骨に感謝をしつつ、手放す

骨と肉と皮

前回のノートに書いた通り、「脱骨格」として模索を始めました。
新しい事を求める時、それを邪魔するものが「常識」です。その常識が無意識レベルであれば、とても時間がかかります。

骨を捨てる

これがどれほど難しい事か・・・。専門家の方にはよくわかってもらえるかと思います。骨、骨格は身体にとって、動きにとって大切なものです。わざわざ言うまでもありません。

しかし、私たちの身体は骨だけでは出来ていません。大雑把に見て、骨と肉と皮によってできています。(内臓と魂も入れておきたいところですが、共に「見えにくい」ものなので、あえて今回は外します。)

骨は土台になりうるもの。観察をした時、しっかりとした形をもってわかるもの、それが骨です。カチカチの骨。塊を持つ骨。筋肉は鍛えなければ作られませんが、骨はいつの間にかこの固さを与えられました。頼ってしまうのもわかります。

ただ、いつまでもその骨に頼れない。それを伝えたいのです。

骨は回る

稽古をし始めた頃、「骨は回る」事に気づき、以来、動きが変わりました。しっかりと抑えられた手も、回る骨を意識すれば、抜け出せるようになりました。直線的な動きではないので、遠回りはしますが、「ネジ」のような動きを生み、相手はそれを力任せでは抑えられなくなります。

ただ、その回る骨は「腕」、上腕と前腕の構造があるからこそ生まれる動きでした。背骨はなかなか動きません。それでも、自分の身体を観察する時、骨から入れば簡単だ、とわかり随分と助けられました。

その後、腕が動くようになり、体幹にも目を向ける余裕が生まれ、仙骨、腰椎、胸椎、頸椎、胸骨、肋骨、骨盤、肩甲骨とその位置と動きを確かめていきました。

五つの腰椎

骨はそこにあるものですから観察をしながら動けば特徴が分かってきます。
腰椎は力強く、観察がしやすい骨です。特に、武術のように緊張が生まれた状況というのはまず、腰椎に力が入ります。
腰椎は五つありますが、どうやらそこに力を入れやすい腰椎があります。そして、その腰椎が性格を決めているようです。この経験が私が心から身体へと基準を変えるきっかけになりました。

腰椎一番は上下の動き。手を上げ下げした時力が入ります。一番に力が入りやすい人は手の上下が好みという事になります。力は上下に流れるわけですから、頭にエネルギーが行きやすく、頭の回転を高めます。結果、想像力豊かになっていきます。

腰椎二番は左右の動き。重心が左右どちらかに偏りやすくなります。身体が左右に偏れば当然、見えるものも偏ります。結果的に、好きなものは見れても、嫌いなものから目を背けたり、好き嫌いの感情が強くなります。

腰椎三番は回転が得意。ねじれを生み出し、勢いを出します。左のねじれ、右のねじれ、くるくると回って勢いを生みます。相手の力を取り込み、勢いに変える、反射的な動きが得意になっていきます。

腰椎四番はしゃがむ力。ぎゅっと内側へと入り込みます。いわゆる丹田に集中して、外に影響されない自分を作り出します。内に秘めたものを見つけられたなら、外がどうであれ、心安心して動く事が出来るようになります。

腰椎五番は前へと行く力。胸を張れば自然と腕が外へと延び、動きがより大きくなります。体幹では出来ない細かな仕事も、腕に任せる事によってやり遂げらえるようになる。一番、現実的な働きを生む骨です。

反射的に動いてしまう腰椎はもちろんありますが、すべて持っているのが私たちは性格に寄らず、すべて持っています。感情に振り回されても、少し冷静になって身体を観察すれば、その瞬間必要な動きを求められます。
前後左右上下に回転、そして内外、そのすべてを腰椎だけでも埋めてしまうのです。心配があって心止まるのは当然ですが、だからこそ、動きを作りだせる身体に頼ろう、と思えるはず。心配も必要な事、忘れないでください。

ちょっと思い出して書き出すだけでもすぐに字数が重なっていきます。文字で表せばどれだけあっても足りません。
しかし、これは実際に試してみればすぐにわかる事。同じ手の上げ下げでも、観察をしながら行えば、力の入りどころがわかるものです。それが「骨格」のいいところ。すでに「出来上がっているレール」があるのです。

肋骨、頸骨、肩甲骨、骨盤、胸骨

他の骨にも当然、動きの癖があります。
胸椎は肋骨とつなげれば左右の振動を生みやすくなりますし、頸骨は重い頭蓋骨を支えているので、普段から止まりがち。ただ、バランスを主に使う骨なので、あえて「崩し方」が分かれば、常識はずれな動きが現れます。

胸骨は平ら感を得る事が出来るし、肩甲骨、骨盤は腕と脚とをつなぐ土台として考えると力を使いやすいかと思います。

そして、身体の中には様々な骨があります。
肘、膝の関節、尺骨橈骨など二つの骨を組み合わせれば持っている素材の力以上の働きが生まれます。
手首足首には舟状骨など細かな骨がいくつもあり、それぞれに形があるわけですから、その形を活かせば自分はどんなことがあっても動きをなくさない、自由なのだ、とわかってきます。

私にとって、大きな安心と自信を与えてくれたのが骨でした。
その上で、その骨を手放す、捨てる、と言っているのです。
ただ、捨てようと思っても捨てられないのが骨。骨で得た安心の上に、さらなる自由を見つけられるようになったのが「肉」なのです。

筋肉と贅肉

筋肉の働きについては皆さん、ポジティブなものがあるでしょう。
鍛えなくては手に入らないもの、それが筋肉です。伸びたり、縮んだり、その働きが力を生み出している、と「言われています」。でも、実のところよくわからない、らしいのです。

とは言え、今、目の前で戦わなくてはいけない時、努力をするのをやめられる人は少ないです。自分自身に負担をかける努力を重ねていけば、嫌でも筋肉がついてしまいます。しかし、私はその努力が苦手でした(笑)。

筋肉はつかず、いつの間にかたくさんの「贅肉」を手に入れていました。鏡を見るたび、掴むたびに何とかしたいなぁ、と思うものの、骨で動く事を知ってからは筋肉の必要性も感じる事が少なくなり、より、努力の出来ない人間になっています(笑)。

こんな生き方をしてきていますが、そのおかげで今、「肉」の働きについて気づく事ができたのでしょう。次回は「贅肉」についての変な話をします。

【稽古予定】参加受付中
3/13(日)つくば稽古会
3/26(土)甲野先生の浜松稽古会
4/9(土)川崎稽古会

3/6(日)名古屋
3/9(水)名古屋
3/12(土)浜松
3/18(金)名古屋熱田
3/20(日)名古屋
3/23(水)名古屋
3/25(金)名古屋東山

3月の「大垣」は未定です。
詳細はウェブサイトで。
カラダラボ ウェブサイト

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