦政権発表するところ、『特定アジア地域との連帯』とは名目でありかの貿易協定は協定の名を借りた搾取行為である。これは我が日本国の品位を貶め、ゆくゆくは我が国の婦女子の貞操をかの国に捧げ奴隷化するための先兵的政策である。（※中略）……よって我が真剣会は激しく艦政権に抗議するとともに革命的精神をもって暴力も辞さぬ。構成員は誇りある真剣会のメンバーであることを今一度胸に、一層己を律し、己を鍛え上げ、奮闘努力を求める！』

「……いかばかりかと」

　ことのはをかんばみて香川とひし。

「わのくにのことのはにせん。そはかたし」

　田母神いとうなづきて、おぼしめし。

『わがことのはをよくせむ、ひのもとのまつりごと、われみつるぎつどい、よくよくてといつめしせんは、うえさま艦のおみよのこと』

　香川、こうべをかかえてGoogleにたより。
　若宮、こころいためてはばかりなみだそうらえし。

『からくにとのつながりいときびしくそうらえば、ぬひのそしりをうけることはなばなしく、われらにょごらをはかなくせんとたくらみたる。われらみつるぎのつどえしは、ときのまつりごとにくちおしゅうせん。はからかにまっことわれらいとつよくあるべし』

　さてもさてもこれまことすばらしきエリート田母神。

「しからじ田母神どのアウト～～！！」
「くちおしゅうせん田母神アウト～～！」

　奴婢とはからくにのまつりごとがさきにして、律令制とやまとひとはもうすなり！

　さんごのつきみつほどすぎいりてのちし。
　香川どのはじめ、みつるぎつどい小田原ははかなくも『真剣会』となみだながらわかれしけり。

　このかたりのやまとことばははかばかしくもつたなく、いとこころぐるしゅうけれ。

元ネタ

　Twitterでバズったweb小説『絶対に仏教由来語を使ってはいけない異世界』。国粋主義者を自称する方ってやたら難しい漢語が好きなのでやまとことばを重視する組織があっても良いかなと作ってみました。

　そはみやびなことはなばなしけり（※超かっこよくなった）。いとすなわちまなびのはなきかりけりにてそうらえし（※教養の無駄使い）。
　※本文同様、やまとことばは適当に書いています。こういうサイトもありますので参考にしてくださいませ。（※デデ～ン）