ミヒャエル・エンデの本

私は全く読み書きが出来ない子供だった。

母はそんな私を『このまま漢字が読めない、書けない子に育ったらどうしよう』とかなり心配したらしい。

頻繁にあった漢字テストはいつも赤点。多分クラスで一番漢字の宿題をこなしていた位、漢字が苦手だった。読めない、書けない、覚えられない。何度も何度も練習しても出来なかった。

だから本は大嫌いだった。なのに読書感想文の宿題が多かった。朝読み、夕読みという読書タイムがあり、朝読みは学校で、夕読みは宿題のひとつとして家族の印が必要だった。本は何でも良かった。

ある日、図書室の整理に駆り出された時の事だった。それまで図書室に新刊が並ぶなんて知りもしなかった私は、先生がクラスメイトにミヒャエル・エンデの作品の紹介をしたのが私とミヒャエル・エンデの出会いだった。

一番最初に借りた本はジムボタンシリーズだった。これまで本にのめり込むという事のなかった私は、ジムボタンの冒険の旅に惹き込まれた。字の読めない私が嫌がらずその物語の主人公の気持ちとなって一緒に冒険へ出た。

ミヒャエル・エンデの作品は『モモ』や『ネバーエンディングストーリー』が映画化された。モモは当時映画を観た同級生の感想文に感動して本を借りた。
ネバーエンディングストーリー(はてしない物語)は人生初めて誕生日プレゼントに欲しいと言いプレゼントしてもらった本となった。
次第に本嫌いの私は姿を消した。漢字も同級生たちには劣っていたが、徐々に読み書きができるようになった。
母が心配した『読み書きが出来ない子になったらどうしよう』という心配はいつの間にか覆され、人並みの読み書きができるようになった。
私にとってミヒャエル・エンデは遠い国の音読の先生でもあり、ファンタジーの世界に誘ってくれた恩師なのかもしれない。

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