見出し画像

「失敗しない初めて眼鏡の度数あわせ」

眼鏡屋に入って、覚えることはたくさんありますが、その中でも特に大切な業務に「眼鏡測定」があります。

眼鏡の測定方法はたくさんありますけど、最終的に仮枠で見てもらう作業は同じですので、

測定において大切なことを知っておくと、測定の精度とスピードが段違いになってきます。

眼鏡測定において大切なことはこちらの

・測定数値はあくまで情報

・明視域を知る

・生活環境をヒアリングして度数を決める

・具体的な度数合わせ

まずはじめに、「測定数値はあくまで情報」

ということですが、

初めて測定する時は、それぞれの現場で測定するために機械操作を教わると思いますが、

大切なのは操作方法ではないことを知ってください。

測定をこれから始める方は、

「え?機械操作が大切じゃないの?」と思われると思いますが、そのとおりです。

そもそも機械で何を測定しているのか?ですが、その方の潜在的な目の状態、

いわゆる「近視」とか「遠視」とかがあるのか?を調べて、どれだけ「見る力」があるかを測定しています。

つまり、機械で数値化できたとて、その先にある「じゃあどれだけ数値を入れたらいいのか?」とは別問題だからです。

機械の操作はそれぞれあると思いますので、それはその現場でのやり方を習得し、その先である「処方の仕方」を学んでいきましょう。

次に、「明視域を知る」ですが、

眼鏡の測定で大切なことは「明視域」を理解することです。

「明視域」といえば、むずかしく考えがちですが、「人が見える遠くから近くの範囲」という認識でOKです。

眼鏡の度数はこの「遠くが見える場所」「遠点」から物を近づけてギリギリまで見える場所」「近点」を決めています。

こちらの図を見ていただくとわかりやすいと思いますが、

「正視」に数値を近づけるほど「遠方」が見えやすくなるイメージです。

極端な例ですが、

近視で潜在数値が-3.00ある方に-3.00の度数を入れれば「正視」になるので

「遠方が見えやすくなる」みたいなことです。

しかし、現代では遠くを見ることよりもスマホなどの普及により「近く」をみることの方が多くなっています。

遠くにピントを合わせた眼鏡で近くを見るには「自分の目の力」「調節力」を必要とします。

僕は「調節力」をマジックパワー(MP)と呼んでいますが、このMPを消費するほど目は疲れます。

つまり、遠方に合わせすぎた眼鏡で近くを見る作業は目に負担がかかり、疲れやすい眼鏡になってしまいます。

一般的に知られている知識で、良い眼鏡とは「視力が1.2とか見える眼鏡」と勘違いされていますが、

それはあくまで遠方に特化しているだけの話です。

眼鏡屋は「近く」もどれだけ見るのか?を考えないといけないんですよね。

そこで次の項目

「生活環境をヒアリングして度数を決める」

ですが、

例えば初めて眼鏡を作りに来る方はこんなケースが多いです。

今まで眼鏡をかけてこなくても生活ができていた。

しかし、なにかしらの不便が発生したので眼鏡を作りにきた。

こんな感じです。

僕たち眼鏡屋の仕事はこのお客さんの「負の要素」を解決することです。

しかし、残念ながら眼鏡とは全てを完璧に見ることはできないものなので

それを伝えること、体験してもらうこと、その結果から今回の主訴である悩みに対してどう提案していくのか?が大切になってきます。

ヒアリングの方法は次の通り

・何が見えなくて困っているのか?

・それを解決する提案

・度数や設計によるメリットとデメリットの説明

・体験した上でどれが生活に合っているかを確認し決定

このようなヒアリングをすることで、お客さんは「この眼鏡は〇〇する時に使うんだな」という理解が生まれ、

正しく使用してくれるようになります。

では最後に、「具体的な度数合わせ」です。

初めて測定する方が出会うであろうスライム的な数値で解説していきます。

20歳 

レフ値 右S-0.75 左S-1.00

の場合

まずはじめに「どんな悩みで眼鏡を作ろうと思ったのか?」をヒアリングします。

この方の悩みは「夜間の運転で見えにくいこと」が悩みということにします。

まず裸眼の片眼視力測定、両眼視力測定、利き目のチェックをします。

次にフォロプターなどで完全矯正値を出して「視力がどれだけ上がるか(見えるようにできるか)」を確認します。

ここからが大切な仮枠装用です。

完全矯正値での左右バランスもありますが、僕は「今まで過ごしてきたバランス」を優先します。

「今まで過ごしてきたバランス」とは、長年慣れた裸眼でのバランスのことです。

はじめに裸眼視力のチェックと利き目チェックをするのはこの為ですが、

長年慣れてきたバランス(どちらの目を優先的に使ってきたか?)は眼鏡をかけた場合にとても重要になってきます。

これを飛ばすと必ず違和感を訴えられるので、100%確実にやりましょう。

これは「絶対に」です。

ちょっと話はそれますが、

長年測定していても測定が遅く、下手な人はこの「絶対に飛ばしてはいけないこと」を飛ばすからです。

話を戻して、

この方の優先してきた目が右目だとすれば、右目を少し優先したバランスにするか、

左右同じくらいのバランスにするかを体験してもらいます。

多くの場合は「やや右目を優先したバランス」に落ち着くはずです。

単純にあなたが使う「利き手」をイメージするとわかりやすいかと思いますが、

「今まで使い慣れてきた手と反対の手を今日からメインに使ってください」と言われたら、

よほどのことがない限り違和感を訴えますよね?

それくらい利き目や慣れたバランスは大切なんです。

仮枠には完全矯正値の7割くらいを目安に入れてみましょう。

今回は度数がゆるいのでわかりにくいですが、

右S-0.50 左S-0.50あたりから入れてみて、左右バランスを決めます。

この段階で左右同じくらいか右目やや優先になっているか?を確認します。

より自然だと思われるバランスが決まったら矯正視力を確認して、周りの景色を見てもらいましょう。

指標で見える視力と体感視力は変わるので、必ず周りの景色を見てもらいましょう。

クロージング として、

裸眼視力と矯正視力の違いを体感してもらい、眼鏡をかけた違和感も少なそうであれば、

裸眼視力と矯正視力を伝えて測定は終了です。

他にもいくつか例題を作っていますので、
気になる方はnote内を確認してみてくださいね。

初めての眼鏡で大切なことは、眼鏡をかけてこなかった「今」と、どれだけ変化するか?を

体験してもらうことです。

このギャップが大きい場合、若くて変化に対応する力があれば大丈夫ですが、

40代を超えると急速に変化に対応できず違和感を訴えられます。

この変化に対しての処方はまた別記事で解説していますので
参考にしてみてください。

ご覧いただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?