スポーツ観戦のススメ②-F1編-

スポーツ観戦のススメシリーズ。今回はF1編です。
F1は世界最高峰の自動車レースです。1950年から毎年開催されており、毎年各地のサーキットで自動車レースが行われています。日本でも三重県の鈴鹿サーキットでレースが毎年行われています。今年は23戦が行われる予定です。そんなF1について紹介したいと思います。

1. F1の魅力
 1.1 300㎞/hを超えるスピード
 1.2 激しい追い抜き
 1.3 個性豊かなサーキット

2.F1のどこに注目すればいい?
 2.1 F1マシンのデザインやエンジン音
 2.2 実はチームスポーツ(戦略の奥深さ)
 2.3 4つ巴の争い
 2.4 7年ぶりの日本人ドライバー


1.1 300km/hを超えるスピード
 日本で車を乗るとき、せいぜい時速60㎞程度、高速道路でも時速80-100kmで走ります。一方で現在、F1の車(マシン)は最高時速340㎞にもなります。F1では、これほど速い20台のマシンが1/1000秒を争う激しいレースを行います。
 これほどの速度の中では、3-5Gともいわれるほど強い力が身体にかかるそうです。また、1レース終わると体重が3㎏落ちることもあるそうです。過酷なレースに、F1ドライバー達は常に戦闘機に乗るようなモチベーションでレースに挑むともいわれています。

1.2 激しい追い抜き
 モータースポーツでは前にいる車を追い抜くことをオーバーテイクといいます。 F1の見どころの1つはこのオーバーテイクにあります。オーバーテイクをするには様々な方法があります。1つ目は直線で追い抜く方法。2つ目はコーナーを使って追い抜く方法です。コーナーを曲がるためにはブレーキを踏み、少し減速したうえでハンドルを切る必要があります。そのようにしないとコーナーを曲がり切れずにコースアウトする可能性もあります。しかし、一方でブレーキをかけすぎると減速しすぎてそのあとのコースで加速するまでに時間がかかります。つまり、絶妙な力でブレーキをかける必要があるのです。

さらに、直前まで300㎞/h近い速度で走っている車でブレーキを急に踏むとタイヤが「ロックされた」状態になります。自転車で置き換えると、速いスピードで運転しているときに急にブレーキをかけると、すぐには止まれず、自転車は少し前に滑ってから止まりますが、この「滑る」状態に近いです。車を停止させるにはブレーキをかけてタイヤの回転を停止させ、路面とタイヤの摩擦力を使って停止します。車が完全に停止するまでは、タイヤの回転が停止するため、路面と接しているタイヤの面には強い摩擦力、つまり大きな負担がかかります。
F1のタイヤは市販車や自転車と異なり、表面がつるつるです。つまり、タイヤを「ロック」させると、路面と接している面のゴムが摩擦により削られタイヤの一部が平面になります(下図)。このようになるとマシンがガタガタ(振動)してしまい、大きなタイムロス、最悪の場合は振動による機械の破損なども発生します。
つまり、コーナーを曲がるときには適切なタイミング、かつ適切な力でブレーキをかけたうえで、スピードをなるべく落とさずにしないといけないのです。その一方で、ブレーキをコーナーでうまく使うとオーバーテイクをすることができます。
 F1を見るときは直線のみならずコーナーにも注目です。

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1.3 個性豊かなサーキット

 2021年、F1は23か所で行われます。それぞれのサーキットには特徴があり、それぞれのサーキットで最も速く走ることができるマシンにチームは設定する必要があります。ではどのようなサーキットがあるのでしょうか。いくつか紹介します。

① スパ・フランコルシャンサーキット(ベルギー)
  毎年ベルギーGPがここで開催されています。1925年から自動車レースが行われる歴史あるサーキットです。その魅力は大きく分けると3つ。1つ目はその距離です。現在F1が開催されているサーキットでは最長の1周7㎞を超えます。平均的には1周5㎞程度なのでその長さが分かると思います。
 2つ目はF1マシンが時速300㎞以上で山の中を駆け抜けることです。このサーキットは山の中に作られています。スタートから一気に山を登り、最高速度に達すると今度はコーナーを曲がりながら山を下っていきます。特に山を登っていくときには最高時速340㎞を超え数多くの追い抜きが行われるため、見ごたえがあります。(下図:一気に山を登る坂)
 3つ目は山中にあるが故の特性です。「山は急激に天気が変わる」とよく言われますが、このサーキットも例外ではありません。晴れていたと思ったら突然雨が降り出したり、雨がやんだりすることもあります。つまり、突然変わる天気にも対応できるほどの運転技術がドライバーには求められます。

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② モンテカルロ市街地サーキット(モナコ)
 F1モナコGPがここで、毎年開催されています。F1初開催からほぼ毎年開催されており、「モナコでの勝利は格別」といわれるほど、重要な位置づけになっています。名前の通りモナコの街中をマシンが駆け抜けていることです。その魅力は2つあります。
 1つ目は風光明媚なモナコの街中をマシンが駆け抜けることです。街中の道路をサーキットに利用するため、道幅は狭く平均速度も時速130㎞前後といわれています。(これは現行のF1サーキットの中では最も遅い)。しかし、多くの歴史的な建物の横や海沿い、トンネルを高速で駆け抜ける姿は非常に魅力的です。
 2つ目は特徴的なコースレイアウトです。前述の通り、一般道をサーキットとして利用しているため、レース用のサーキットではあまり見ることのできないコースとなっています。その中でも個人的に好きなのはヘアピンカーブです(2つ目の図)。スパ・フランコルシャンと同様に山を登り下っていくコースなのですが、このヘアピンは山下りの途中に存在します。時速200㎞近くで走るマシンを一気に80㎞まで落とす必要もあり、ドライバーの運転技術が試されます。

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③鈴鹿サーキット(日本)
 1度でもその名前を聞いたことがある人も多いと思います。毎年F1日本GPが開催されています。1956年開場の歴史あるサーキットです。実は世界中のモータースポーツファンから高い評価を受けるサーキットなんです。その魅力は2つあります。
 1つ目は、世界的に珍しい8の字型のサーキットです(下図)。現行のF1サーキットの中では唯一です。1周は6㎞弱と平均的な長さですが、その中には様々なコーナーがあります。例えばアクセルを全開にしたまま高速で駆け抜けるS字や、一気にスピードを落として曲がる必要のあるヘアピンカーブ、そして時速300㎞で駆け抜けていくコーナーなどがあり、総合的な運転技術が必要とされています。つまりそれだけ難しく、チャレンジングなコースとも言えます。
 2つ目は、年間王者が決まる可能性がある日程です。毎年日本GPはシーズン後半に行われており、1年間の優勝者が決まる可能性、もしくはその結果により残りの数レースを左右するということもしばしばあります。

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以上はいくつかの例ですが、その他にも個性豊かなサーキットが数多くあります。F1では、毎回同じサーキットを使うというわけではありません(昨年は例外)。それぞれのサーキットの特徴に合わせた走りをすることが重要です。


2. F1のどこに注目すればいい?

前節までは、F1の魅力について書きました。次は実際に観戦するときに注目するポイントを書きます。

2.1 F1マシンのデザインやエンジン音

 車の運転技術や戦略などよくわからないという人はまずは、マシンのカッコよさから入りましょう。市販車にはない、特徴的な形やエンジン音、高速で駆け抜ける姿に注目すると面白いと思います。

2.2 実はチームスポーツ(戦略の奥深さ)

 F1はドライバーの運転技術を競う個人種目と考えられがちです。しかし、F1はチームスポーツです。F1のチームは「コンストラクター」と呼ばれています。そのコンストラクターの中には、できるだけ速いマシンを開発するエンジニア、どのようなレース展開をするのか(最初から飛ばすのか、相手の様子を伺うかなど)を考えるストラテジスト、実際に車を運転するドライバー、レース中にタイヤを変えるピットクルーなど数多くの人が関わっています。関係者が完璧な仕事をこなしたときに初めて勝つことができるのです。そういう観点ではF1はチームスポーツだと私は考えています。
 その中でも私が注目するのが戦略です。F1には3種類のタイヤがあり、そのうち最低2種類のタイヤを1レースで使わないといけないというルールがあります。その中でストラテジストはどのタイヤを使い、何周したところで新しいタイヤに変えるのか、1周のペースを何分何秒にすれば相手に追いつける(追いつかれない)のか、といった戦略を立ててドライバーに指示を出します。また、突然降る雨には雨用のタイヤを履くのか、それともすぐ止みそうだから晴れ用のタイヤを使うのかといった様々な可能性を常に考えながらレースに臨みます。
 F1はただマシンを走らせているのではなく、実はこのような緻密な計算と戦略の下成り立っているスポーツなのです。

2.3 4つ巴の戦い

F1には10のコンストラクターが参戦しています。1つのコンストラクターにドライバーは2人ずつ、計20人のドライバーが優勝を競い合います。その中でも今年有力なコンストラクターは4つあります。
 ①メルセデス
  F1史上初のコンストラクタータイトル7連覇を果たした最強王者。個人タイトル7回目の優勝を昨年果たしたルイス・ハミルトンを中心に今年は記録更新の8連覇を目指します。

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 ②レッドブル
  近年、打倒メルセデスの急先鋒となっているレッドブル。若手の有望株マックス・フェルスタッペンを中心に絶対王者の打倒を目指します。また、レッドブルのマシンにエンジンを提供しているのは日本のホンダ。ホンダは今年、近年かつてないほど強力なエンジンを作ることに成功しメルセデスの牙城を崩すチャンスがあります。

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 ③フェラーリ 
  唯一F1開催初年度から参戦している、伝統あるコンストラクター。しかし、近年はやや不調気味で昨年は10チーム中6位という約40年ぶりの不振に陥りました。しかし、その中でも今年はマシンのアップグレードに成功し、上位争いに入れるか注目です。

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④マクラーレン
 数年前まではホンダがエンジンを提供していましたが、うまくいかず昨年まではルノー(仏)がエンジンを提供していました。若いランド・ノリスを中心に据え、中期的な計画の下少しずつ強くなってきています。今年からはメルセデスがエンジンを提供しており、更なる成績の向上が見込めます。「ビッグ3」といわれる上記のチームに割って入れるかがポイントです。

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今年は以上の4チームによる争いに注目です。


2.4 7年ぶりの日本人ドライバー

今年から、7年ぶりに日本人のドライバーが参戦します。角田祐毅選手です。彼はF1の下位カテゴリー、F2で参戦初年度ながら3位でフィニッシュ。今年からアルファタウリというコンストラクターから参加しています。彼の特徴はタイヤに負担の少ない走りができることです。スピードを上げてオーバーテイクをするときには攻める一方で、1つのタイヤで長く走るときには負担の多い急ブレーキや過度にスピードを出すことをせずに走ることができます。つまり、運転技術が非常に高いのです。開幕戦でも初めてのF1レースで入賞を果たしています。今年は非常に期待できるでしょう。

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以上がF1、およびF1観戦の魅力です。是非、見てみてください!

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