マンション理論2階 手足、指

身体感覚をマンションに例えて話をしています。
その階層は地上6階、地下1階です。
1階から話を進めていますが、未だ、2階が終わりません(笑)。
この先、3階、4階とさらに、自由度は増して、その階層から生まれる世界はどんどんと大きくなっていくのに、このペースではいつ終わるのか、と申し訳なく思いもします。

まぁ、個別の階層について「正しく」、「詳しく」知ってもらおうとは全く思っていませんから、いくつかの話の中にちょっとでも、身体感覚という世界に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

さて、今日は「手」の話です。手の仕組みが分かれば、足の仕組みもわかります。
また、手は主に「指」で出来ていて、自然と指先にも意識が向いてくるはずと思っています。

腕の構造はシンプルに見れば、「肩・肘・手首」で出来ています。
そして、それぞれの動きの特徴は、
肩が廻り
肘が揺れ
手首が固まる
ものです。

実は、手の中にある構造は似ています。もう、同じと言えるのではないか、というほどそっくりです。
ですから、腕を通して観察が出来ていれば、それを手にも簡単に応用が出来るようになるのです。

腕の構造と手の構造は似ている。
そう書きました。ただ、それは医学的、専門的にはきっと、「間違い」でしょう。そもそも考えもしないはずです。
しかし、「動き」という観点から見れば、腕が持っている動きと、指が持っている働きはそっくりなのです。

肩に相当するものは「第三関節」、肘に相当するものは「第二関節」、手首に相当するものは「第一関節」です。
手を握ったり、開いたり、それを当たり前にできていれば、その働きを工夫しよう、とは思わないでしょう。
昔なら道具はこの手が持ち、この手で働かせていました。いかに「道具と一体になるか」が何より大切でした。
仕事をする中で、自然と道具と一体になる感覚を「コツ」として掴んだはずです。

ただ、そのコツは伝えられる事なく、現代においては消えてしまいました。
なぜなら、道具は機械になり、コンピューター制御になり、仕事は人任せになり、自分で作業をする必要がなくなってしまったからです。
手を通して、「別の何かと一体になる」という経験を得るチャンスを現代人は無くしてしまった、と言えるかもしれません。

手を握り、開く。
このシンプルな動きの中にも、回し、揺らし、固める、という別々の動きがあります。
そして、そのそれぞれの動きのタイミングを揃える事で生まれる働きがあるのです。

手の話をしていますが、外から見た時、手は指、手の平、手の甲、ゲンコツと、いくつかの部分に分かれているように見えます。
しかし、骨を観察してみると、その大半は骨であり、案外と指は長いものです。
手の平、手の甲を作る部分も骨を見れば指なわけです。中手骨、という名前がついています。
指の根元にはしっかりとした土台があり、ココを手首として考えれば、その土台の確かさを活かし、中手骨からの力を指先へと流していく事が出来ます。
ただ、それが難しいのは、「指先」は身体のどの部分よりも早く、つい、外の刺激に反応をしてしまうからです。

実は究極的には手や指は意識を無くし、指先だけに任せてあげたらいいのではないか、と考えています。
それほど、指先は「働く」ものなのです。
しかし、末端にある指先はなかなか意識的に動かしにくく、つい、指や手に力が入ってしまいます。

実は私たちの中にはすでに無意識の中で動く指先がいくつもあります。
今、パソコンを前にキーボードを叩き、この記事を書いていますが、この時の指先は無意識に望みのキーを打ち、文字を連ねています。
また、ネクタイなんかもそうです。
どうやって結ぶんだっけ、と考えてしまえば手は固まりますが、指先に任せてみれば、自然と動いてくれるから本当に不思議です。

「慣れ」という力は大変なものです。
いつの間にか得てしまった動きは疲れもせず、淡々と仕事をこなしてくれます。
しかし、その「慣れ」を生むために、必要なものが今、少なくなっています。

無意識のうちに手に力みを作り、指先の動きを生み出せなくなっています。
楽しく愉快な手の作り方を忘れてしまったからです。
この手を楽しくするためには第三関節は回し、第二関節は揺らし、第一関節は伸ばすように固める。これが大切です。

腕を肩肘手首としてみれば、胴体から切り離され、自由が生まれます。ただ暴れ、歩くだけならこれだけで構いません。
しかし、モノを持ち使いたい、と願った時にはそのモノと一体化する必要があります。この時、手の中に腕で行った事と同じ流れが必要になります。

この流れを得るために何をすればいいのか?
実は案外簡単です。それは大好きなものをずっと触っている、という事です。
我慢と義務で何かを持っている時には無理がでるもの。
しかし、楽しく、気持ちよく、触っていたい、と思えるものなら、自然と手は緩みます。手の中に回し、揺らし、固める流れが生まれます。
ただ、最近は超モフモフ、フワフワしたものがあり、それはもちろん、楽しいのですが、ちょっと指先に偏りすぎになりがちです。
少し硬さと重さがある「モノ」らしいものを手にしてみるのがいいと思います。

うわっ・・・、今日も気づけば長々となってしまいました。
次回でちょっと無理やりですが、2階を終わらせます。
とにかく、2階は自由を得る部分、自由を楽しむ部分と考えてくれたらそれで結構です。

【不定期稽古のご案内】

「甲野善紀先生の名古屋稽古」
稽古日時:7/21(日) PM1:00~PM3:30
稽古場所:浄泉寺
会場住所:名古屋市緑区鳴海町字上中町9
アクセス:名鉄本線鳴海駅から徒歩5分
参加費:8000円

参加資格はありません。見るだけ、聞くだけでも参加可能です。
服装自由、持ち物自由、受講スタイルも自由だし、入退室も自由です。気楽にご参加いただけます。
申し込みはウェブサイトから。
http://www.karadalab.com/


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