松雪泰子さんについて考える(10)舞台『SHINKANSEN☆RX 五右衛門ロック』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:8点(/10点)
作品の面白さ:?点(/10点)
上演年:2008年
視聴方法:Amazon Prime「ゲキ×シネ」
 
※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチ・結末には触れないようしております。
※上演当時に会場で観たわけではなく、配信で視聴した感想です。
 
2008年。映画『デトロイト・メタル・シティ』の女社長役で、いつもと180度異なる演技を見せたこの年、劇団☆新感線の舞台『SHINKANSEN☆RX 五右衛門ロック』に出演。ポップでロックな俗っぽい役柄を演じ、『デトロイト・―』と同様に、ここでも新境地を拓いてみせた。ちなみに、劇団☆新感線への出演は『吉原御免状』(2005年)以来二度目。
 
その『吉原御免状』の記事でも書いたが、劇団☆新感線は、業界内では動員力が桁違いの、言わずと知れたモンスター劇団だ。ドラマ・映画の主演級を客演に迎え、キャパの大きい会場でとんでもない数の公演を上演し、しかもそのほぼすべてを完売させるキラーコンテンツ。
 
本作『SHINKANSEN☆RX 五右衛門ロック』は、古田新太さん演じる大泥棒「五右衛門」が主役の人気シリーズ。大長編のストーリーが展開する中、ロックバンドの生演奏がぐわんぐわん唸りをあげる。ヘビメタとミュージカルがちゃんぽんしたような熱量が凄まじい。
 
松雪さんは、古田新太さんに次ぐ主演級の役回りで、場面展開に応じて衣装も歌も踊りも目まぐるしい。しかも、普段ドラマ・映画で見せる物静かで薄幸な女性像とはかけ離れた役柄なので、それだけでも見ものである。
 
それにしても役者がすごい。江口洋介さん、森山未來さん、北大路欣也さん…。特に、『救命病棟24時』(2001年)で名コンビとして共演した江口さんと松雪さんが、こういうかたちで共演するとは。
 
では鑑賞した感想はというと…、正直言って、何とも言えない。
 
堤真一さんと松雪さんの『吉原御免状』(2005年)は、新感線作品としては異例の「歌なし・笑いネタなし」作品。こういう作風の方が個人的には好きなのだが、どうも新感線ファンの多くから支持されているようではなく、極めて例外的な作品だった。
 
一方、この『SHINKANSEN☆RX 五右衛門ロック』は、新感線の王道の「笑いネタ・歌モノ」。この路線が多くの演劇ファンに支持されているのは疑いようのない事実だし、たしかに、オンリーワンの舞台作品を提供し続けていると思うが、個人的には、どこで笑えばいいのか、どこに感動すればいいのか、全く分からない。ウケねらいのシーンはすべて空振りに見えるし、ストーリー展開も深みを感じない。出てくるキャラクターもみな薄っぺらく見える。正直。
 
唯一、生バンドで演奏する手の込んだヘビメタ音楽は純粋にすごいと思うし、よくやっていると思う。ただ、願わくばもう少し違った作風の舞台でこういうものを観てみたい。
 
ということで、個人的には全く良いと思わないが、純粋に好みの問題だと思うし、劇団のことも作品のことも悪く言うつもりはないので、これ以上の記述は控えよう。
 
劇団☆新感線を観たことがない松雪さんファンの方がいれば、とにかく一度観てみることをおすすめする。少なくとも、ドラマ・映画とは一味違う、松雪さんの気風のいい芝居・歌・踊りが堪能できることは間違いない。その上で作品自体を楽しめるかどうかは、人それぞれの好みの問題だろう。
 
 

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