見出し画像

「定年退職したら豪華旅行」は間違いだ

そういう夢もあったが、現実の前に絶たれた

仕事以外の時間がほとんど取れなかったサラリーマン時代は、長期休暇なんて夢のまた夢だった。海外旅行でもせいぜい3泊くらいで、たった1泊の弾丸旅行もあった。だから、定年まで会社にいられたら退職金を使ってゆっくり旅をしたい。30〜40代の頃はそう思っていた。
その希望は現実の前に絶たれた。新型コロナのためではない。定年になる1年前に、家族が足を悪くしたのだ。一時は車椅子を使わざるを得なかったほどに。
そのために行動範囲は極端に狭まった。家族で都心まで外食に出かけることさえできなくなった。私一人で出かけるにしても、日帰り旅が精一杯だ。家族の介護が必要なわけではないが、家族をおいて一人旅をするのは、ちょっと気が引けるからだ。
さぞかし窮屈な思いをしているように見えるかもしれない。でも、意外とそうでもない。おもな理由は2つある。

定年退職後はお金を細く長く使う幸せもある

まず、私は学生時代から、けっこう海外旅行をしてきた。大学3年生の春休みに、友人2人とレンタカーで1ヵ月かけてアメリカ大陸横断往復をしたのが、初の海外旅行だった。それ以来、何か国に行っただろうか。ビジネストリップも何度かあった。だから、海外旅行で体験できる楽しみは、たいてい想像がつく。いま心底行きたい国はオーストリアくらいしかない。
もう一つは身も蓋もない話だが、家計を圧迫する要因がないので、心の余裕がある。もし退職一時金を使って世界一周の旅なんてしたら、旅行中は心の余裕を味わえても、その後の家計はどうだろう。フロー収入が激減する定年退職後は、お金を細く長く使ったほうが幸せだと思う。
だから、現役サラリーマンに言いたいのは、旅は定年退職後ではなく、どんなに忙しくても現役中に行けるだけ行くべきだということだ。グルメもできるだけしたほうがいい。それを定年までとっておくなんて、健康(私の場合は家族の健康問題だが、自身の健康が加齢で損なわれることはじゅうぶんにあるだろう)と家計の問題からいって、間違っている。定年退職後の生活は、サラリーマン時代の生活とはまった異なる価値観で動くのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?