松雪泰子さんについて考える(45)『邪神の天秤 公安分析班』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:6点(/10点)
作品の面白さ:10点(/10点)
制作年:2022年(WOWOW)
視聴方法:DVDレンタル(TSUTAYAディスカス)
 
※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや結末には触れないようしております。
 
この作品は非常に良かった。ストーリー、演出、映像、ロケーション、出演者、アートワーク…どれをとっても非の打ちどころがない。
 
ある猟奇的殺人事件の謎を、刑事(既発事件の捜査・検挙)ではなく公安(虞犯人物・組織を追跡して犯罪を未然に防ぐ)が調査し、過去のテロ事件や地下組織との関係を解き明かしていくミステリー。
 
第1話から圧倒的だ。雨の廃ビル。よくこんな画になる場所をロケハンしたな…と思っていたら、この回だけでなく、第2話以降も出るわ出るわ、映画的雰囲気の漂うロケーションの嵐。ロケ撮影が多いだけでも感心。それがことごとく映像に緊張感をもたらしていて、観る側の没入感を高めてくれるから、なおさら感心。
 
ストーリー展開もスリリングで引き込まれる。次を見ずにはいられない。ミスリードかな?と思わせる演出も、そう思わせることも含めて計算されているようで、制作側の術中にはまりっぱなしだ。
 
主演の青木崇高さんが素晴らしかった。あんまり出演作を観たことがなかったが、『逃げるは恥だが役に立つ』の2021年新春スペシャルで初めて観たと思う。そのときは、ただのハラスメント野郎かと思いきや実は機転が利いて面倒見のいい上司気質溢れる男を好演していたが、本作では冷静沈着で頭脳派の渋い役を見事に演じていた。(余談だが、松雪さんと同じスターダストプロモーション所属)
 
主役だけでなく、公安の登場人物ほぼ全員、冷静沈着で頭脳派で渋い。役柄だけでなく、役者も渋い。徳重聡さん、小市慢太郎さん、筒井道隆さん…。刑事役では渡辺いっけいさん、段田安則さん。受刑者役の菊地凛子さんまで含めて、見ごたえありすぎ。このラインナップは、地上波ではなかなか実現できないだろう。さすがWOWOW。
 
松雪さんは、その渋くて男臭い公安で紅一点の役どころ。御多分に漏れず、かなり渋いキャラ。常に難しそうな表情。声はかなり低い。ネットでこのドラマの感想を調べると、「(松雪さんの)声が聞こえづらい」という書き込みをいくつか見かけた。自分が視聴する限りでは、聞こえないなんてことはなかったが、イヤホンのおかげだろうか。視聴環境や個人差によるかもしれない。
 
こういう作品・こういう役柄なので、松雪さんの喜怒哀楽を楽しめるようなシーンは正直言って無い。強いて言えば「怒」「哀」くらいで、あとはずっとクールで冷静な演技が続く。それは、公安全員に言えることだが。
 
よって、松雪さんだけを目当てに観ると微妙かもしれない。しかし、それを補ってあまりある作品の完成度の高さ。「サスペンス・ミステリーに1mmも興味がない。むしろ嫌い。」というような極端な嗜好の持ち主でない限り、おすすめする。僅かばかりグロいシーンがあるので、それだけはご注意の上で。

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