黄金の葉っぱ

横浜の桜木町駅方面へと両親と歩いていたイチョウの並木道。

キラキラキラキラ幼い頃の私の目にはイチョウの葉が輝いて見えた。キラキラキラキラ。

手が届きそうで届かないイチョウの葉っぱにもどかしい気持ちを抱きながら一生懸命歩いていた。

それはもう夢心地の並木道で、西に傾き始めたイチョウは陽に照らされて輝きを増していた。

あそこのイチョウは届くかなと試してみるけど届かない。

お父さんでも届かない事を知ると次のイチョウはどうだろう、また次のイチョウの木はどうだろうと試してみるけど届かない。

まるでイチョウの木は黄金色に輝く葉を取られないようにしているみたいだった。

落ちていてキレイな葉っぱはまだ無い。キラキラ光って見える葉っぱはどれもイチョウの木から離れようとせず、群れとなって輝いていた。

もう私の目にはイチョウの葉しか映っていなかった。

あっ!あのイチョウなら届くはず。木の低い位置に黄金色の葉を見つけた時だった。

イチョウの葉を掴んだ気持ちになっていた瞬間に、歩道橋の階段を後3段残して落ちて転んだ。

黄金色の葉を掴んだ筈の手のひらは地面をすって痛々しく傷だらけになった。黄金色の葉を掴んでスキップしたかった足は膝から血をにじませた。

「うわーーーーーん!」

転んだ事もショックだったが、何よりも掴んだと思ったイチョウの葉っぱがまたも掴みそこなったことのショックも大きかった。

多分その後欲しかった葉を取ってもらい、また桜木町駅に向かって歩き始めた筈なのだが、その後の記憶が全くない。

ただしあれ以来、階段の怖さも身に染み、イチョウの木がどんなにキレイでも夢中になって夢心地になることはもうなかった。

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