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品質マネジメントシステム審査員のおしごと

はじめに

皆様は品質マネジメントシステム(QMS)の認証登録審査を経験したことはありますでしょうか? ISO9001などの認証を取得している会社では、およそ1年に1回、「外部監査」などのイベントがあり、「スーツの人」が来て色々と調査しているのをご存知ではないでしょうか。
彼らは「認証登録機関」の審査員であり、中立な立場からの「第三者監査」を仕事にしています。ここでは、私の経験をもとに、審査員のおしごとをご紹介したいと思います。

品質マネジメントシステムと認証登録機関

品質マネジメントシステムは、「品質の管理のしくみ」といった意味合いです。ある会社や団体の中の、品質に関する機能を維持するしくみを、品質マネジメントシステムと読んでいます。
認証登録機関は、利害関係のない立場でこのマネジメントシステムを評価して、認証登録をする会社、団体です。これにより遠く離れた会社や、たくさんある仕入先への信用をある程度確保できるのが、認証登録の意義です。認証を受ける会社は、認証登録機関に料金を支払って、およそ年に1度の「審査」を受けて、認証登録を受けることになります。

審査員のおしごとの流れ

審査員とプロジェクト(案件)の関わりは、計画→準備→実施→報告、フォローアップで構成されます。以下、具体的な手順は認証機関によって異なりますが、私の経験から記載していきます。

審査の計画

ここでいう計画は、時間割の作成です。審査の日取りが確定したら、審査員に準備が指示されます。この段階で、顧客の窓口担当と連絡を取り、品質マニュアル、組織図などを入手します。
審査の日数は、世界共通の認定基準により決められます。審査員はこの日数をすべて使って、どのトピックを、どの順番に、何時間聴取するかを決めます。また、大きな組織さんだと、複数人の審査員で訪問することが普通ですので、それぞれの審査員にこのトピックを割当てていきます。
ISOのマネジメントシステムは「プロセスアプローチ」を採用していますので、一つのトピックに複数の部署が関係しているのが普通です。したがって、計画が出来上がったら、顧客に関係者の招集を依頼し、都合の悪い部分を細かく調節します。

Photo by Marissa Grootes on Unsplash


審査の準備

計画が定まったら、審査の準備をします。現地までの移動と宿泊の手配、昼食の入手方法、審査チームのブリーフィング、過去の審査履歴の調査、インターネットでの情報収集などを行います。
認証機関の審査員は、公平で、偏りのない、客観的な証拠に基づく、クリーンな判断が要求されています。しかしながら、新製品のリリースや不祥事などがあれば、その部分について重点的に聴取する必要があります。

審査の実施

いよいよ審査当日です。時間に余裕を持って顧客を訪問し、準備された審査場所に向かいます。初回会議が終わったら、インタビューが始まります。聞いたお話、見た文書・記録、現場での観察は、必要に応じて記録をとっていきます。記録はPCに打ち込んだり、紙に記録したり、スマートデバイスを使ったりします。(クリーンルームや作業現場にはPCや紙を持ち込みにくいことも多く、スマートデバイスが便利ですね。)

審査報告書は、核心部分のみ審査中に仕上げていきます。最終会議で、結論をお伝えして、反論がなければ、審査への協力にお礼を申し上げて、審査終了となります。もしも不適合が見つかっていれば、その内容と是正処置の方向性について意見交換をしておきます。


審査の報告、フォローアップ

審査報告書は、後日正式版として顧客に提出します。もし不適合が発見されていれば、是正処置計画書を顧客から受け取り、内容を評価して、不十分な点があれば変更をしてもらいます。これらの仕事が終われば、認証機関の中の「認証レビュー」部門に、審査書類を引き継ぎ、認証書を発行してもよいか、審査してもらいます。ここまでのフローで、良い審査ができていれば、つつがなく認証書が発行されます。
認証機関の内部資料には、注視を要するプロセスや、組織変更、ホテルの情報などを含めておき、次年以降の審査がスムーズに計画できるようにしておきます。
認証機関との関わりが、長くなるに従って、審査も少しずつスムーズになっていきます。

生活スタイル

審査員は、上で紹介したプロジェクトを複数同時に担当して、出張と書類仕事を行っていきます。もちろん、審査の合間に教育訓練を受けたり、経費の精算をしたり・・・という雑務もあります。フルタイム勤務の審査員なら、月に10日、年に120日ほどの実地審査を行うと思いますので、勤務日の半分くらいは出張、ということになります。


おわりに

今回は品質マネジメントシステムの審査員のおしごとをご紹介いたしました。もし興味を持たれた方は、各認証機関の採用情報をチェックしてみてください。求人によっては、ISOを読んだことがなくても応募できる場合があります。
今後は、審査員が何を考えているのか、何を知っているのか、何を知らないのかなどなどについて書いていきたいと思いますので、興味を持たれた方はぜひフォローをお願い致します!


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