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平沢進13thアルバム『ホログラムを登る男』雑感

個人的な記録として『ホログラムを登る男』の感想を書いておく

このアルバムは発売当時に買った
公式のオンラインショップで少しフラゲ気味に届いた記憶がある

当時僕はつくばの大学1年生で、
ちょうど一人暮らしに慣れ始めた頃だった
二十歳になりお酒を飲めるようになった
自由と解放の印象
大学構内を歩きながらよく聴いたのでその記憶と強く結びついている


1.アディオス

音声データが壊れてるんじゃないかと思うようなイントロとアウトロで
ディスクの初期不良を少し疑ったような記憶がある
ぶつ切りなアウトロはイリュージョン的に去った(アディオス)ということを表現しているのだろうか?

"荒んでもキミはまだキミ"という歌詞に勇気付けられる
ギターパートがかっこいい

"罵詈 喝采 罵詈 喝采 順風 多難 イリュージョン"
って歌詞
平沢さんが刻んだ年輪を感じるのでここも好き

タイトル"アディオス"がなぜ急にスペイン語なのかしばらく分からなかった
ハルディンホテルのモデルがペルー(スペイン語圏)にあってそこらへんのつながりなのかな?
PCのAmigaもスペイン語なので平沢さんの語彙にアディオスがあっても別に不思議ではないんだな

この曲が言いたいのは
「真実よさようなら」ということだと思っている

2. アヴァター・アローン

"ただ生き延びよの"後のスネア?の音が良い
各所で低いピアノの音が効いてるのもくせになる

歌詞について
転びつ 転びつ(まろびつ まろびつ)
というのはなかなかひねった歌詞だなと思った記憶がある
ライブで平沢さん自身が転んだなんてこともあったね


状況の描写
アヴァター・アローンの自問の声
サテライトからの声
という構成になっている?
インタラ行くまで正直何がなんだかわからなかった
歌詞自体がドラマチックなのは珍しいかもしれない

3.異種を誇る「時」

驚くほど不安定なイントロ
でも、ピアノの旋律には安心感があるような(?)
不思議な構成の曲だ
ギターパートが良い
時があり〜のとこの声も良い

曲自体の質感が非常に”異種”なので、
聴くと、つくばに住んでいた頃に見た景色が浮かぶ
条件反射的に脳に刻まれているのだろうか


4.MURAMASA

正直この曲はほとんど聴いてこなかった
テンポが好みじゃないからだろうか
ギターソロも好みのものではない
もっとぼりぼりした音が好きだ

“連なる秘儀の刃よ意志よ”の譜割りの感じは好き

改めて歌詞カードを見て驚いた
“古き奥 キミの影”だったのか
降る記憶 かなにかだと思っていた

この曲を何度も聴いていたら、
つくばのドラッグストア カワチの店内を思い出した
なぜだ?


5.Wi-SiWi

改めて聴いて驚いた
回路OFF回路ONのイントロの音が組み込まれているたのか
気付いていなかった
わいさいわーーあ”あ”ー ってところが良い

ところで、
“腐れムーン”ってなんだんだろう?
さっぱりわからない…

Wi-SiWiというのは歪幸ということらしいが…

もう一つ
“襲い掛かるほど愛を届けよう”
“怯えあがるほど愛を届けよう”
ってどういうことなんだろうな?
これは
旧来の”真実”と”アディオス”していない人からのありがた迷惑な忠告
ということなんじゃないかと思った
主語が謎なので、下手をしたら真逆の解釈になっていそうでこわいものだ

6.回路OFF回路ON

この曲はふと聴きたくなることがよくある
かっ飛ばした感じが良い
どうかしてるイントロとギターパートが好き
“生成消滅の光の姿で〜”の裏声も良い

歌詞について
これは気安く探ると火傷するやつだ
“ヒューストンの快挙はクロマキーでOK”
なんてヤバいにおいしかしない
なので現状はポジティブな印象だけ受け取って勇気づけられておくことにしたい


7.クオリア塔

この曲は一番印象が薄い…
“見よ幸いは岩のごとくあり”という歌詞はおもしろいな〜という第一印象

このフレーズがポジティブなのかネガティブなのか判断がつかなくて困っている
“岩のごとく”ってどういうことだ?
他にもわからないところを挙げたらきりがない

“有り得ぬと捨てられた 何もかもにキミを見る”
というのはキミの可能性は無限だということだと思う


8.火事場のサリー

この曲を聴くとつくばの秋を思い出す
これも条件反射のやつだ

そこらじゅうにギタリストがいるみたいな音で楽しい

初めて聞いた頃
火事場というくらいだから物騒な意味が込められた歌詞なんじゃないかと解釈を試みたが、
この穏やかな歌声から察するに、たぶん物騒な皮肉とかは込められていないんだと思う

これは愛猫のことを歌っているんじゃないかと誰かが解釈しているのを読んだことがある
言われてみるとそんな気がしてきた

9.ホログラムを登る男

この曲はアルバムの発売前に先行配信されたので
その頃は何度も繰り返し聴いた
でもなかなかつらい曲なので、発売後はあまり聴かなくなった

改めてじっくり歌詞を読んだ
9割悲劇で、最後で唐突に開放される構成が不可解だなと思う


10.鉄切り歌(鉄山を登る男)

“そら ワッセーラ エーイ”

”空の星座へ”
になるのがとても面白い

平沢さんは「努力不要論」というのを信じていると思う
Twitterでよくそのようなことを言っている
(ギターの練習もボイトレもしないとか)

この曲はその「努力不要論」の歌なんだと思う
この曲もホログラムを登る男と同様になかなか厄介な構造になっている
前の7割が日々の努力で苦しんでいる人
後ろの3割が努力など必要ないとだんだん気付く人
という感じ

7割が努力の話なので努力して幸せになろうみたいな歌詞に見えるけど
実際は真逆の内容なのでまったく油断ならないよ…
平沢さんの歌詞の厄介さについて後で別に書いてみようかな

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