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稚児般若伝説 2021.12.27

突然だが般若が生きていた時代をご存知だろうか?

最古の記録は室町時代中期から、般若についての記述が見つかっている。そして明治維新と同時期に般若は日本の歴史から姿を消していった。

人間と般若は停戦状態のような敵対関係にあり、お互いに干渉しない事が暗黙の了解となっていたという。

今回はそんな人間と般若の昔話。


般若に拾われ般若に育てられた捨て子の少年がいた。少年は自分を般若だと思い、また周りの般若も同じく少年を般若として扱った。

少年は般若たちに不信感を抱くことはなかった。自分を育てた存在であり、家族である般若に対する感情は、人間の稚児が親を想う事と何一つ変わらない。

しかし悲劇が起こる。少年はよその人間に見つかったのだ。人間は般若が少年を捕虜にしていると勘違いした。少年を連れ去ろうとする人間を般若達は黙ってみているわけがない。

人間と般若との間で戦が起きた。三日三晩血で血を洗わんとする戦の果てに、ついに人間が勝利した。般若は人の暮らす地から離れ、直に歴史から姿を消していった。

少年は江戸に連れて行かれたが、般若に育てられた為、人として生活ができない。少年は見世物にされた。

しかし転機が訪れる。生類憐れみの令により、犬公方(いぬくぼう)と呼ばれた五代将軍、徳川綱吉の耳に少年の噂が入った。直ちに将軍の前へ連れられた少年は綱吉に気に入られ、カラパニウムという名前を授かったのである。

カラパニウムは初め、飼い犬のように扱われた。しかし時間が経つとともに綱吉と打ち解け、実の息子と遜色ないような関係となっていった。

将軍の元で人として暮らせるよう教育を受けたカラパニウムだったが、育て親である般若への想いを忘れることはなく、今尚般若の面を被り続けているという。

郷離れ
心冴ゆりて
稚児般若
出典:万載狂歌集

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