明日の空 vol.6
第六章「もう一つの居場所」
本日も、ぽんずさんといつものように屋上で話していた。すると、屋上にご年配の男性がやってきた。「おい!ぽん。まーた、屋上に登って。ここは、住人も入れない開かずの場所なんだから、管理人の娘が堂々と私物化していいところじゃないよ!」と注意しに来た。
「やべ、定吉きた!」とぽんずさんが一言言うと、隣にいる私に気づいてご年配の男性が話しかけてきた。
「あれ、貴方ここの住人じゃないよね?どうして屋上に?」といい切る前に、「私の友達!意気投合して最近ここで色々人生相談に乗ってあげてます。」とぽんずさんが言った。
続けてぽんずさんが、私に向かって年配の男性に手を向けて「こちら、私の父の小宮山定吉(さだきち)63歳、団地の管理人です。」今度は、私に向かって手を向けて「こちら友達の佐山民子さん。通称、たみちゃんここから住んでるところ近いんだって。」「ねっ!」とぽんずさんが紹介してくれた。
「はじめまして、勝手に屋上に出入りしていてすみません。佐山民子と申します。ぽんずさんにはいつも良くしてもらってます。よろしくお願いします。」と私は挨拶をした。
すると、「はじめまして、ぽん変わってるでしょ?勝手に団地敷地内に実のなる木植えるし…。ほぼ、毎晩屋上に行って何してるんだか。」と定吉が言うと、「え!木のことバレてた?こっそり植えてたんだけどね。」とぽんずさんが言った。
「あのね。何十年管理人やってると思ってるの。そりゃ、団地のことなら大体知り尽くしてますよ。知らない木を見つけるたびに、ぽんがまた植えたな。と思って、住民に許可もらってるんだから…こちらの身にもなって欲しいもんだね。」と、困った表情で定吉さんは言った。
「え!そうなの?知らなかった…てっきり気にしてないのかと思ってたよ。木だけに(笑)。参ったな…それは、気を使わせてすみませんね。」とぽんずさんは言った。
二人のやりとりをみて、ぽんずさんと定吉さんは良い親子関係なんだろうなと思った。
「佐山さんも、屋上危ないから気をつけてね。マンションの屋上なんて、開けとくとよくないことが多いからね。防犯上も良くないし…思い詰めた人が何するか…」とこちらを見て言った。
わたしは、どきっ!とした。私に自身が始めてこの屋上に来た時、まさに思い詰めて危ない考えに走っていたからだ。
「はいはい、定吉、たみちゃんは大丈夫。私が屋上での酒盛りのお供に付き添ってもらってるだけだから。」とぽんずさんはフォローしてくれた。
定吉さんは、「じゃあ、とりあえず今日のところは屋上から出てくださいね。」といい、その場去った。
私は、飲み始めたばかりだったので、もう少し屋上でぽんすさんと話したい気持ちはあったが、後ろ髪を引かれる気持ちで、ぽんずさんと別れ、もう一つの行きつけの場所へ行くことにした。
それは、就職を期に一人暮らしするようになってから住んだこの街で、気軽にふらっと入った居酒屋である。
この居酒屋で、ある人と仲良くなった。
次号へ続く…
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