気配の消し方

恐怖の正体として「胴体」と「頭」と「目玉」について何回かに分けて書いてきた。ほんの一月ちょっとの間に出てきたもの。検討不足ではあるものの、はっきりとした働きも出てきたのだから、あながち間違いというわけではないはず。

「正しさ」を求める人にはお勧めをしないが、今すでに、自分の中にある恐怖に苦しんでいるなら試してみる価値はあると思う。
そう「思いこむ」とかいう話ではない。「頭を落とした姿勢」というのは「具体的姿勢」なのだから、暇ある時にちょっとずつ試せば、その時々にある自分の中の恐怖の変化に気づくはず。恐怖量をコントロールできる、とわかるだけで救われるかもしれない。私は救われた(笑)。

恐怖→思考→気配

恐怖をコントロールできる、とわかれば頭が働く。頭を落とした姿勢によって見た目は悪くなるが、頭を物理的に自由になり、結果、思考も自由になる。
武術的に効果を紹介すればこうだ。

目の前に怖い相手がいるとする。私の場合は武器を持った相手。素手なら何とかなっても、武器を持たれると身体がすくむ。この時、すくむのが胴体だった。
頭を落とせば、すくんでいた胴体を捨てられる。思考する私は胴体にはいなかったのだ。当然と言えば当然、頭の中、脳の中に私はいた
頭を落としてみれば胴体の支配から逃れられる。首が切れ、頭が自由に360度回せるようになる。
こうなると、怖い相手も「観察」ができるようになる。

慣れないうちはそれまでの常識が観察にブレーキをかけるが、数時間稽古をしてみれば、想像以上に観察が出来る事がわかるはず。
頭が回りだせばさらに、探索が出来る。探索の主役になるのが「目玉」。目玉は頭よりもさらに動きが早い。相手の全体、また、細部まで文字通り「見える」ようになっていく。
情報が増えれば、それをもとにまた、思考が広がる。これが恐怖から飛び出した時に得られる第一段階。

弱くなったから強さを得た

頭を落とした姿勢は自分の強みを手放した事から見つかった事だ。改めてそれを覚えておいて欲しい。
大抵の場合、強みを生かそうとするはず。わざわざ自分の武器を手放す事はない。しかし、それでは頭が身体を支配しだす。体にはまだまだ働きがあるのに、身体を一つの可能性に閉じ込めかねない。

頭を落とせば、頭が動き、目玉が自由になる。目玉の速さはとてつもない。慣れない相手なら、目玉の動きを「気配がない」と思うかもしれない。しかし、それでも目玉は肉体、私から生まれる力。よくよく観察をしてみると、その目玉の動きも予測される。
恐怖を離れ自由を得たが、ここでまた、気配の問題で苦しめられる事になる。

ここでまた、強みを手放してみよう、と考えた。
頭を落として目玉の速さという力を得たのだが、さらに、姿勢を悪くしてみた
頭どころか、さらに腰を曲げ、動きにくさをアップさせてみたのだ。しばらく、この窮屈さ、苦しさを味わってみた。するとどうだろう、突然、背中の上にドスン、という圧力を感じた

最初、その圧力に驚き、つい、腰に踏ん張りを戻してしまったが、それでは意味がない。頭を落としたまま、背中の圧力を観察し、身体がどう反応をするのかを待っていたところ、自然と、足が前へと転がり始めた

気配が消えるのは当たり前

自然と転がりだした足。当然、その上に載っている胴体、頭、腕も前へと進む。
抑えてくれるように頼んでおいた相手はその転がる動きに戸惑い、侵入を許してしまう。二度三度、同じように背中の圧力に従い、足を転がしてみた。何度試しても、相手は戸惑う。この「結果」をもとに、この動きを改めて考え、結論を出した。

それは「大気圧」。普段気にする事がほとんどないだろうが、この空気はギュッと地面に向かい圧力をかけている。上から下に身体を押し付ける力がこの地球にはある
背中を曲げ、頭を落とす事でその上から下へと降りてくる力を感じやすくなったのだろう。身体が押しつぶされ、それにより、結果として前へと足が進むようになる。この時の足は内側にある筋肉の働きで動いたものではない。いってみれば、突然、後ろからドン、と押され前へと躓いたようなもの。抑える相手は、当然、そのタイミングを計れない。

気配をどう消すか、と考えていたが、内側に原動力を作っていては絶対に消えない。しかし、外にある力に頼れば当たり前のように気配はなくなる

気配を消すのは簡単、気配が消えるのは当たり前、そんな確信を持ってしまった。この確信があれば、この先、さらにそれを生かす方法が見つかるだろう。逆に、気配は消えない、難しい、と思っていては、いつまでたっても消せるはずがない。

動きの原動力が内から外へとがらりと変わった。また、数回に分けて、「気配」について書いていきたい。
もちろんこれも、5/22の川崎稽古で紹介します。思った事、感じた事、わからない事、遠慮なく聞いてください。誰にでも出来る事です。だって、頭は重いし、腰は曲がるし、大気圧は等しくあるんですから、「当たり前」です(笑)。

【稽古予定】参加受付中
5/22(土)神奈川川崎稽古
5/29(土)甲野善紀浜松稽古

5/12(水) 名古屋緑区
5/21(金) 名古屋熱田
5/26(水) 名古屋緑区
5/27(木) 瀬戸ヒーリング
5/28 (金) 名古屋東山

詳細はウェブサイトで。
カラダラボ ウェブサイト

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