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イベントレポ『なぜ私たちはダイエット広告に引き寄せられるのか?』

こんにちは。吉野なお(Nao)です。
レポートが遅くなってしまったのですが、先月8月22日に、オンラインイベント『なぜ私たちはダイエット広告に引き寄せられるのか?』を、磯野さんと開催しました。
からだのシューレとしては、初めてのオンラインイベントということもあり、どのぐらいの方にご参加いただけるのか未知数だったのですが、結果的に34名の方にご参加いただけました。(zoomで行いました)
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!
参加者の方たちとチャットを通してリアルタイムにコメントでやりとりもでき、かなり濃いめの2時間になり、私も話たりないぐらいだったのですが、ざっくりとイベントの模様をお伝えします。


・どんなダイエットやったことある?
世の中に溢れる、ありとあらゆるダイエット。ダイエット広告やテレビ番組、雑誌などで色々なものを目にしますよね、という話から、皆さんが過去に試したことのあるダイエットを聞いてみました。
例えば...りんごダイエット、キノコダイエット、酵素ドリンク、食べないダイエット、ダイエットサプリ、『どっさり』を銘打った怪しいお茶などなど。
「ダイエット商品のCMや番組を目にした日は、なんとなく油物やご飯を控えてしまったこともある」
「雑誌でよく紹介されていたダイエットのドリンクを飲んで気持ち悪くなってしまった」
などリアルなご意見もあり、かつてダイエットに励んでいた私も「わかる〜!やったことある!」と共感しきり。
食べ物に関するダイエットの他に、ジムへ行ったりヨガをしたり何か運動をしている方もいらっしゃいました。


ダイエットに関する表現をナナメから見てみる
次に、私たちがふだん何気なく目にするダイエット広告やダイエット本の表紙から受け取るイメージやインパクトについて、磯野さんと私が集めた資料を見ながらお話していきました。
広告写真のアフター(ダイエット後)は、より細身に見えるような写真の撮り方をしていたり、高級感のあるかっこいいイメージを演出されていたり、はたまた『脂肪燃焼』を彷彿とさせるために炎のイメージが使われていたり、芸能人やインフルエンサーが紹介していて安心感を抱かせるもの、『○○するだけ!』『食べてもOK!』とうたうびっくり系のものなど、あらゆるジャンルが存在。
まるでポケモンのようだなと私は思いました。(ポケモンのゲームでは、草むらからあらゆる属性の野生ポケモンが出てきます)

本の場合は『スタンフォード式』『シリコンバレー式』『アメリカの医師が教える...』など欧米をイメージさせるもの(なぜアジアの医師じゃダメなんだ??という磯野さんの鋭い指摘。確かに!)、『痩せたいなら○○しなさい』『デブ思考』など、強い口調で心へアプローチするようなものも人気。
「こんなことありえない...」と思うものほど不思議とつい気になって見てしまったり「痩せたいのにどうしたらいいかわからない」と心が不安定な時に「こうしなさい」という命令メッセージがあると惹かれて頼りにしてしまうのかもしれません。
「自己管理ができていないから」「意思が弱いから」「そんな体型じゃ女として見られない」などという言葉で人の心を煽って奮い立たせようとすること(そしてダイエット商品などに繋がったりするのですが)は、モラハラと紙一重なのではないか、という話にもなりました。
ご参加いただいた方の中に、かつてダイエット関連の記事を書いていたライターの方もいて、「実は医師が書いていない"医師の本"の話」など、ダイエット業界の裏話も興味深かったです。

また、トーハン(出版流通会社)のデータを元に、ダイエット本が売上TOP10入りし始めたのは2002年からということを発見。これは『メタボ検診』が注目され始めた頃と同時期だという磯野さんの考察に思わず納得。
確かに『メタボ』という言葉は、私(1986年生まれ)が子供の頃には耳にしたことは無く、ある時期から、メタボと同じように『体脂肪』や『タニタ』などという言葉を頻繁に見るようになったことを記憶しています。(トクホのお茶なんかも出始めましたね)


・体型を気にしてしまうとき
ダイエット広告などを真に受けず、体型を気にせず生きていきたいのに、気にせざるをえない現実にぶち当たる時もあります。
「スーツを買う時にお店で店員さんに太ったことを指摘されて以来、スーツを着るのが怖くなってしまった」という大学生の方のご意見には「分かる分かる!」「スーツってサイズ無い!」「スーツ着るためにダイエットしました」「マネキンの凹凸がなさすぎて参考にならない」などの共感の声が多数。
私もスーツが必要になった時、店頭に自分のサイズのものが無く通販で血眼になりながら探して買いましたし、スーツに限らず日本のアパレルショップの店頭サイズ展開は狭いですよね・・・。
画一化された就活生のスーツスタイルというのも昨今問題になっていますが、『決まった形に自分を合わせなければ』という流れになってしまうことはとても窮屈だと感じます。


・言葉がもたらすイメージの正体
磯野さんの著書『ダイエット幻想』にも出てくる話ですが、エビデンス(科学的根拠)がある!と提示されて広まっているダイエット方法でも、元の論文を見てみると実は巷で広まっている解釈とは異なるものだったり、実験的に誰かの体で減量効果があったものでも、必ずしも全ての人に当てはまる方法でないものもあります。(何かを過剰摂取したり減らし過ぎたりしたことが体に合わず別の病気をもたらす場合もありますよね。断食を真似て食べないダイエットをした私が摂食障害に陥ってしまったケースもありますし...)
例えば流行っているダイエット方法だと、エビデンスがあると言っても元の論文まで辿って読むことは少ないのでは無いでしょうか。(論文は英文だったりもしますし)

他にも言葉からのイメージといえば、たとえば『シリコンバレー式のダイエット食』と聞くと、何となく凄いイメージで捉えてしまいますが、そもそもシリコンバレーがアメリカのどの辺にあるのか、シリコンバレーは何が凄いのか、明確に知らない人もいるのではないでしょうか。
そしてアメリカに住んでいる現地の人たちがふだん食べているものと、日本に住む私たちが食べているものも違うかもしれない、さらに日本に住んでいると言っても一人一人食べている食べ物や活動量は毎日異なりますし、そんな中で『シリコンバレー式を取り入れれば間違いない!』と言い切れるのだろうか・・・?このようにイメージの正体をよく考えてみると「あれ?」と思うことがあるのです。
シリコンバレー。横文字だからかっこよく聞こえる?例え同じ内容でも、これがもし『群馬式の食事法』とか和風なものだったら反応するのかな?などなど。
また、『自分らしさ』は自分一人だけでは成り立たない、という話にもなりました。実は他者がいて初めて浮き彫りになる『自分らしさ』ですが、女性の美容に関する広告などで都合よく使われることもしばしば....(このあたりの話は『ダイエット幻想』でも書かれていますね)

現代社会を生きる私たちは、『社会からなんとなく感じるイメージ』に多少なりとも影響を受けながら生きています。時にはそれが苦しさをもたらすものになる場合もありますが、少し視点を変えたり同じようにモヤモヤを抱く人たちと意見交換したり共感しあうことで生きやすさに繋がることもあるはず。磯野さんや参加者の方達とお話していると私の中でも新たな発見や考えが生まれていき、とても刺激的なイベントになりました。

参加者の方からの感想を一部紹介させていただきます。

初めて参加しました。とても楽しくて、あっという間の2時間でした。ネット広告ででてくるダイエット広告が本当に苦手でストレスでしたが、これからは笑って見れそうです。また参加させていただきたいです。
ありがとうございました。とても面白かったです。まだまだ聞いていたかったです。私は化粧品会社のマーケティングをしているのですが、「美しさと個性の追求」の訴求を考えているときに、自分らしさって何?とループにハマり、結局はダイエット広告のような恐怖をあおる訴求をそう見えない形で美しくコピーライティングしていることがあり、非常にモヤモヤしていました。今回参加できて、モヤモヤの原因が見えてきました。私も言説分析したいと思います。いつかみなさんとシェアできたら幸せです。本日は改めてありがとうございました。
多くのダイエット広告や本は、社会情勢や商業利益を求めて過度に表現をしているから、そんなに気にする必要はないのだと少し心が軽くなりました。
ボディポジティブという言葉をツイッターの漫画で知って、そのような考えを持って自分を好きになりたいと思って今回のZOOMに参加したのですが、少しだけ前に進めたような気がします。ちょっとずつ頑張りたいと思います。ありがとうございました。
広告やベストセラーからダイエットのことを考えることで、客観的にダイエットのこと考えることができました。ダイエットしなきゃ〜ダイエットしなきゃ〜とがんじがらめになりがちなので、とても新鮮な気持ちになりました。外側からダイエットを見る視線が大事だなと気づきました。ありがとうございました。
ありがとうございました。2年間くらい、本気で摂食障害を治そうと思って究極にメディアから離れる生活をしました。SNS、テレビなど視覚情報に訴えかけてくるものは生活から無くしました。通勤などで目に入る広告とか仕方ないものだけ目にしてたのですが、結果今はご飯を美味しく食べてよく笑って好きなものを好きな時に食べたり、体が楽な服装を着たりするようになりました。
私自身は、体型や摂食にあまり悩んだことがないのですが、学校の保健室で子どもたちを見ていると、「そのままの自分」を受け入れるとか、一般的な評価から外れて「これでもいい」と思うって、難しい子が多いなと感じます。 今回、たくさんの方がそれぞれの経験や知っていることを語ってくださって、子どもも大人も、みんな、同じような悩みを抱えて、切実に困ったり、頑張ったりしているんだなぁと、(変に上から目線な表現になってしまうのですが)改めて実感しました。すごく学びになりました。ありがとうございました!

遠方にお住まいで、今までタイミングが合わずイベントに参加できなかった方(海外からも!)にもご参加いただけて、オンラインならではの良さも実感しました。

からだのシューレは、今後の新たな展開も構想中ですのでお楽しみに・・・!

(吉野なお)

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