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終わらない物語の続きへ――LIVE ISLANDセトリ論

今回はNANA MIZUKI LIVE ISLAND 2018のセトリ論です。

■NANA MIZUKI LIVE ISLAND 2018とは

ご存知の通り昨年夏に行われた水樹奈々の全国ツアー。「本当の自分を探す旅」というテーマで、ジェットスキーやハンググライダーに乗ったり鯨が登場したりと、なんとも奈々さんらしい自由で開放的なライブでした。

鯨については最近公式がYouTube動画をアップしたので、ぜひ疲れたときに見てください。元気が出ます。

■なんでいまさらISLAND?

確かに良いツアーだったけど、EXPRESS千秋楽直前のいま、なんでISLAND?
そんな声が聞こえてきそうです。実は当初、EXPRESSのセトリ論を書こうと思ったんですね。で、前段でISLANDセトリに触れたらそれだけで結構な長文になってしまったので、あきらめて一つの記事として上げることにしました。

触れようと思ったきっかけは、ISLANDの打ち上げ飲み。フォロワさんと語っていたら、「Happy Dive」には奈々さんのお父様への想いが込められている――そんな解釈を耳にしたんです。まったく思いもしなかった解釈で、目から鱗でした。たしかに歌詞を読むとそうとも取れる箇所がある、なるほど。そう感嘆すると同時に、「オタクもっと自意識過剰になってこ!」とも思いました。

というのもISLANDのセトリって、ものすごく「”ボク”と”キミ”の物語」――「”水樹奈々”と”ファン”の物語」だと聞こえたんです。これまで以上に観客の心に寄り添うような、奈々さんの伝えたいことがダイレクトに心に響いてくるような感覚がありました。だから上の解釈を聞いたときに思ったのです。「信仰心の高いオタクほど”自分に届けられている”感覚が希薄なのかもしれない」と。でもわたしは、わたしに届けられたと思ったし、だからこそISLANDは本当に思い入れのあるツアーとなりました。そんなわけで以下はオタクの自意識過剰MAXのセトリ解釈です。苦手な方はご遠慮ください。

■前提① 取り上げる楽曲について

今回は「Happy Dive」「FEARLESS HERO」の2曲に絞って語ります。ISLANDでは、それぞれ4曲目と21曲目に歌われました。

何故この2曲を取り上げるかと言うと、4曲目は開幕MC明けということで、ライブの方向性を決定する大事な位置にあるから。そして21曲目は言わずもがな、本編ラスト曲。

演繹型の評論文では、主張-根拠-主張と展開されるのが定石です。本編セトリも同型だと想定して、一番主張の強そうなところを抜き出しみた、というわけです。

曲タイトルがそれぞれ長いので、以降は
「Happy Dive」→HD
「FEARLESS HERO」→FH
と省略させていただきます。

■前提② 2曲の共通点

それぞれの曲を見ていく前に、前提となる共通点を押さえておきます。

まず1つ目。
HDでは「あたし」と「君」
FHでは「僕」と「君」という存在がそれぞれ確認できること。

そして2つ目は始まり方です。

<HD>
手帳を開くたび もうこんなに経つんだって
セピアのあの頃が ちょっと恥ずかしくなるものです
<FH>
古いノートに書き綴った
あの日々の物語に The Endはまだ…

HDは手帳を開いて「セピアのあの頃」を眺めている――つまり、古い手帳をめくっている。FHは文字通り「古いノートに書き綴ったあの日々」ということで、それぞれ「昔の記録」を辿っていることが分かります。

■ハジける君とのJewelry time

では、HDの歌詞を見ていきましょう。

Happy Dive (歌:水樹奈々 作詞:Bee' 作曲:藤田淳平)

手帳を開くたび もうこんなに経つんだって
セピアのあの頃が ちょっと恥ずかしくなるものです

大きなユメとか 捨てずに守ってきたものが
小さく小さく咲きはじめ すごく大切なモノ気付いた
I just keep on getting happy dive!

飛び出したpower! ハジける君とのJewelry time!
あたしを強くする
誰もが驚くほどcoolなカクメイ起こそう freedom!

あの時つらくって チクっとしたキズ口を
そのpureなココロが そっと暖めてくれたのです

あしたも明後日も この空を同じように眺め
「キレイ…」と感じていたいから
なにも変わらない二人でいよう
I'll be there, and find happy fly!

君がいるpower! あたしはムテキになれる
泣き虫にナヨナラ
ダイジョウブ! どんなこともきっとできる気がするよ go way!

飛び出したpower! キラメク君とのJewelry piece!
つながっていたいよ
こぼれた涙の数だけのシアワセを歌おう message!
肩ならべ jumpしよう!
Lalala…

昔の思い出を少し恥ずかしがりながらも、抱き続けてきた「大きなユメ」が少しずつ叶い始めている。それは「君」と一緒に過ごす時間が力をくれ、「あたし」を「ムテキ」にしてくれたから。だから「あたし」は「誰もが驚くほどcoolなカクメイ」が起こせるし、「どんなこともきっとできる」と信じている。
そして、「大きなユメ」が叶った未来でも「なにも変わらない二人で」いることを約束します。ラストが「肩ならべjumpしよう!」ということからも、「君」と対等なまま未来に向かっていく姿が伺えますね。

これ、大成した水樹奈々と推し続けているオタクの物語にしか聞こえないんですが????

デビューしたばっかりの若い自分をちょっと恥ずかし、ちょっと懐かしみながらも、東京ドームや甲子園ライブなどの夢が少しずつ叶っていくことに想いを馳せる。でもそれは、「君」が傍で応援してくれたからだよ。「君」が「あたし」を強くしてくれたんだよ。だからこれからも、一緒に未来へ向かっていこうね――そんなメッセージが伝わってきてもう無理涙出る。

さらに極めつけは

あしたも明後日も この空を同じように眺め
「キレイ…」と感じていたいから

ここです、ここ。どんなに成功しても自分は変わらない、という意志が伝わってきます。
アニソン界の女王とまで呼ばれながら決して驕らず気取らず、あたたかな親近感を抱かせる奈々さんのことが、わたしはもうたまらなく大好きなわけですが、そう思わせてくれる要素がぎゅぎゅっと詰まっていてHD本当に良い曲だなあと聴くたびに思います。

■僕はもっと強くなりたい

さて次はFHのターンです。

FEARLESS HERO (歌:水樹奈々 作詞:藤林聖子 作曲:奈良悠樹)

古いノートに書き綴った
あの日々の物語に The Endはまだ…
時計の針が 進むごとに
想いは確かに 近づいてく

人は願う時 空を見上げる訳はきっと
夢の入り口 繋がってると
信じているから 僕は瞳とじた
かすかな希望を 探すみたいに

FEARLESS 僕はもっと強くなりたい
思い出じゃなく 今の君のために
願う言葉 真っ白な羽根を宿して
君がいる 青の果てまで 舞い上がれ

揺れるアングル 見せる世界
大人は忘れてしまった 輝けるFragile
切り刻まれた 時間の中
走ってるだけじゃ 夢も見ない

高すぎる空に 俯いて諦めるより
届くはずだと 腕をのばすよ
その気持ちがまた 僕を次の場所へ
誘(いざな)ってくれる 風になるんだ

FEARLESS 僕はもっと優しくありたい
君の悲しみなど 吹き飛ばすほど
願う言葉 真っ白な羽根を宿して
君といる 未来の先へ 飛んでゆけ

奪うためにではなく 笑顔でいて欲しい
めぐり合えた 大切な 君を守りたくて
僕が心の 盾になれるなら
何も恐れはしない

FEARLESS 僕はもっと強くなりたい
思い出じゃなく 今の君のために
願う言葉 真っ白な羽根を宿して
終わらない物語の続きへ
君がいる 青の果てまで 舞い上がれ

HDでは「キミ」がいることで「ムテキ」になれた「あたし」が、FHで恐れを持たないヒーローとして「君」の「心の盾」になるのは、なかなか感動的です。実際、日常を生きる我々にとって、「水樹奈々」という存在がどれほど救いになっていることか。

さらに言うと、「思い出じゃなく 今の君のために」なんですよね。
「あたし」を救ってくれた「キミ」ではなく、「今」目の前にいる「君」のためへの願いであり、誓いでもある。「夢の入口」である「空」に「手を伸ば」し続ける限り、「僕」――水樹奈々の物語は終わらない。
「大きなユメとか 捨てずに守ってきたもの」は確かに「小さく咲きはじめ」てきたけれど、「もっと強く」なってもっと先――「君といる 未来の先へ」飛んでいきたい。

「僕」と「君」は「終わらない物語」の只中にいて、その続きを一緒に紡いでいる。そう思わせてくれるFHは、ISLAND本編ラストに本当にふさわしい曲でした。

■「ボク」と「キミ」の物語

最後に。
これまで奈々さんを主観、ファンを客観側において語ってきましたが、この主観と客観は容易に入れ替わる、というのも魅力の1つだと思っています。

すなわち、HDでは「水樹奈々のおかげ強くなったボク」「いつまでも変わらずに水樹奈々を推すボク」という主観が生まれます。
FHでは「めぐり合えた大切な君」がそのまま奈々さんのことだし、「僕はもっと強くなりたい」というのも覚悟を持って応援する決意に聞こえます。さらに「君がいる青の果てまで舞い上がれ」というのは、青いペンライトに包まれたステージまで気持ちを届けたい、という願いのようで。

この互換性こそ、冒頭で述べた「”ボク”と”キミ”の物語」の醍醐味です。一方的に想う関係ではなく、相互に信頼し、気持ちを向け合っている。
だからこそ自分の中でもいろいろな解釈が生まれるし、聴く時によって印象も全然変わってくるんですよね。今回も、ISLANDという枠組みの中での解釈を語りましたが、別のライブではまた違った印象が生まれるはずです。

絶賛開催中のEXPRESSのセトリもこの物語の色が強いので、同じようなテーマにはなりますが、後日そちらの解釈も書ければと思います。

ではまた!

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