MMO らしさの変遷

Bless Unleashedは結局40時間ほどプレイしたところで一区切りという感じになった。
しかし決してつまらない作品ではなかったということを覚えておくためにも一つ書いておこうかと思う。

このゲームは久しぶりにMMOとはどういうジャンルなのか、ということについて思い出させてくれた、あるいは考えさせてくれた気がする。


ゲーム開始後、ひとしきりの操作レクチャーが終わってすぐの段階でフィールドボスと遭遇する。
思えばここにこのゲームがプレイヤーに与えんとした体験の大部分が詰まっていた。

フィールドボスも強さはマチマチで、この最初に出会うやつは流石に弱い部類。
自分にタゲが向いているときだけ注意すれば死ぬことはあまりないだろう。
それでも一人で挑むには敵のHPが多すぎる。
だから自然と人が集まって共闘する形になる。

気軽に知らない人と共闘する。
他人とのコミュニケーションを多くのプレイヤーがこのタイミングで体験することになる。

見事勝利するとなかなかいい装備を落とす。
この段階だとまだ理解していないのだが、その後さまざまなクエストをこなしていく中で、このフィールドボスが落とすドロップは比較的いいものだということに気づいていく。
大抵においてフィールドボスはサブクエストなので無視しても構わないのだが、装備が良くなればその後の進みもスムーズになるので、急がば回れの精神で見かけたら挑んでいくことになる。
皆同じ考えなのか、行く先々ボスの周りには常に人がいた。

いつからかMMORPGはソロでも遊べる、が極まって他人が同じフィールドにいる意味が希薄なゲームが増えていった気がする。
そんな中で、他人がいる意味をもう一度作り出そうとしているように思えた。


古来のMMOはそもそも世界だけがあって、クエストなどのレベルアップ導線はなく、プレイヤーはひたすら身の丈に合うモンスターを倒してレベルを上げるしかなかった。

そして効率良くそれをこなすには、他のプレイヤーとパーティを組み、少し背伸びをした場所で狩りをするのが良い、そんな設計になっていたのだ。
だから自然とコミュニケーションを取るようになっていた。

いや、少し語弊があるかもしれない。
パーティを組もうと自ら他人に声をかけることが出来るプレイヤーがいることが前提となっていた、というべきか。
そしてそれに気軽に応答する者が多いだろうという見込み。
ゲーム内でコミュニケーションを積極的に取ることができる者は楽しめたが、そうでない者にとってはただただ不親切なゲームだっただろう。

MMOと言うジャンルが一般に普及するにつれて、ソロでも遊べるようにしてほしいと言う声が大きくなり、それに答えざるを得なくなったのはきっと、誰しもが自発的なコミュニケーションが出来たわけではない、ということなのだろう。

ソロ主流となったMMOは、昔を知る人間からすると少し寂しいものがあったが、それでも多くの人間が自分と同じようにゲームを進行していると見てて取れるのは、それはそれでオフラインのゲームにはない光景だった。
互いに干渉することなくクエストを進めていく。

いや、敵の奪い合いという干渉はあったかもしれない。
昔ながらの仕様を引きずっているゲームだと、先に攻撃を当てたプレイヤーに経験値やドロップアイテムの取得権がある(優先権システム)となっていて、その状況だと他人の存在は邪魔でしかなかったかもしれない。

だけどそんな中でも秩序が生まれる様子は見ていて面白かった。
これもひとつのコミュニケーションだろうか。

ゲームの中ですら列を作る律儀さ、日本独特のもので、昔は海外から笑われていたものだけれど、結局それが効率いいんだよねということで文化は伝搬したようだ。

WoW Classic は昔ながらの優先権システムだからこそ、この秩序が必要だったのだろう。
現代のMMOの多くは優先権システムを辞めてしまったから今後は見られない光景かもしれない。


ソロでも遊べるように、の声に答える形で他人との干渉を薄くしていったMMO。
だがこの言葉は実は額面通りではないのだろう。
真に一人で遊びたいのならばオフラインのゲームを遊ぶはずなのだから。

恐らく目指すべきは、自然とコミュニケーションがとれるゲーム設計。
プレイヤーが自発的に他人に話しかけるといったコミュ力の強さを発揮しなくても、何らかの仕掛けで他人がいることに意味が生まれるような。

Bless Unleashed はフィールドボスというプレイヤーのたまり場をつくり、言葉を発さなくても十分楽しめる可能性を提示してくれた。
この方向性は言語の壁さえ取っ払うもので可能性を感じる。

これからもMMOというジャンルの変遷を見ていきたいとあらためておもった次第である。

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