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外傷後の肩関節可動域制限について

この記事でわかること

  • 外傷後の肩関節の特徴

  • 肩関節の屈曲可動域制限について

  • 肩関節の屈曲可動域制限の評価

こんにちは、山田です。

いつも外傷マガジンをご購読いただきありがとうございます。

外傷後にも起こりやすい肩関節の屈曲可動域制限について整理してきたいと思います。

肩関節の運動は、非常に複雑で苦手意識を持たれている方もいると思います。

  • 可動域がなかなか改善しない

  • 治療すると痛くなってしまう

  • そもそも原因がどこにあるかよくわからない

  • 1st、2nd、3rd使いどきがよくわからない

といった感じで。

僕自身も、うまく整理するまで肩関節の可動域制限に対して自分の予想通りに可動域の改善をできない時期がありました。

施術をしていく中で、これほど不安なことはないんですよね、、、

なので、今回は少しでも同じような悩みを持つ方の「可動域改善のヒント」になればいいなと思いこの記事を作成しました。

外傷後だけではなく、肩関節の可動域制限がある患者さんにも対応可能な内容になっています。

リアル外傷マガジンでは、購読者様との近い距離感を作っていきたい為、積極的に皆様の声をピックアップしていきたいと思っております。

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✓ 肩関節とは

肩関節についてサラッとみていきます。

◆ 特徴

肩甲骨、鎖骨、からなる上肢帯と上腕により形成されています。

人体の中で最も広い可動性があり、日常生活の多くの動作に関わってきます。

可動域が広いのは構造上、骨性の支持が少なく、関節包、靭帯および筋にその支持を依存しているからで、極めて不安定な関節とのいうことができます。

日常生活を支障なくおこなうには、肩甲骨面挙上の可動域の獲得が必要で、結帯、結髪動作をするには、更に大きな関節可動域が必要です。


◆ 3つの解剖学的関節と2つの機能的関節

肩関節は5つの関節が共同して動くことで、大きな運動をすることができます。

  • 胸鎖関節

  • 肩甲上腕関節

  • 第2肩関節

  • 肩鎖関節

  • 肩甲胸郭関節

そしてこの5つの関節は、解剖学的関節と機能的関節に分けることができます。

◇ 解剖学的関節

  • 肩甲上腕関節

  • 肩鎖関節

  • 胸鎖関節

◇ 機能的関節

  • 肩甲胸郭関節

  • 第2肩関節


・ 肩甲上腕関節

肩甲上腕関節は、上腕骨頭と肩甲骨関節窩によって形成される球関節で3つの運動自由度を有する多軸性関節です。

肩甲骨関節窩に対して、上腕骨頭は約3倍の面積があるため、大きく動くかわりに、同じ球関節の股関節と比べると、骨性の支持は乏しく不安定な構造になっています。

不安定な構造を補強するために、関節周囲には関節唇、関節包、靭帯、腱板が存在し、これらの組織は上腕骨頭の中心を関節窩の中央にキープ(骨頭の求心に)しています。


・ 肩鎖関節

鎖骨外側と肩峰で形成される平面関節で、さまざまな形状の関節円板が存在します。

肩鎖関節の可動性自体は大きくないのですが、肩甲胸郭関節の運動をスムーズに行うため重要な役割をになっています。


・ 胸鎖関節

胸骨と鎖骨で形成される鞍関節で、唯一上肢帯と体幹を骨性に連結しています。

鞍関節は2軸性関節に分類されていますが、胸鎖関節には関節円板が存在することから、球関節と同じようにさまざまな方向に動くことが可能です。

胸鎖関節は、鎖骨を介して肩甲骨運動の支点になっています。


・肩甲胸郭関節

関節包がなく、骨同士での連結がないのですが(肩甲下筋、前鋸筋、脊柱起立筋によってわけられている)、可動関節のように肩甲骨が胸郭上を滑走するので、機能的関節と呼ばれています。

肩甲骨の運動は、上肢を挙上する時の安定した土台となるために、とても重要です。


・ 第2肩関節

肩峰と烏口肩峰靭帯により形成される “鳥口肩峰アーチ” を屋根に見立てた関節で、骨同士の連結のない関節です。

鳥口肩峰アーチと上腕骨頭の間の空間の肩峰下スペースに、肩峰下滑液包、回旋筋腱板が存在しています。

上肢挙上時には “大結節が鳥口肩峰アーチ下を通過する” 最大のミッションがあります。

このミッションが失敗に終わると、上肢と肩峰が衝突し疼痛が生じる“肩峰下インピンジメント”が発生します。

肩関節のスムーズな運動を行うには、上記の5つの関節の機能がしっかり確保されている必要があります。


✓ 外傷後の肩関節

外傷後の肩関節には、

  • 変形による形態の変化がある

  • 長期間の不動による軟部組織の短縮がある

  • 疼痛回避姿勢や固定肢位などにより、緊張の強い筋と弱い筋がある

上記のような可能性があります。


◆ 変形による形態の変化がある

骨折などが起こることにより、受傷前と比べて骨の形態が変化してしまっている可能性があります。

骨の形態的な変化が起きていると、受傷前と同じような可動域には戻らない可能性が考えられます。

施術に入る前に、形態の変化を確認しておく必要があります。

形態の変化を確認しておくことによって、関節可動域のゴールを明確にすることができます。


◆ 長期間の不動による軟部組織の短縮がある

長期間の不動により軟部組織が短縮してしまう可能性があります。

それにより、関節運動時に伸びて欲しい組織が伸びないことで、可動域制限が発生します。

最優先は骨折部の再転位防止ですが、できるのであれば固定期間中から、軟部組織の短縮が起きないよう対処しておく必要があります。


◆ 疼痛回避姿勢や固定肢位などにより、緊張の強い筋と弱い筋がある

痛みを回避するために長期間同じ姿勢をしていたり、同じ姿勢での固定が長期間続くことで、緊張しっぱなしの筋肉と働きが弱い筋肉が出現します。

肩関節の運動は、筋肉の協調した働きによってスムーズにおこなわれるため、筋肉の緊張のバランスが乱れると可動域制限の原因になります。

固定期間中から、姿勢を注意したりすることで、筋肉の過緊張などを予防する必要があります。


✓ 肩の前方挙上(屈曲)可動域制限について

肩が上がらないといっても、いろいろな原因があります。

肩関節の施術がうまくいかない理由として、「屈曲できない原因が絞り込めていない」ということがあります。

絞り込むための考え方がわかれば、肩の可動域も改善しやすくなります。

ぼくの場合、肩の屈曲可動域制限を考える時は、大きな3つのテーマで考えることにしています。


  • 肩甲上腕関節の拘縮

  • 肩甲骨の追従機能の低下

  • 腱板の機能低下


それぞれ解説していきます。

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経験豊富な柔道整復師たちが〝リアル外傷〟現場での〝リアル〟な整復から固定、後療法などを赤裸々にお伝えしていきます!!!

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